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奴隷購入

翌日、目が覚めると、ルリはベッドの中で小さく丸まって寝ていた。

ぐっすり眠っているようでよかった。

俺が中庭で少し槍の素振りと、剣の素振りを終えて部屋に戻ると、ルリも目覚めたようだ。

しばらくの間、ボーっとしてキョロキョロしてたけど、現状を認識できたみたいだ。


「おはよう、よく眠れた?」


「お、おはようごじゃいますぅ」


少し噛み噛みだけどスルーしてあげよう。


「お腹すいたか?着替えたら食堂に行って朝ごはん食べるか?迷宮の中で食べてるような物でよければ、ここに出して食べれるけど。」


「えっと、ここで。」


「了解。」


そう言って、テーブルの上に、サンドイッチとか、ルリの好きな骨付き肉とか、果実水とかリンゴみたいな果物とか出してやった。


顔を洗って、サッパリして目が覚めたようだ。

テーブルの上の食べ物をみて、つばを飲み込んだような。

そこも華麗にスルーしてあげよう。


「好きなの食べて。何が好きなのか解らないし。」


と言ったら、やっぱり骨付き肉を最初にとった。

ふむ、朝からも食べるとは、余程好きなんだなぁ。

また大量に買っておいてやろう。

まあアイテムボックスの中にまだ大量にあるけど。


「それで、今日の予定なんだけど、まずルリが昨夜言ってた戦闘奴隷というものを見に行こうと思う。買うかどうかは別としてね。その後、ギルドの解体場を借りて素材の剥ぎ取りをしたいと思う。勿論、ルリが一日付き合ってくれるなら、迷宮のポーター代金と同額を支払うけど、どうだろう?」


「つまり、奴隷を買うのに一緒に行って、その後素材剥ぎ取り作業をすればいいんですね。問題ないです。でもそれだけで、迷宮に入るポーター代金と同額と言うのは多すぎですけど。」


「まあ、その辺りは俺もよくわからないけど。この宿にも一ヶ月すでに宿泊代金払ってるし、少なくともその期間、毎日専属でやとわれて欲しいと思っているんだけど。宿泊料、3食の食事代など必要な経費は俺が払う。その上で、一日銀貨2枚支払うけどどうだろう?残り25日だから銀貨50枚が基本。臨時で収益が出た時にはその都度ボーナスを払うって感じでどうかな。」


