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準が涼子に一目惚れしたのはすぐ分かったが、桃華にも笑顔を見せて差別するような事はしなかった。
「ねぇ、1-3の教室覗きにいかない?物凄い美少年がいるらしいよ。まだ時間あるし!」
そう言いながら桃華が返事をする前に、涼子は腕を掴んで立ち上がらせた。
「えー、美少年だったらココにいるだろ?」
「どこ?どこにいるの?って冗談は置いといて、行くよ~。」
桃華の腕を更に引っ張って、噂の教室へ行く。
「ね、中に入ってもきっと1-3の人だと思われるから堂々と入っちゃお♪」
「う…うん。でも、何か良くない予感がするんだけど…。」
桃華は、尋常じゃない空気を感じていた。
今までにない異常な空気。
紅蓮華の邪気よりも、もっともっと禍々しい。
背中がゾクゾクする。
「あ、いた!本当カッコイイ。」
涼子の指さす方向を見た…。
邪悪な空気の原因がそこに居た。
息が止まるかと思った。彼の背中には何かが憑いている。
彼とダブるように、『何か』がいた。
あんなにハッキリと人型を形どっている邪気は初めて見た。服装は、上質な着物を着ており、髪の毛は結いあげている。
その時だった。
『何か』が桃華の存在に気がついたように、ゆっくりと振り向こうとしていた。
桃華は、緊張で汗が吹き出し、吐き気がした。身体は小刻みに震える。
周りの同級生の歓声などが、聞こえなくなった。
口の中が一瞬で異常に乾いた。目を合わせてはいけない。そう思った。
ゆっくりゆっくりと、桃華の恐怖を楽しむように…時々テレビの砂嵐のように、ブレながら…振り向く。
――だめ!目を合わせちゃダメ!逃げるのよ!
その時、スカートのポケットからパシっと静電気のような物が走った。
それをきっかけにダッシュで逃げた。
――冗談じゃない!あんな気持の悪いモノがいる学校に通うことになるなんて。
「ちょ!桃華?」
涼子は、訳が分からないというように茫然と立ち尽くした。
「ねぇ、彼女の友達?」
気がつくと涼子の真後ろに、先ほどまで机にいたはずの、噂の彼が立っていた。
「ひっ・・・!」
「あ、ごめん。驚かすつもりは無かったんだけど。」
魅惑的な瞳で、涼子に微笑む。
「ううん。大丈夫。ちょっとビックリしただけ。」
「そ?・・・あの走って行った子と友達なの?」
「うん。さっき友達になったばかりだけど。」
「知り合いに似ているんだ。あの子の名前教えて?」