ドルガーさん
久しぶりに地上に戻るかってことになって、転移水晶に登録した後、地上に戻った。
1週間ぶりの地上は、何も変わらず普段通りの迷宮入口前って感じだった。
お金には困ってないけど、情報収集も兼ねて冒険者ギルドで素材の買い取りをして貰おうと思って、ギルド会館に向かって歩き始めた時、
「おい、ジュン。ジュンじゃねえか?」
聞き覚えのある声で、自分の名前を呼ばれて声のした方を振り返ると、ドルガーさんがいた。
相変わらずのフルメタルアーマーを着け、重そうな槍を手にしている。
「あっ、ドルガーさん、御無沙汰してます。」
「やっぱり、ジュンだったか。見間違いかとも思ったんだが。それでなんでこんなところにいるんだ?記憶が戻ったのか?」
「あー。いえそっちはまだです。あれから冒険者登録して、力をつけるためにここの迷宮に潜りに来てます。」
「そうか。無事に登録できたんだな。シャルルに頼んでたから問題はなかったと思うが、それにしても、冒険者になったばっかりのジュンが、なんだって迷宮に来てるんだ?新人には、ここはまだ早いだろう。」
「ドルガー、どうしたんだ?知り合いか?」
「ああ、すまねえ。王都で知り合ったやつなんだが。ジュン時間はあるか?宿はどこだ?」
「取り敢えず、これから冒険者ギルドで素材を買い取ってもらってから宿を探そうかと思ってたんですか。」
「ん?後ろのお譲ちゃんは、ジュンの連れか?」
「そうです、今、一緒にパーティーを組んで迷宮探索してます。」
「そうか、まあ俺達も今、長期の迷宮探索から戻ったところでな、ギルドでいろいろ清算してから宿を探すところだ。一緒に行くか?」
「あーはい。じゃあ、ご一緒します。」
ドルガーさん達は2人のポーターを連れた、総勢6人のパーティーだったようだ。ポーター自身も、ドルガーさん達も結構な荷物を持ってきている。
俺は、ドルガーさん達のパーティーの後ろからついてギルドに入り、地下13階で解体練習がてら、リリアナと解体した素材の一部をバッグから取り出した。
一瞬ドルガーさんが息を飲むような表情をみせたけど、何も言わず、隣のカウンターで素材を取り出す作業を続けてた。
俺達の出した物は、極一部なのですぐに精算も終わり、先にカウンターを離れた。
「ジュン、俺達の清算はもう少し時間がかかりそうなんで、先に宿を取りに行くことにした。どこか決めてる所はあるか?」
「特には。日向亭という宿しか知りません。」
「日向亭か。悪くねえな。俺達も宿のランクとかに拘る方じゃねえし、料理が上手い宿がいいからな。そんじゃあ、そこに行ってみるか。」
別に別の宿でもよかったけど、面倒なのでドルガーさんにお任せすることにして、再び日向亭に泊ることにした。
ドルガーさんは、パーティーメンバーにそのことを伝言に行ったようだ。
「親父、部屋を用意してくれ。」
「おっ、誰かと思えばドルガーじゃねえか。久しぶりじゃねえか。」
「まあな。それで部屋は空いてるか?」
「今夜だけなら、問題ないぞ。明日から団体予約が入っててな。」
「ジュン、どうする?ジュン達は何泊の予定だ?」
「あー取り敢えず、今夜一晩で。明日また迷宮に潜る予定なので。」
「そうなのか?まあ無理のない程度に潜ってるんなら問題ないが。そいじゃあ、今夜一晩でいいんだな?」
「これはこれは。無事に迷宮から戻って来たんだな。ドルガーの知り合いか?前と一緒のお部屋でいいかい?」
「はい、俺達の方はそれで構いません。」
「そうか、ジュンはここに泊ってたって言ってたな。取り敢えず、後からボンゴ達も来るんで俺の方は4部屋を頼む。あと、食事の後、そのまま飲むんで食堂のボックス席の方を使わせてくれや。」
「おお、今なら客が入ってないからな、大丈夫だ。食事はそっちの2人も一緒か?」
「ああ、それで頼む。」
「おお、ドルガー清算終わったぞ。で部屋は取れたのか?」
「ああ、今夜一晩だけはOKみたいだ。」
「そいつはよかった。受付嬢が今日からしばらく迷宮都市内の宿は一杯だろうから大丈夫かと聞いてたんでな、心配したわい。」
「食堂の方の席も取ったし、荷物置いたらすぐに降りて来てくれ。」
そう言って、各自鍵を受け取って、部屋に向かった。こうしている間にも他の客が部屋を求めてやってきてたんで、部屋がとれたのはギリギリだったのかもしれないな。
食堂の奥の方にある、衝立で囲われて個室みたいになった場所で、俺とリリアナ、それとドルガーさん達パーティー4人で食事をした。
ポーター2人はパーティーメンバーの個人の奴隷みたいで、今馬小屋なのか専用の場所なのかわからないけど、外にいるらしい。
奴隷専用の食事もあげてるから問題ないみたいだ。
