表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/55

ブラックグリスリー

10体ほど仕留めた後、今日はいいかなーと思って引き返すことにした。

一応警戒はしてたんだけど、森に入ろうとした時にかなりヤバイ雰囲気が。



森の中から現れたのは、熊。

巨大熊だ。


口からよだれを垂らしてるし、牙が凄いから普通の熊じゃなんだろうけど。

逃げ場はなし。

なるほどさっきから周囲に生物の反応がなかったのは、こいつを警戒してみんな逃げてたんだな。

索敵系のスキル大切だなぁ。


ともかく、逃げることは不可能っぽい。

全力で逃げれば何とかなるか?

それも不確定だしな。


鉄槍を正眼に構える。

傍からみたら、決闘直前に両者が見合ってる感じだろうけど、

俺の感じでは相手の方が格上だな。

試合開始のゴングはないけどやつがこっちに駆けだしてきてくる。

起きあがりざま前足を大きく振う。

スピードも力もあるな。それに近くに来るとその巨大さがはっきりわかる。

3m程あるんじゃないのか?

俺の身体は地球の頃より若干小さくなった気もするけど、元々身長は低かったし、165㎝程。

つまり倍近くある感じだ。

やつからすれば起きあがって前足を振えば上から振りおろせるし、強力な攻撃を加えられることになる。


初撃は上手く回避できた。

でもそれだけだ。

相手に致命傷を負わせようとすれば、やつの間合いに入らなければならない。

両手を刃の付いた棍棒みたいに振ってくる間合いに入れそうもない。

このまま広い場所で戦っても勝ち目はないか。

そう思ってやつの隙を窺うけど、逃がす気はないようだ。


とふとアイテムボクスの中には言っているキラービーの死体のことを思い出した。

キラービーのお尻から出ている針って、相手に麻痺を起すんだったけ。

生きてないキラービーの針にどれくらいの効果があるのか解らないけど、多少の目くらましにはなるか?

こいつは少し知恵が回りそうだし、キラービーのことを知ってれば、気を逸らせられるかもしれない。

タイミングを計る。

両手で持っていた槍を左手一本で持つように換えて、右手にキラービーの死体を取り出し、針を向けて熊もどきに投げつける。

やつは一瞬ギョッとして、俺が投げたキラービーに視線が移る。

その瞬間を逃さず、間合いを詰め、気合を込めた連撃を心臓めがけて撃ちこんだ。8連撃できた。記録更新だ。

やつの心臓のあった場所は、でかい杭でも打ちこまれたように大きな穴があいてる。

槍で突いてもこんな穴が開くんだなぁ。

そんなことを思った。


アイテムボックスに回収する時に確認したら、ブラックグリスリーと言うらしい。

LV20だ。

今の俺は昨日のゴブリン戦で一気に上がってLV12になっていたけど、遥かに高いLVだな。ちなみに、今確認したらLV18になっていた。一体でLVが6も上がるとは。

まあともかく、無事に討伐出来てよかった。


LV18になって能力値も一気に増えた。

能力値も全項目均等に増えてるんだよな。

情報ではランダムかつ増えないこともあるって話だったけどな。

その辺りどうなってるんだろう。

ともかく、博愛神の加護の効果がかなりおいしい状態になっている。

単純計算で3倍近いレベルの時と同じHPとSPってことになるし。

それに回復スピードが爆速。

はじめは1分辺り1ずつSPが回復してたけど、今は1分で10は回復してる。

HPもSPもレベル1の時の10倍になってるから、回復スピードも10倍だな。

お陰で回復魔法の練習が無限にできそうだ。

30秒で5回復するから30秒ごとに発動すればSPは常に満タンだ。


森を歩きながら、回復魔法を掛けまくる。

ついでに索敵についてもいろいろ試している。

ゲームの時の知識を総動員させて何とかスキルを獲得できるように頑張ろう。


そんなことを考えながら森を進んだら、あっという間に街についた。

そう言えば帰りの森では魔物にエンカウントしなかったな。

そろそろこの森も狩り場としては終わりかな。


ギルドに帰って、討伐の完了手続きを行った。

受付がシャルルさんだったので、ブラックグリスリーを討伐したことを話したら、ちょっと待っててと言われて、昨日と同じ解体場に連れて行かれた。

またもや、ギルマスの親父さんがやって来た。


「今日は、ブラックグリスリーを討伐したじゃと?出してくれんか。」


言われたとおりに出してやった。

胸に大きな穴があいてるけど。


「これは間違いなく、ブラックグリスリーじゃな。こいつまで単独で討伐するとはな。」


「えっと拙かったですか?」


「こいつは、B級指定された魔物じゃ。それもパーティー討伐を想定した上でB級指定じゃが。魔法を使えんし、身体強化などのスキルも持っておらん。囲んで力で押せば狩るのは比較的簡単じゃ。じゃが、それはB級冒険者が数人が狩りで狩った場合じゃ。単独で相手にするには俊敏と筋力が高いからの。」