「そんな好条件なら喜んでお願いします。でも私でいいんでしょうか?そのような好条件なら、寧ろ奴隷を数人購入した方がいい様に思いますけど。」


「さっきの条件は、ルリだから出した条件ね。他の人だとそのような条件は出さないと思う。僕としてはルリの能力を買っているつもりだけど。」


「解りました。そこまで言って頂いてありがたいです。一ヶ月よろしくお願いします。」


「よしじゃあ、先に前金銀貨25枚ね。残りは契約が終了する時に支払うってことで。」


「えっ。先に頂けるんですか?契約が終了してからで結構です。」


「まあ、僕のやり方だし、受け取って。」


そう言って、銀貨25枚を渡した。

その後朝食が終わった後に、奴隷商に向かった。

何軒か奴隷商はあるみたいだけど、基本的に正規の奴隷商は、奴隷の教育から、奴隷の生活などしっかり管理しているそうだ。

奴隷だからと不当な扱いはしないらしい。

不当な扱いをするのは奴隷を買った主人の方らしい。

なので奴隷にとって、買われる先の主人は自分の奴隷人生を決める大事なことなので、しっかりアピールしてくるみたい。

従って奴隷の吟味はそのアピールを見て決めれば大丈夫だ言うのがルリの意見だ。

なるほどな、本当に奴隷制度が定着と言うか当たり前のことなんだな。

奴隷人生を決めるとか、凄い決意だな。



奴隷商に入って、こちらの要望を伝えた上で条件に合う奴隷を数人ずつ連れて来る面接形式で決めるようだ。


俺の出した条件は

迷宮探索をメインに討伐を行って行くので、戦いが出来る者。

迷宮での野営も考えられるので、料理の腕が高い者。

場合によっては他国の迷宮にも行くので、旅をするのが苦痛でない者。

の3つだ。


性別や年齢も聞かれたけど特にこだわりはないけど、俺と長く一緒に戦える者であれば構わないと言っておいた。


最初に現れたのは、竜人族の男女3人だ。

3人のアピールを聞きながら、横で小声で解説してくれるルリの話しも聞いていた。

ルリ曰く、戦闘力は問題ないけど、料理をさせたいなら避けるべきだと断言された。竜人族の料理は少し変わっていて、人族である俺の味覚には合わないだろうとのことだ。


次に連れて来られたのは、犬族の男性と、兎族の少女、あと狐族の女性だ。

3人ともルリの評価だと問題ないみたいだ。

ただ犬族の男性は、少し足を引きずっているのが気になるとのことだ。


狐族の女性は、ボン・キュ・ボンの21歳のお姉さんだ。

俺が元の年齢なら何も思わなかったんだろうけど、見かけ上、人族の少年にその流し目はないだろうって思ったけど、奴隷にしたら俺の理性がどこまで保つか自信がなかったので見送ることにした。


兎族の少女は15歳で俺と同じ年だ。

受け答えもしっかりしているし、聡明な感じだ。

料理は自信があるとのことだし、アピールポイントなのだろう。

また他の国に行くことは寧ろ行ってみたいと言う姿勢だ。

現状維持を望まない意欲的な性格なのかもしれない。


一旦全員を返して、店主と値段交渉だ。

他の候補の分も聞いたけど、兎族の少女は、金貨2枚と少し高めだったので理由を聞いてみたら、兎族は貴族が欲しがるようで、特に処女だと、価格が上がるらしい。

ちなみに今回紹介した中で処女はこの少女だけだったみたいだ。

俺にとってはそう言うのは関係ないけど、それを気にする人もいるんだろうな。

店主も、本来は貴族向けに出したいのだけど、本人が冒険者や探索者等に買って貰うのを強く望んでいるようだ。実は他の冒険者から買いたいと打診を受けているみたいだけど、店主の方がその冒険者にあまり売りたくないようで、今回俺に紹介したそうだ。

店主曰く俺から強い波動みたいなものを感じるそうで、将来大成される方だからというのが俺に勧める理由みたいだ。

つまり金貨2枚と言うのも本来より安く言っているのかもしれない。

それでも他の子の倍ぐらいするんだから余程なんだろうな。


「解りました、では兎族の子をお願いします。」


ついに俺も奴隷持ちになったか。

契約は、隷属契約を結ぶらしい。

首輪をつけるのと、血の契約で違反を犯した時にだけ首に首輪が浮かんで締め付けるタイプの物があるらしい。

効果は首輪を着けていた方が高いし安全らしいし、それならサービスでOKとのことだ。

血の契約は銀貨50枚が別途必要とのことだが血の契約でやって貰った。


奴隷商を出て、俺達の後ろから兎族の少女がついて来る。

垂れた兎耳がかわいい。

最初に向かったのは、靴屋。

2人にサンダルと靴を買ってやった。

2人とも自分の分?とかびっくりしてたけど、流石にヨレヨレのサンダルを履かせたままとか俺の心が辛いしね。


「ルリはこれも俺が考える必要なことだから遠慮なく選んで。リリアナも遠慮せずに。寧ろこれから僕と一緒にいるんだからそれなりの恰好をして欲しいと言う僕の願いでもあるからね。」


靴屋の後は、服屋だ、と言っても中古服屋さん。

こっちも2人に納得させて選ばせた。

最終的に5,6着まで絞り込んで迷ってるので全部買って、その内の一つにその店の奥で着換えさせた。


そこから、今度は鍛冶工房街に行って、2人にオーガの革ドレスアーマーとロングブーツを買った。2人お揃いみたいになったけど、似合ってるからいいだろう。

そのまま武器屋の親父さんの所に連れて行って、彼女達でも使えそうな武器を選んで貰った。

親父さんの見立てだと、ルリの方は弓、リリアナの方は細身剣か双剣がいいだろうとのことだ。

取り敢えず、親父さんの見立て通りに武器を買ってあげた。

ついでに迷宮の10階で、ゴーレム系でアイアンゴーレムと言うのが出てその素材が丸丸あるんだけど買い取り出来ないかと聞いたら、目を輝かせて、「ふふん」とかいって、工房の裏に出せと言うので出してやったらしばらく固まってた。

後で弟子が言ってたけど、迷宮産のアイアンゴーレムの素材は高品質なんだけど、重量があり一部関節を外してもアイテムボックスに入らないので、通常ポーター2人掛かりで、手の先の一部を運んでくるのが精いっぱいらしい。

