この世界の仕様
翌朝目が覚めると、隣で寝ていたリリアナも目を覚ました。
ルリはよく寝てたので、リリアナと一緒に宿の中庭に出て素振り練習をやった。
「ジュン様は、槍だけでなく、剣も使われるんですか?」
「剣は、ほとんど自己流だけどね。一度だけギルドの初心者講習で教えてもらったことはあるけどね。槍は少しだけ指導を受けたことがあるよ。」
「そうなんですか?ジュン様の剣捌き綺麗です。舞を舞っているようで。私もジュン様の剣技に少しでも近づけれるように頑張ります。」
「まあ、リリアナには将来的には料理を頑張って貰うからね。魔物の素材剥ぎ取りも料理の腕に関係しているみたいだし、そっちを頑張ってくれればいいよ。」
「はいお任せ下さい。」
俺自身、他人に武術を教えられるほど何かを会得している訳でもないし。
俺の動きを見て何か掴んでくれればいいか。
俺の横で、リリアナも双剣を振っている。
獣人族としての身体能力が人族より高いんだろうな。
初めてとは思えないほど自在に双剣を操ってる。
「では、これで完了です。」
そう言われて冒険者カードを受け取ったリリアナの顔が嬉しそうだ。
やはり本心では冒険者になりたかったんだろうな。
まあともかく、数日中には、地下5階まで行けたらいいなぁと思いながら、2人を連れて迷宮に入る。
「ルリ、まずは1体の魔物を探して。初撃はルリ。その後リリアナが討伐ね。多少の怪我は心配しなくていからね。ポーションもあるし、危ないようなら俺がカバーする。」
そう声をかけたけど、ルリもリリアナも若干緊張気味だ。
まあ初の実戦だろうしね。
パーティーで狩って、経験値配分とかあれば俺が狩るけど、各自の「核」と言う物に情報が書き込まれるみたいだしね。
頑張ってもらうしかない。
「前方から1来ます。ボアーです。」
2人が配置につく。
視認できる位置まで迫って、ルリが第一射。
少し間合いが遠い。
当たってるけど、威力が足りない。
すぐに2射の目の矢を番えて発射。
トン
前足の付け根あたりに当たり、ボアーの勢いがなくなる。
リリアナが飛び出し、双剣を振う。
鋼鉄剣だけど、流石親父さん作の最高級品質の双剣だ。
ボアーの首を左右から首半分ほどまで切り付け絶命させた。
「2人ともいい感じだね。ルリは一射目、自分の間合いまで待って撃てたら尚よかったよ。リリアナもいい動きだね。ただ、出来れば一撃で仕留められるように首の前の方を切りつけるといいかも。首の前だと、大きな血管か、空気を吸い込む気管と言う部分を切れるから一撃で致命傷を与えやすいしね。」
「「はい」」
その後も、1体の魔物を見つけては狩ることを繰り返す。
魔物の死体は取り敢えず俺が回収して、後で提出素材を切り取る予定。
迷宮では死体丸ごと提出ではなく、魔物毎に提出部位があるようだ。
冒険者カードを提出することでどの程度の魔物を倒したのかは解るそうだけど、ランクの昇格には、素材の提出が必要みたい。
迷宮のあるこの支部のルールなんだろう、多分。
そうそう、迷宮は7つの王国に1つずつ中心となる迷宮があるみたいで、迷宮探索を積極的にやらずにほっとくと、別の場所に迷宮が出来るらしい。
また迷宮が活発になるとフィールドの魔物も数が増えるので、結局各王国は積極的に迷宮の攻略を行っているそうだ。
ちなみに、俺が今いるゴートン王国は昔から積極的に迷宮攻略を行っていて、国内にある迷宮はここ一つと言うことだ。
また迷宮を攻略し、最下層にあるダンジョンコアを壊すと迷宮は自然と縮小していき数年後には完全なくなると言う話だ。
数十年以上、迷宮の攻略は行われていないらしいけどね。
まっ、そう言う雑談もするぐらい余裕が出来て、現在は地下2階で複数体の魔物相手に戦う練習中だ。
「この防具、凄いよ、ジュンさん。高級品だとは思っていたけどここまで防御力があるとは思わなかったよ。本当にこんないい防具貰っていいのかなぁ。」
「問題ないよ。まあ防具が役に立ったんならよかったよ。俺自身は防具の効果を確かめてなかったしね。」
「ジュンさんは、10階のボス戦まで、ほぼ瞬殺じゃないですか。ダメージ受けることはないでしょう。」
「まあね。ルリだってわざわざナイフで倒しに行かなきゃダメージを受けなかったんじゃないの?」
「リリアナさんが、カッコいいし。初めてであんなに動けるし、ルリもって思うよ。」
「ルリちゃん、私の腕がいいのではなく、この剣が凄いんです。ほとんど抵抗なく切れますし。通常の青銅剣や鉄剣だと、こう簡単に切れないですよ。」
「それも、リリアナの身体能力があってこそだと思うけどね。LVも上がったんでしょう?」
「はい、今のでLV3になりました。」
「ルリもLV3だよ、LV3。多分今日でE級に上がれると思う。ゴブリンも狩ったし、ホーンラビットも狩ってるし。」
「昼食食べたら、地下3階に行ってみる?一人で複数を相手にしないといけなくなるけど。それとも、2階で、じっくり訓練してもいいよ。」
「できれば、このままこの階で狩りたいかも。弓とやっぱりナイフの扱いにも慣れておきたいし。」
その後は夕方まで狩りまくって、2人のLVが4になった頃、今日の訓練は終わった。
迷宮から出る前に、討伐部位の剥ぎ取りを行った。
今回はゴブリンの耳を提出するそうだ。
肉の方は、後日また出して欲しいと言うので再度収納した。
「ついに、E級だー。凄い、凄い。」
さっきからルリが喜びを身体中で現してる。
そんなになりたかったのかE級。
この前話した時にはそんなこと言ってなかったような。
リリアナの方は、淡々としている。
冒険者になることはあんまりだったのか?
