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1-5の担任が、教室に入るのと同時に涼子が戻ってきた。

「セーフセーフ!」

息を切らせながら、席に着く。

「ね、あの男の子と友達になっちゃった。」

小声で恐ろしい事をサラリと言いながら、前を向く。


桃華は、ポーカーフェイスだが内心物凄く焦った。

本当は近寄らない方がいい!と警告しようとしたけど…さっき友達になったばかりの涼子に言えるはずもなく、言葉を飲み込んだ。

こうなったら、自分が涼子を護るしかない。

怖いけど、自分しか対抗できないと思う。

桃華は暗示をかけるように、決心した。


「皆さん。今日から一年間君達の担任となる、水瀬みなせ 良哉りょうやです。よろしく。」


桃華は、じっとりと湿った拳をゆっくりと開き…良哉の目を盗みつつ、スカートのポケットから先ほど静電気のような電流で桃華を助けた岩の欠片を取り出した。

そう…もう微かにしか覚えていないけれど…幼い頃恋心を抱いていた鬼の岩。


引っ越した当初は、岩に一生懸命話しかけていた覚えがある。だけど、彼女の声に反応することが無かったので、「グレン」の記憶がどんどん薄くなっていった。

だけど、桃華にとってこの岩の欠片はパワーストーンで、辛いことや悲しいこと、怒りや憎しみの感情が湧いたときに握りしめると不思議と心が落ち着いたのだ。そして、先ほどの出来事のように危機が訪れると助けてくれる。桃華を助けた後はいつも、岩に邪気が溜まるので糸を紡いで浄化して大切に持ち続けていた。


「入学式に行くぞ、後ろに席順で並べ。」

 生徒達は、大人しく良哉の先導で体育館へ向かう。



体育館の後方には、すでに保護者が着席している。

桃華の母親も座っているはずだ。

順調に式が行われているが、桃華は息を殺していた。

地元の名士のスピーチが行われていて、生徒が神妙に聞いている中…。

例の『何か』が頭上を飛んでいた。


まるで、誰かを探すように。


一人一人の顔を覗き込んでいる。

イヤだイヤだイヤだ。怖い!

少しづつ近づいて来る。

『何か』は準の顔を眺め、匂いを嗅ぐように上から下まで眺めている。首を傾げて、隣の生徒へ…。

『何か』は、自分を探しているのではないのか?直感で気がつく。


桃華の近くに来るほんの少し前に、ポケットから岩を取り出して祈った。

―――どうか、気づかれませんように。


すると・・・赤い光がほわっと桃華を包み込んだ。

その光は、何故だか紅蓮華の力で桃華を守ってくれているような気がした。


『何か』が光に近づいた。

そして触れた瞬間だった。

『ぎやぁああぁぁあ』

光が強く発光した。


普通の人には見えない筈の光と、『何か』の気配に霊感の強い何人かの生徒が感じ取った。

そして、前方の1-3の生徒の辺りで倒れた男子生徒がいた。

ザワザワ…

名士の言葉に飽きた生徒が面白いことが起こったと、男子生徒に注目が集まる。

急いで、1-3の担任が彼を運び出した。


「ね、さっき運ばれた子、さっき桃華と見に行った子だよ!大丈夫かな…。ちなみに、大杉 薫って言うんだって。」

「え?」


一瞬脳裏に、きちんとお別れの挨拶が出来なかった薫の事が浮かんだ。

でも、彼の名字は相良だったはず。

それに、彼は純粋な心を持っていた。あんな気持の悪いモノは連れていない。

すぐさま否定した。

そして邪気が削がれた『何か』は、大杉薫に縋りついて、一緒にいなくなった。



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