迷宮内に放置すれば迷宮に吸収されるし、迷宮に接地しないように運んでくるのは相当に大変なことみたいだ。

アイアンゴーレムの素材は、鉄ではなく、俺の槍にも使われている鉄鋼塊で、非常に純度が高く、これだけの物を持ち込んだのは俺が初めてらしい。

勿論、喜んで買い取るが、すぐに支払える金はないとのことなので、片足を切り離して、残りは順次納品することにした。

これだけ全部置いて行かれても置き場に困るらしいし。

で代金は、今日の彼女達の武器の代金と、あとこの素材で、俺には、剣、彼女達にはナイフとそれぞれにあった鋼鉄製の武器を作って貰うことで相殺してもらった。

それでも素材代金がまだまだ高いみたいだけど、俺としては、モチベーション高く親父さんに武器を作って貰った方がいいものが出来ると思ったので、先行投資みたいなものだ。



ここでお昼近くになったので、近くの食堂でお昼を食べて、ギルドの解体場を借りて素材の解体を夕方までやった。

持ってきた素材が多いので、途中でギルドにお願いして解体の依頼を出して人を集めて貰った。

俺としては解体の指導も受けられるし、そのまま買い取り査定もやってくれるので大いに助かった。

その日の素材の清算で、解体依頼の諸経費を差し引いて、金貨10枚程の利益になった。

今回大物は出してなかったしね。

そっちは今度ルリ達の練習も兼ねて行う予定。


宿に帰って、リリアナのことを話すと、奴隷は主人の所有物なので別途料金は発生しないらしい。

ただしベッドを増やすことも出来ないと言うことだ。

奴隷一人を部屋に泊めることは規定で出来ないとのことなので、リリアナとルリは一緒のベッドで寝て貰うことで、3人で一緒の部屋に泊ることになった。

奴隷と言うものを虐待とかはしないけど、所有物として扱うか。

まあこの世界のルールというなら仕方ないか。


部屋に入って、2人にシャワーでも浴びてスッキリするように提案した。

リリアナの方は奴隷がシャワーを使う訳にはいかないと固辞してたので先にルリに入って貰った。

まあルリも遠慮はしてたけど、俺が何度か言うと従ってくれた。

シャワーと石鹸を気に入ったみたいだしね。


ルリがお風呂に入っている時に、リリアナに話をした。

まず実際に浄化魔法をかけてやって、


「どうしてもお風呂に入らないなら、僕がこうして浄化魔法をかけることになるよ。でも僕は、自分の能力を隠してるんだ。だからリリアナにも今見たことを他の人に話すことを禁じるね。その上で、できればリリアナには僕の能力が他の人に知られるのを防ぐ手伝いをして欲しい。」


「えっと、ルリ様は、ご主人様の奥さまではないんですか?」


「違うよ。ルリとは一昨日、迷宮探索の時のポーターとして契約したんだよ。その後いろいろあって、彼女の探索能力を僕が認めて、しばらく迷宮探索に専属として雇ったんだよ。第一、ルリはまだ未成年でしょう?」


「そうなのですか。私もあまり深く話をしませんでしたが、ルリ・・・さんの態度が、ご主人様をとても尊敬して頼っている感じがしたので、お二人はそのような関係かと思ってました。すみません。」


「まあその辺りのことは追々やるとして、少なくとも今、僕が自分の秘密を打ち明けるぐらい信用しているのはリリアナだけだよ。その上で、シャワーのこと考えて欲しい。」


「安易な考えで、ご主人様の意見に逆らって申し訳ありません。是非、私もシャワーを使わせて頂きます。」


「よかった。それで、洗濯とかも俺があとで浄化でやるから、そのまま浴室に置いておいてね。あと、折角綺麗な髪をしてるんだから、髪も綺麗に洗うこと。」


「えっ、綺麗ですか。あ、ありがとうございます。」



「あー気持ちよかった。やっぱり凄いよ、シャワー。石鹸最高。」


ハイテンションで出てきたルリに代わってリリアナがシャワーに入る。

俺はルリに飲み物を出してやって、しばし雑談。


「何度も言ったけど、あんなにして貰っていいの?今日貰った武器や防具、金貨何枚分か怖くて聞けなかったけど、凄いものだよね。」


「まあ、ルリ達には、明日から迷宮の中層に一緒に入って貰うしね。最低限の準備はしとかないと。それより、弓の方は大丈夫そう?」


「凄いよ、あの弓。私が前に練習した時の弓は、固くて弦も弾けなかったけど、私の力でも簡単に引けるのに、矢の威力は半端ないし。練習して精度を上げなきゃだけど、これならやれそうな気がする。自分に弓の適性があるって思わなかったよ。でもこの弓凄い高価なんじゃない?」


