迷宮探索とポーター
その後、槍の使い心地を確かめる意味も込めて、迷宮に入ってみた。
入るのに銀貨1枚かかった。
まあ国の重要な資源なんだろうけど、入場料が取られるのは考えてなかった。
街に入るのにも税金とかなかったしね。
まあともかく、初迷宮探索だ。
入り口から入ってすぐに青い光を放っている水晶があった。
これが5階層ごとに転移できる転移の水晶か。
あれ?転移の水晶ってことは、この世界には転移の魔法があるのか?
いやいや、それだったら、馬車とか道とか整備しないか。
一般的ではない?
限定的な転移?
まあその辺りも今後の検討課題だな。
通路は、細い坂道みたいに繋がっている。
地下だと言うのに明るいのは、壁全体が淡い光を放っているからだ。
流石迷宮、ファンタジーだな。
探索とかできないし、そう言えば地図とかもあるんだろうか?
そう言うのも準備してないので、迷わないように別れ道は全て左に曲がった。
なかなかエンカウントしないなーとか思っていたら、曲がり角の先の方から、魔物の気配がしてきた。
これって探知?
よくわからないけど、取り敢えず、迎撃態勢。
出てきたのは、狼だ。
初めて見るけど、地下1階で出るようなやつだし問題ないだろう。
サクッと倒して情報をチェックしてみると、LV11のワイルドウルフと言うらしい。
地下1階でLV11の魔物か。フィールドよりレベルが高いなぁー。
そんなことを考えながら、先に進んで行く。
途中出てきたのは、ボアーやホーンラビットなんかもいたけど、一番多かったのは、ゴブリンだ。
まあ1体しか出て来ないし、瞬殺だけど、しかも撲殺。
首の狙ってね。
ボアーやホーンラビットも撲殺。
走ってきたところを、槍の背の部分で横から殴りつけると、通路の壁に激突して終わり。
最初、力加減を間違って、壁に激突して頭が潰れてしまったので今は手加減して殴っている。
十分に入場料以上の物はゲットできたし、武器や防具の具合も確かめられたし、今日は早く帰って寝ようって思ってそのまま宿に戻った。
ちなみに、宿では久しぶりにシャワーを浴びた。
普段、浄化魔法で済ませてるし別に困らないけど、折角なのでシャワーを使ってみた。
まあ水を浴びるのはいいよなぁって思った。
綺麗になるって効果とは別に、サッパリ感があるな。
まあ防具や服は浄化で綺麗にしたけどね。
流石に洗濯して、干して乾かすとかはねー。
久しぶりに自由を満喫して、夜遅くまで回復魔法やら光魔法、浄化魔法等を使って魔法の訓練をしまくってたんで、朝が起きれなかった。
すでに太陽は昇りきっていて、街は動き出している。
すぐに装備を整えて宿を出る。
朝食は途中の露店で買って食べることにする。
昨夜迷宮に入る時にはあまり人はいなかったけど、今はかなりたくさんの人だ。
あちらこちらで、パーティーの募集や、ポーターの売り込みなどの声がする。
「タンク系1名募集。5階以下だ。」
「魔法師募集。弓術持ちでもOK。地下8階のバード系の討伐メイン。」
「ポーター必要なパーティーいませんか?地下6階まで経験あります。」
「ポーターいりませんか?素材剥ぎ取り経験もあります。探索も可能です。」
大抵の人が到達可能階数とか言ってるのに、階数を言わずに、なんとなく周囲に圧倒される感じで声を上げてる犬族の少女がいる。
気になって声をかけてみた。
綺麗にすれば可愛いのに、何となく恰好もぼろっちい感じだ。
「えっと、君、ポーターできるの?どこまで行ったことあるの?」
その子が答えようとすると、隣のガタイのいい狼族?の少年が横から、
「兄さん、こいつはダメだぜ。地下2階までしか行ったことないし、女だから大して量をもてない。ポーターを探してるなら俺の方がお得だぜ。地下7階まで経験がある。勿論、野営の物品一式持って尚且つ素材の持ち帰りもOKだぜ。」
「申し訳ない。俺はこの子に話をしてるんだ。」
「まあ冒険者様がそう言うならいいけど。」
そう言って、他の冒険者の所に売り込みに行った。
「それでさっきの質問だけど。」
「えっと、地下2階までです。荷物は男の子に負けないぐらい持てます。それにその場で素材剥ぎ取りすればたくさん持ち帰れますし。」
「探索が出来るというのは?」
「スキルはないですけど、耳と鼻はいいですから。」