でも冒険者か探索者に買われたいと強く望んでいたって、奴隷商の店主が言ってたけどね。
まあ、人の心の中とか解らないしね。
夕食後、2人はゴブリンを荷馬車に積んでどこかに出かけた。
一緒に行くかって聞いたら、明るいし、肉を解体して売って来るだけだからってことで2人だけで出かけた。
解体するならついでにボアーとかホーンラビットもやるかって聞いたら、そっちはいいそうだ。
ゴブリンだけで十分だとか。
まあ、俺としては自由時間になったので、一人で地下11階に潜った。
先日、ルリから探索のコツを教えて貰って自分でも毎日意識してやってるんだけど、モヤモヤとした感じはあるけど、きちんと習得できてない。
当然、スキルも習得できてないし。
まあ、今日は一日2人のアシストだけして俺は戦ってなかったし、ストレス発散の意味もあって、11階に潜ってみた。
6階も考えたけど手ごたえなさ過ぎなので。
11階は、洞窟みたいな場所だ。
ただ上層と違って通路の幅が広く、少し薄暗い感じ。
いつも、ルリの探知で魔物を探してるから簡単にエンカウントするけど、さっきから歩いていて全然エンカウントしない。
左曲がりが間違いだったかなと思って、取り敢えず入り口に戻ることにした。
引き返す地点まで10分か、長くて15分程しか歩いてなかった筈だけど、さっきから入って来た通路の場所に着かない。
これは迷路系のフィールドだったか?
そう思いなおして、今度は、同じく左曲がりで10分進むことにした。
出来る限り周囲の異変を見つけようと気配を探る。
空いの淀み、流れ、空気の濃淡みたいなもの。
そう言ういつもは意識しない様な物にも意識を飛ばす。
違和感を感じたのは、通路の薄暗い場所。通路自体よくよく観察すると、均一に薄暗いんじゃなく、少し明るい場所、暗い場所などがある。
このコントラスト、目の錯覚によって、通路を一本曲がり損ねたようだ。
曲がってすぐに曲がるから、歩いてくる向きによっては、壁があるように見える。
解ってしまえば単純だけど、特別の罠とかじゃなくてよかった。
最悪無限ループとかの罠に嵌ったのかと思った。
まあお陰で、探索のコツみたいなものが少し解ったかもしれない。
自分の周りに見えない触手見ないなものを漂わせてる感じ。
触手と言うか、糸みたいなものか。
猫のひげみたいなものを伸ばしてるって思うとイメージしやすいなこれは。
でも、自分の周りに漂ってる物を制御出来ると尚効率がよさそうだ。
これを意識してみよう。
結局、魔物とのエンカウントはなく迷宮を出て宿に戻った。
外はまだ明るいし、2人はまだ戻ってない。
中庭で、さっきの感覚を使いながら素振りをやることにした。
身体強化も無意識で常時発動できるようになったんだし、この新しい探索の感覚も常時発動できるようになれば、危険を事前に察知できるんじゃないか?