弓をアイテムボックスから取り出して、撫でながらそう聞いてきた。

ルリに勧められた弓は小弓と言うのかもしれないけど、弦の部分なのか、本体の部分なのか解らないけど、とにかく小弓と言うには威力が凄くて、20m先の的へも矢が届いた。

詳しくはないけど、弓と言うよりボーガンに近いのかもしれない。

矢じり部分をそれなりの物を使うようになれば、強敵相手にでも十分使用できると思う。

それに、弓の精度に必要なのは視力だけかと思ったけど、どうやら探知感覚も影響があるようで、狙った場所から意識を逸らさないと言う集中力みたいなものも大切みたいだ。

その意味では、ルリに弓の適性があると一目で見抜いたあの親父さん、タダものじゃないよな。


ルリとおしゃべりしてたら、リリアナが頬を上気させていい香りをさせながらお風呂から出てきた。飲み物を渡してやったら、まだ少し夢見心地見たいだ。

熱いお湯でのシャワーや石鹸ってそんなに一般的じゃないのかな?

でもガラス製品や、水洗トイレ、こうして部屋にシャワーもあるし文化程度は低くないと思うんだけどな。


その後、俺がお風呂に入って、ついでに浄化でリリアナの着替えを綺麗にしておいた。

勿論手に取ったりしてない。

そのままの状態で浄化しただけだよ。


夕食もちょっと大変だった。

奴隷は主人と一緒のテーブルにつくことはないし、大体、奴隷が食堂に入って食事をすることもないそうだ。

まあルリも入ったことないとか言ってたし、露店で何かを買うのも含めて外食って意外と贅沢なのかもしれないな、こっちの世界では。

ともかく、今は外見上奴隷だとは見えないし、外ではそのような言動をしないようにリリアナに言い渡して、俺のやり方だからってことで納得して貰った。

例によって、メニューをみても料理が解らないので、2人の好みを聞いて俺が注文した。

ルリは骨付きTボーンステーキみたいなのがあったのでそれにした。

ルリって、マジで骨付き好きだなぁー。

リリアナは俺と同じものとしか言わないので、初日に食べたトロトロに煮込まれたビーフシチューと、サイコロステーキみたいなものを頼んであげた。

リリアナも気に入ってくれたようだ。その内作ってくれるだろう。

リリアナにはおいしいものをいろいろ食べさせて、料理の腕を上げて貰うかな。



「そう言う訳で、まずは地下5階までで、2人が戦えるレベルになるまでは、毎日迷宮に入ることにしよう。ルリもF級だし、リリアナも明日冒険者登録してしまおう。」


「えっ?私もですか?」


「何で?奴隷は登録できないの?」


「そんなことないけど、普通、戦闘奴隷は冒険者登録はしないよ。戦闘奴隷が倒して得た素材は全て主人のものになるし。」


「そうなのか?」


「それに戦闘奴隷の冒険者ランクを上げてもメリットないでしょう。」


「あの、ご主人様・・・ジュン様。ジュン様が他のご主人様達の様に奴隷を扱わず、ジュン様のお考えで私にいろいろして下さるのは嬉しいのですが、私の全てはジュン様の物ですし、私自身に何かが残るようなことは必要ないかと思います。」


「うん、そう言う考えも解るんだけど、冒険者のランクって一応の身分証みたいになるでしょう。今後他の国にも行くかもしれないし、そう言う時にそれなりのランクまで上がってればいいかなぁと思ってね。どうせ、上層階でランク昇格に必要な魔物を倒すんだし、ついでにって思ったんだけど。」


「ジュン様のお考えは解りました。今後のことを考えてのことだったんですね。お考えに従います。よろしくお願いします。」



部屋では、ルリと一緒のベッドで寝るように言ったんだけど、それは頑として拒否されて今一緒のベッドに入っている。

まあだから何をするということはないけど。

リリアナ自身もご主人様と一緒のベッドか床で寝るかの二択しかないらしく、一緒に寝れないなら床でと言うことになってやもなくだ。

奴隷商館で年上のお姉さんに奴隷の心得を教えて貰ったらしい。

だけど、ベッドに入って、その先何をするかまでは教えて貰ってなかったようで、特にムフフな展開もなく、俺も求めもせず眠った。


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