リリアナが奴隷だってことは黙ってた方がよさそうだな。
ともかく、ドルガーさんと俺との間の近況報告が話題の中心になった。
「まあ、見どころのあるやつだとは思ったけど、あっという間にC級になって、すでにB級昇格の受験待ちとはね。全く、喜んでいいのか、悲しんでいいのか。」
「何を言っとる。お前さんが槍の師匠何じゃろう?喜べ、喜べ。お主の器が知れるぞ。」
「師匠と言っても、ほんの少し手ほどきしただけだからなぁ。俺の20年は何だったんだーって感じよ。まあ、ジュンがここまで駆け上がってくれらのは嬉しいことだけどな。まあ、それで納得だぜ。中層の魔物の素材を換金する訳だ。」
「ドルガーさんのお陰で、ここまで来れたのは事実ですし、本当に感謝しています。」
「まあ俺がなんかの役に立ったんだって言うんなら、嬉しいことだな。ああ、それと冒険者に迷宮の探索階層を聞くのはタブーなんだが、中層まで行ってるんだったら問題ないから言うけどな、地下7階のセーフーティーゾーンは気をつけることだ。」
「あー。はい。ありがとうございます。セーフティーゾーンと言えば地下13階のセーフティーゾーンは・・・」
「ああ、地下13階にもあると言われてるんだが、行くやつはいないと思うぞ。地下12階を越えるのが大変だし、地下13階はいろんなウルフ族の群れがいるようでな。セーフティーゾーンがあったとしても、50体前後の群れがいる階層だからな、地下7階みたいに本当の意味でセーフティーとは言えないからな。」
「なるほど。それじゃあ、地下16階の探索とかやっているパーティーはいないんですか?」
「中層後半は、A級冒険者の領域だな。できれば数パーティー共同で探索するような形で向かわないと対処できないと言われてる。」
「そうなんですね。あっ、それからゴードン王国以外の迷宮で、攻略しやすい迷宮があると聞いたんですが、ドルガーさん達は他国の迷宮攻略とかはやらないんですか?」
「攻略しやすい?アサドング王国のことか?まあ、あの国は歴代の王が積極的に主迷宮の攻略をしなかったこともあって、フィールドに強い魔物が多くいたり、副迷宮が出現したりで大変みたいだな。副迷宮だと階層が少ないと言われているけどな。そう言った意味では攻略しやすいと言われているのかもしれん。過去に迷宮攻略されているのは全て副迷宮の方だしな。」
「そうなんですね。そう言った他国の迷宮の探索とか、誰でも可能なんでしょうか?」
「問題ないぞ。迷宮によってはランクで制限かけてる所もあるみたいだけどな。まあB級まで取ってればまず問題ないな。」
「やっぱり、B級の昇級試験は受けてた方がいいんでしょうか?」
「まあそうだな。でも、ジュンはすでに迷宮の中層に入っているんだろう?実力的には問題ないと思うぞ。B級昇格試験は、半分は他の冒険者ギルドに対する確認みたいなもんだからな。」
「わしらの時には、ゴブリンロードのコロニーの殲滅が課題じゃったな。一緒に受けたやつが、一部のゴブリンを取り逃がすところで、あやうく全員が不合格になる所じゃったが。」
「そうだったな。そう言えば、その時の、何と言ったか人族の戦士職のやつはあの後どこか他の国のギルドに行ったんだっけか?」
「そうみたいじゃなの。あれから顔を見てないの。」
「そう言えば、フェリルもピアフォール王国でB級に上がったんだったけ?」
「その通り。まあ私の場合、どこで受けてもよかったんだけどね。B級に上がる時にピアフォールにいたってだけで。ドルゴンもドラゴニア出身でしょう?」
「俺の場合は、あっちにいると竜人族で剣士は肩身が狭いんでな。ドラゴニア王国もいい国だが、この国みたいに自由に自分の望むスキルを伸ばすということはやりにくい。」
その後も、大人?達の話を肴にたっぷりと食事をし、最後は子供は早く寝ろと言われて、俺とリリアナは先に部屋に戻った。
「リリアナには退屈な時間だったね。」
「いいえ。上級冒険者パーティーの方々のいろんなお話が聞けましたし、これからのジュン様の為に役に立つことも知ることが出来ました。」
「僕もいろいろ知ることが出来たしよかったよ。じゃあ今日は早く寝ようか。明日は16階に挑戦だしね。」
「はい、ジュン様。ジュン様ってA級冒険者数パーティー分のお力があるんですね。」
「それはどうだろう。まだまだ学ばないといけないことたくさんあるし。」
「私も、ジュン様に負けないようにまだまだ勉強します。」
「ホントに、頼りにしてるよ、リリアナ。これからも気付いたことがあったらドンドン言ってくれ。俺の場合過去の記憶がないから、当たり前に知ってないといけないことも忘れていることもあるだろうし。」