集中して素振りしてたら、いつの間には夜になっていて、リリアナがやって来た。
何も言わず俺の横で素振りを始めてるし。
根が真面目なんだな、この子。
夕食が早かったので、軽くシャワーを浴びた後お夜食の時間になった。
相変わらずよく食べる、ルリは。
成長期なんだろうか。
2人と一緒にいて解ったことは、HPと言うのは、0になったら死亡するという指標としての意味だけでなく、最大値から半分ほどのHPになると疲労を感じ、残が1桁になると起きてるのもしんどくなるようだ。
HP自体の回復は俺が回復魔法をかけることで全快するんだけど、最初のうちは、被ダメが精々、2とか3しか受けないので、毎回回復しなかったら、疲労を感じるようになったみたい。
HPの回復は、横になると時間当たりの回復速度は上がり、座ってじっとしてても少しずつ回復はするみたいだ。
食べ物を食べるのもHP回復に役立つみたい。
それが分かってから、俺がこまめに回復魔法をかけるので、2人は疲れ知らずで、迷宮に入っている時間、フルで討伐出来る。
今は地下3階で無双中だ。
そうそう、リリアナを奴隷にしたことでいろいろと解ったことがある。
奴隷なので自分のステイタス情報などは包み隠さず主人に告げなければならないし、アイテムボックスには主人の許可する物以外を入れてはならないという奴隷契約の縛りがあって、必然そう言った情報を俺が知ることが出来た。
まず、アイテムボックス。
枠は10個あるらしく、ステイタス画面の様にアイテムボックスの内容物の一覧表も出て来るらしい。
一枠の最大容量は自分の身体と同じ程度、ただし手で持てる程度の重量までしかはいらないし、取り出すのは自分の手の上だけらしい。
俺の様に好きな場所に出せると言うのは珍しいことなのか。
出す時に注意しないと。
魔物の肉などは、通常はこのアイテムボックスの枠一杯になる程度に切り分けて収納するのが普通で、俺の様に丸々収納するのは見たことないとのことだ。
マジックアイテムと言うアイテムボックスの強化版みたいなアイテムがあるのは知っているらしいから、超激レアって訳でもないんだろうな。
ちなみに、服やお金は袋などにまとめて収納すれば枠1つとなるらしくて、収納用のバッグなども売っているとか。
早速買ってやって自分達の服を収納させている。
と言っても、ほとんどと言うか、常に革ドレスアーマーを身につけてるので、他の服の出番は、夜寝る時ぐらいだ。
寝る時用の服を買ってやった方がいいのかなぁ。
いずれにせよ、革ドレスアーマーは見た目、メイド服みたいだし(こっちの世界ではメイド服と言うのはないみたいだけど)、常に浄化をかけて綺麗にしてやってるので問題はないみたい。
ルリには浄化を見せれないから自分で手入れや服の洗濯をしてるみたい。
またリリアナの情報を聞いて一番驚いたのは、この世界の人はステイタス画面で、能力値とSPは見えないし、そう言うものがあると言う認識もないみたいだ。
名前、年齢、種族、所属、LV、HP、スキルのみみたいだ。
他人のステイタス画面と言うのは後ろから覗いても他人には見えないし、他人のステイタスを詮索するのはタブーみたいだから俺も気にしないようにしてたけどね。
ちなみに、リリアナはスキルはないみたい。
ただ、スキル習得は一生懸命習練することで獲得できると言うのがこの世界の常識みたいなので、いつか俺の役に立つスキルを習得しますと宣言してた。
あと俺自身の固有スキルである学習がカッコ内の項目が一つ増えて「指導」が加わった。
情報によると、他人に対して、スキル習得をしやすい指導が出来るらしい。
まあそのままだな。
恐らく最近、リリアナやルリに武術指導していたのが影響したんだろうな。
だからって、俺の能力が上がる訳でもないんだろうけど。
それから、光魔法が進化したと思う。
聖魔法というスキルが出来て、光魔法が消えたから多分、スキルの進化じゃないかな。
槍術も、槍将、槍聖、槍神と上位進化するって、ドルガーさん言ってたしね。
光魔法、聖魔法の本質は、俺の中では波動の支配・コントロールだと認識している。
波動の種類によっては生物を構成する細胞を死滅させることもできるし、逆に細胞分裂を促進させることもできる。
傷が治る過程が術者によって回復スピードや程度に差があるようだけど、細胞が盛り上がり欠損した組織が生成されていく。
その途中で異物は除去され消失する。
浄化魔法も同じ原理だと認識したら使えるようになったし、回復魔法もまだ実際に試してないけど部位欠損ぐらいなら修復できると思っている。
不思議なもので魔法のレベルと言うか、修練が進むと何となく自分が使える魔法がイメージできるようになる。
ファンタジー仕様だな。
で、ともかく波動の支配と言うことを突き詰めて、今やってるのはレーザービーム魔法の習得。
光を突き詰めれば武器になる。
今はほとんど、明りを点けるとか、浄化する、回復するみたいな支援的な魔法の使い方だけどね。
まあ、攻撃的なものだけでなく、光のバリアーつまりは結界魔法みたいなものを習得できるように頑張ってるけど。
どのみち、すぐに習得したい訳じゃない。
じっくりやっていこうと思う。