「心臓に空いた穴は、魔法じゃないな。ふむ。まあ詮索はせぬが、相変わらず凄まじいな。」


「それでここに呼ばれた理由はなんでしょうか?」


「なんだ聞いておらんのか。シャルルが恐らくジュン殿は解体をやったことないし、ブラックグリスリーの解体の指導を行って欲しいと言われたんじゃが。」


「ごめんなさい、ジュンさん。急いでたんでジュンさんに確認するの忘れてたし、第一あの場でこれ出されてたら、相当目立っていたと言うか、マジックバックアイテムのこと隠しようもなかっただろうし。」


「いえ、お気遣いありがとうございます。僕も解体については教えて頂く予定でしたし。」


「ふむ。解体をやったことがないなら、こっちに任せて貰った方がよいな。ブラックグリスリーは捨てる場所がないぐらい、いろんな素材が取れるからな。解体をするんでそのうちどれをギルドに売ってくれるのか決めて貰った方がいいな。」


「はいありがとうございます。あのそれで、今日キラービーの討伐の依頼で出かけたんですけど、そっちの解体も教えて貰っていいでしょうか?」


「勿論構わんよ。じゃあ後は、職員に任せるから、わしは失礼するよ。」


そう言ってギルマスが出て行った。


解体はいろいろ教えて貰いながら順調に進んだ。

肝臓や、腎臓、精嚢なども売れるそうだ。

目玉や、手のひらなんかも素材になるらしい。勿論、骨も。

核と呼ばれる物は傷が付いていてほとんど価値はないとのことだ。

なるほど、心臓部分にあるのか核って。

それでも普通は目玉や頭を狙って討伐することが多く、こんなにいい状態で、牙や、舌などの頭のパーツが取れたので、核がなくても全体の売値としてはかなり高いらしい。

肉は高級肉として売れるので、一流の食堂か商業組合で売った方がいいとシャルルさんにアドバイスされた。

他の部位も個別に調合師や、鍛冶師に持ち込めば高く売れるとのことだったけど、面倒なので、肉以外は全てギルドに買い取って貰った。


キラービーの方は、最初の一体は見学して、2体目から横で解体して貰いながら自分で解体し、何度か手間取りながら、最後の1体は大切な部位は完璧に解体できるようになった。

後で確認したら料理スキルが取れてたけど、解体って料理スキルなんだってちょっとびっくりした。

確かに、解体しながらここは出汁にとか、この肉は焼くと美味いとかいろんな情報を教えて貰ったけどね。


ともかく、その日は夕方近くまでかかって無事に解体が終わって、清算をして貰って孤児院に帰った時にはいつもと変わらない時間だった。


今日はお土産はないのかと待ち構えててた子供達にタコスみたいなやつを出してやったら、すごく喜ばれた。

やはり人気の商品で、夕方にはなくなっているようだ。

おこずかいを貯めて極たまに皆で買って食べるみたいだ。

今日は腹いっぱい食べてくれ。

マリアさんには、キラービーの肉とブラックグリスリーの肉を出してあげた。

枠がないので女の子に持って貰うことにしたけど、なるほど、普通はキラービーぐらいの大きさで一枠使うんだな。ブラックグリスリーの肉は俺も一部を出したつもりだけど、さらに小さく切りなおして収納することになった。




その日夕食を食べた後、マリアさんに話しに行った。

それはギルドから帰る時に、シャルルさんに言われたことを決めたからだ。


「未だに僕の記憶は戻っていないんですけど、シャルルさんによるとどうやら僕には武術の才能がある様なんです。身元がしっかりしていれば王宮の騎士団に入ると言う選択もあるようですが、冒険者としてさらに力をつけるためには、迷宮に潜った方がいいと言われました。僕もそうしたいと思います。」


「そう、ジュンならいつかはそうなると思ってたわ。ドルガーさんも同じように自分の槍術を極めるために迷宮に潜って戦っているのよ。ジュンもそうなるのね。」


「いろいろお世話になったのに勝手してすみません。」


「何を言ってるの。ジュンのお陰で子供たちの毎日の食事や、生活の心配がなくなったわ。心から感謝してるのよ。ここはジュンの家でもあるんだからいつでも帰ってきていいから。」


「ありがとうございます。しばらくこの街を離れます。今日はいろいろ討伐出来て金貨10枚分ほど収入がありました。1枚だけですけど、受け取って下さい。」


「まあまあ、お肉をたくさんもらったのに。」


「いえ、しばらくまとまったお金は入らないでしょうし、マリアさんが持っていて下さい。」


「ありがとう、ジュン。大切に使わせて貰うわね。それで出発はどうするの?」


「明日の朝早く、迷宮都市行きの馬車が出るそうなのでそれで出る予定です。」


「そう。迷宮都市までは馬車なら1日もかからないから、いつでも戻ってきなさいね。」


ラブラブ、ウフフの展開もなく、その日はぐっすり寝て、翌日孤児院を出た。

孤児院を出る時に子供達に挨拶はとか言われたけど、ガドナーさんも別に何も言わず行き来してるみたいだし、俺もそれでいいかと思ってマリアさんにだけ挨拶して出て行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