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購買部のお姉さん  作者: 石田空
後日談・設定メモ

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瓜田君は応援する人でありたい

瓜田君が芙美さんを見ていたのは、こういう事でした。

 キラキラしているものが好きなんだ、オレ。

 宝石はあんまり興味ないかなあ。女の子は好きみたいだけどね。でもずっと変わらないものは何故か綺麗って思えないんだよな。あ、失礼だった? ごめんなさい!

 例えば夏のポプラ並木。夏の強い日差しを受けてキラキラ光る様が眩しいし、そこで狐の嫁入りなんて降った時には、緑の強い匂いと土の匂いがむわりとして、ああ綺麗だなあって思うんだ。

 例えば夜店で飲むラムネ。不思議だよね、オレってあんまり炭酸飲まないんだ、コーラよりもコーヒーの方が好きだし、ラムネだってスーパーで売ってるのに夜店以外だったら買わないで素通りしている。でも夜店で買うラムネって、中のころころ転がるビー玉の音を聞きながら、あのシュワシュワする喉越しが、夜風に吹かれると妙に気持ちいいんだ。美味しいって言うよりも、気持ちいい。……あ、訳分かんないよね、ゴメン!

 オレが応援団に入ったのも、あの長ラン姿が格好よかったのもひとつだけど、やっぱりキラキラしてるものを見るのが好きだからって言うのがあるかなあ……。マネージャーや選手って方向でキラキラしているのを見るっていうのもあるかもしれない。でもオレ、中学の時に野球部だったっていうのが大きいかなあ……。

 相手チームは甲子園に何度も出てるような高校の中等部で、対してうちは部員かつかつののんびりしながら野球してたチーム。別に負けるのに慣れてるって訳じゃないんだ。ただ、野球も好きで他のものも好き。野球に命をかけてるようなチームじゃなかったんだ。

 試合の時はもう、悲惨ってもんじゃない位に点数をばこばこに入れられた。今思ってもひっどい話だなあって思う。相手チームもコールドを狙っててやったんだろうな。あ、コールドってわかる? この場合は点差が開き過ぎて、これ以上はどうやっても埋まらないって判断されたら、全9回のゲームをするまでもなくその時点で勝ってる方が勝ちってされる奴。

 オレたちも最後までやりたいし、そんな負け方なんてしたくなかった。でも相手チームが強過ぎたんだ。うちはピッチャーはひとりしかいないのに対して、相手チームには三人もいた。こちらが対策立ててきたって判断した瞬間に選手交替してくるんだから、本当にひどかった。今思ったら来年以降に甲子園に連れて行く選手なんだから故障しないようにするって配慮だったのかもしれないけど、今はオレたちと真面目に試合して欲しかったな。

 皆折れそうだった。オレもその時ばかりはへらへらなんてしてなかった。でもさ。ちょっと観客席に耳を澄ませるんだ。相手チームは強豪だったから黒づくめの応援団に、チアガールもいて、吹奏楽の音だって分厚い。そんな派手派手な応援が展開されてる中、うちの観客席にはひとりだけ長ランの人がいたんだ。

 太鼓もない、吹奏楽もない、応援に来た人だってまばらな中、その人は喉が潰れるんじゃないかって言う位に応援してくれてたんだ。あれにはびっくりしたし、その人がすごーくキラキラ光って見えたんだよ。

 頑張って頑張って頑張ったけど、結果はコールド負け。俺達は観客席まで走って、お礼をした中でも、その人は笑顔で「頑張った!」と言ってくれたのに、思わず泣きそうになったなあ……。どう見てもその試合で一番頑張ったのって、その人だったと思うんだ。

 それから、俺は幸塚高校に来て、応援団に入ったんだ。

「ねだるな勝ち取れ、さすれば与えられん」だっけ。うちの学校の校訓はよく校長先生が朝礼で言ってるよ。その校風だったからガツガツしてんのかなって思ってたけど、うちの学校べつにそこまでガツガツしてないよね。イベントごとだと盛り上がるけど。

 初めて応援団で行ったのは、女子バレー部の大会だった。すごい接戦だったけど、結果は相手チームの勝ちでね。女子バレー部の皆がぽろぽろ泣いてる中、ひたすら謝られている人がいたんだ。その人はバレー部の人達とは何か違ったから、今思うとアクシデントで人数足りなくなった助っ人だったのかもしれない。とにかく凛。とした人だったのは印象に残ってる。最初は随分と格好いい人だなあって思ったし、二度目見た時も印象は変わらなかったなあ。

 二度目は、うちの先輩の妹……だからオレと同い年かな、その人が合気道の試合に出るからって事で、見学に行ったんだ。そこで見た。格好いい人が、対戦相手と応戦している姿が、とにかくすごかった。合気道のルールはわかんないけど、気迫。柔道は授業でやってるし、空手道場も近所にあるけど、どれとも雰囲気が違うんだよな。あー……剣道? それが一番近いかもしれない。

 すごいなあと見入っていたら、その人が勝った。格好いい人が勝ったっていうのは、それだけで絵になるよね。

 でもその人がただ凛、とした人だったら、多分目で追うこともなかったし、そのまま忘れてたんじゃないかなあ。その人と再会……と言っても、一方的に見てるだけだけどさ……したのは、ここだったんだ。購買部。お姉さんと随分と話している時びっくりしたよ。花が綻んでるって言うのから、凛っていうよりもふんわりとしているのは初めて見たから。

 そんな笑顔も出せる人なんだなあって思ったら、ものすごくほっとした気がした。女の子って優しい顔も強い顔も持ってるものだって思うから。それって男尊女卑になるのかな? 男は別にいいと思うんだ。馬鹿なまんまで。でも女の子まで男側に来なくってもいいとはいつも思ってるよ。

 もし女の子にそんなふんわりとした顔されたら、多分嬉しいだろうね。

 え、オレにはそんな顔させたい人いないのかって? うーんうーん……まだそんな人いないかなあ。でもオレの身長を見ない人がいいな、これでも中学入ってから年に7cmは伸びてるんだ、今はまだ小さいかもしれないけど、高校卒業までには170cmは絶対超えるから。もっと伸びてもいいなら、もっと欲しいけど。

 あ、そろそろ集合だ。じゃあオレ、もうそろそろ行くよ。今日の午後の試合も勝って、全国に行くんでしょう?


****


「瓜田君って、小さいけど格好いいよね」

「でもよかったぁ……三田先輩に対しては別に恋愛対象じゃないみたいだし……」

「今日も勝てたら、明日も応援に来てくれるんでしょ、頑張るよ」

「ふぁいっっ……!」

キラキラしているのを見るのが好きな彼は、自分も見られていると言う自覚がないのです。

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