「迷宮で迷ったりしない?」
「それはないです。一度自分が通った道は迷いません。」
「料金はいくら?」
「一日、銀貨1枚です。」
「それは素材剥ぎ取りの料金も込んでるの?」
「はい。朝から晩までです。」
「じゃあ、お願いしようかな。俺の名前はジュン。冒険者だ。」
「ルリといいます。よろしくお願いします。」
「あっ、料金は先払い?」
「えっ?普通は終わる時にだと思います。」
そのあとルリと一緒に迷宮に入った。一人銀貨1枚かと思ったら、ポーターだと無料みたいだ。どうやってポーターだとわかるのか不明だけど。
「じゃあ、俺は迷宮探索は初めてだから、案内はルリがお願い。まずは下層を目指そうと思ってるから、下への通路を見つけることを優先。あと、なるべく魔物とのエンカウントを多く出来るように案内して欲しい。」
「魔物と遭わないようにじゃなく、多く遭うようにですか?」
「まあ、迷宮初めてだしね。迷宮の魔物がどんなものか見てみたいし。」
「解りました。では、下への通路を探すのを最優先。後は魔物が多い道を通って行きます。」
しばらく歩くと、
「この先にゴブリン1体です。」
「凄いね。どの魔物かも解るんだ。」
「一度嗅いだ事のある魔物でしたら、判別可能です。」
角を曲がると、確かにゴブリン。俺達の姿を見つけると、グギャグギャいいながら走って来る。槍の背で首を折っておしまい。
「へっ?」
「これはどうするの?ここで捌いた方がいいのかな?」
「あーはい、ゴブリンで価値があるのは、核ぐらいで、肉はほとんど価値がないですから。」
そう言うと、さっと走って行って、心臓の部分をナイフで裂いてから、核を取り出したようだ。血もほとんど出てない。
「残りの部分はどうするの?」
「えっと数分すると迷宮に吸収されます。」
「そうなんだ。何か便利だね。」
「便利ですか?」
「あーフィールドとかだったら、そのままにしてたら他の魔物が寄って来るし、場合によ手はアンデッドになるかもしれないんでしょう?だから土に埋めるか、街に持ち帰るかするし。」
「そうですね。ゴブリンの肉もちゃんと処理すればおいしいんですけど、迷宮の場合には、荷馬車とかで運べないのでほとんど捨てて行きます。」
「食べれるんだったら持ちかえる?そのまま売ったら少しはお金が入るんじゃない?」
「でも大銅貨5枚ぐらいですよ。重いものを持っていってもあまり価値がないと思いますけど。」
「じゃあ、これは戻ったらルリにあげるから、ルリが売っていいよ。」
そういいながら、ゴブリンを収納した。
でもルリには迷宮に吸収されたように見えたようだ。
「お気遣いありがとうございます。1日銀貨1枚も頂ける約束なので、大丈夫です。」
まあ、出てから渡せばいいか。
その後も、効率よく案内して貰って、どんどん瞬殺していく。
1時間ほどで地下2階への通路が見えた。
「最短コースで来れば、ここまで20分で来れます。」
「そうなんだ。次からは最短コースがいいね。そのまま地下2階に行くけど大丈夫?」
「えっと、私は何もしてないので大丈夫です。ジュンさんはお強いんですね。あんな風に魔物を殺す冒険者初めて見ました。」
「そうなの?そう言えばルリはここのポーターの仕事は長いの?」
「えっ?あーはい。2年ぐらいになります。でも、毎日はポーターに就けないので、大抵は薬草採取か街中のお手伝いをしてます。」
「冒険者なの?」
「ええ、F級ですけど。」
「そっか、冒険者だったんだ。討伐とかの経験は?」
「えっ?ないです、ないです。武器もないですし、武術もなにも身についてないですから。」
「練習とかすればいいのに。」
「はい、前はやってたんですけど、一緒に冒険者になった子が死んでしまって、少し借金もあったので、無理はできないんです。借金はもうないですけど、今から武術の習練とか無理なので、ポーターメインで。」
「そうなんだ。まあ、やりたいって気持ちがあればいつからでも始められるんだろうけど、冒険者はいろいろ大変だからね。」
「前方から、ボアー2体です。」
「了解。」
2体ぐらいなら、ほとんど瞬殺。
バコン、ドシャ
ボアーが通路の両側の壁に張り付く形で死亡する。
ルリが核を取り出した後、俺がアイテムボックスに収納する。
流石に俺が死体を回収してるの気付いてるよね?