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とある日の出来事。

 (急げ、急げ…!!)

一人の少女が、手に紙袋を持って校内を走りまわっていた。

(いた!)

少女はお目当ての人物を発見したようだ。さらにスピードを上げ、近づいていく。息を整え―そして、呼びとめた。

「…青葉くんっ、待って!」





 ―4月10日のこと。今日は、青葉学園の入学式の日だ。

(さくら、きれい…)

うっとりと桜の木を見上げる少女の名前は、幹本香恋。今年、見事受験に合格してこの学校に入学することになったのだ。

「香恋ーっ!一緒に写真撮ろーっ」

少し離れたところから、友達が名前を呼んできた。

(私、このピンク色が一番好きだなぁ。淡い感じで…)

しかし、当の本人は目の前に立っている桜の木に夢中である。全く声が届いていない。

「香恋ーっ」

友達はさらに近づいて名前を呼んだ。

(あ、これ…きれいなグラデーションだ)

「香恋ーっ」

(わーっ、これ写真撮っときたいよー!!お母さんはカメラ持ってるかな…)

「…。」

友達は後ろから襟をつまみあげ、大声で言った。

「かぁーーれぇーーんーーーっ!」

「うっ、うわぁっ!?」

さすがの香恋も、気づいたようだ。びっくりして真上にとびあがっている。

「もー、香恋ってば!私ずーっと呼んでたんだよ?全く、いつまで桜を見続けるつもりだったんでちゅかー?」

一瞬、怒っているかと思ったが、そうじゃないと気付いた香恋は、安心して同じ調子で返事をした。

「えへっ、ずーっっと、でちゅ!」

「ずーっっと、って…日が暮れちゃうよ!」

あははっ、と二人は笑った。すると、いつのまにここに来ていたのか、お母さんが目の前に立っていた。そして、笑顔でさらっと言った。

「二人とも、楽しそうなのはいいけど、写真は撮ったの??」

これにより、大事なことを忘れていることに気付いた二人は叫んだ。

「「…あーっっ!しゃーしーんーーっ!!」」


 無事に写真を撮って、家に帰った香恋は、自分の部屋のベッドの上で携帯をいじり始めた。

(あ、この壁紙かわいいなぁ~。変えよっかなー…あ、でも、これもかわいい…。迷うー!)

と、迷っていると、誰かからメールが届いた。

「心愛ちゃんっ!」

画面に表示された名前を見るなり、香恋は声をあげた。ちなみに「心愛ちゃん」とは、先ほど香恋と一緒にいた『親友』である。幼稚園児のころからずっと一緒だったため、まるで姉妹のように仲がいいのだ。

『今日…楽しかったね!香恋ママが先に帰ってたら、写真撮り損ねてたよねー?笑 ありがとうございます、って言っといてね』

(ほんとに、楽しかったなぁ)

香恋は、返事の文を打ち始めた。慣れた手つきで、スマホの画面の上で指を滑らせている。

『うん、楽しかったね!写真のこと、言っとくね❤』

「よし、送信、っと!」

ポンっ。香恋が送信すると同時に、心愛からメールが送られてきた。

「速っっ!!…って、あれ??」

いくらなんでも速すぎるんじゃない?疑問に思った香恋は、すぐに文を呼んだ。すると、そこにはこう書いてあった。

『…学校にさ、いい人がいるといいね!恋したいしー笑』

(こ、これは…)

間違いなく、香恋からのメールに対する返信ではないだろう。

(心愛ちゃんってば、そんなに恋したいんだね。女の子だなあ)

『あはは、そうだね!恋したいよねー』

そう返信するだけして、香恋は思った。

(恋、って、なんだろう…)


 翌日。学校にいそいそと登校した香恋は、教室に一人でいた。

(…楽しみすぎて、早く来すぎちゃった)

時計を見ると、針は6時30分を指していた。確かに、学校に来るには早すぎる時間だ。

(何しようかな?うーん…。あっ、正門のとこに立って、心愛ちゃんを待ちながら皆にあいさつをしようかな?新しいお友達ができるかもしれないし…)

うん、いいアイデアだ、と手を叩いて、「すぐに実行しなくちゃ」と教室のドアに向かって走りだした。

すると、誰かの声が廊下に響いた。

「あー、早く来すぎたーっ!誰もいないんじゃ…」

(誰?男の子の声っぽいけど…)

香恋はドアの近くで止まって耳を澄ました。足音はどんどん大きくなって、自分の教室に近づいてくる。それにつれて、香恋はなぜかドキドキしてきた。

(なんか、変な感じがする…)

―と、途端に足音が聞こえなくなった。

(…??私のクラスの人じゃなかったのかな。でも、ドアを開ける音もしなかったし…)

香恋は、確認しようと、ドアに手をかけた。そして、勢いよくその手をスライドさせた。

すると、目の前に誰かが立っていた。

「「うわぁっ?!」」

香恋とその男の子は同時に叫んだ。―次の瞬間。

香恋は床に押し倒されていた。

(…えっ?いったい何が起こったの…??)

二人とも、状況が理解できずに止まっていた。



これが何かの始まりだということを知らないまま―。












































 


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