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今日は、一日オリエンテーリングだった。

部活動の紹介。選択科目について(一年生は通常の授業を行い、二年は文系・理系を選択し、三年は大学受験に向けた授業が展開される。)

割と自由な校風だが、国立大への進学率がいいため、親にも子供にも好評な高校だ。


「ね。桃ちーん。薫君にダブルデート断られちゃった。なんか身体が弱いんだって。」

涼子は、桃華から更に砕けた呼び名で話しかける。

「でもね、その代り別の時に会ってくれるんだって。最近薫君女子に人気で、中々話す機会が難しいんだけどさ。やっぱり、私だからかな。」

 桃華は、どう答えたらいいものか戸惑った。

「良かったね?」

 思わず疑問形になってしまう。

「うんっ。2人きりで会ってくれるって言うし。あ~どうしよ。緊張する。あ!ねえねえ、そう言えばさ、桃ちん。私と同じ部活に入ろうよ。」

体育館で大人しく座っている一年生に、ステージではテニス部がいかに楽しい部活なのか、合宿が素晴らしいかを演説している。

「私、運動系が苦手なので文化系の部活にしようかと思っているんだけど。」

「え~。やっぱテニスでしょ。見て、あの部長カッコ良くない?」

テンション上がって大きな声になる涼子に、シーっと声を潜めるよう唇に人差し指を当てる。

「あ、私あの部活に入りたくて。」

テニスの次は写真部だった。適当に逃れるための方便だった。

「写真部ってオタクっぽいかと思ったけど、メッチャカッコイイ人もいるじゃん。よし、私も桃ちんと同じ写真部にする!じゃあ、早速今日体験入学しに行こうね。」

「う…うん。」


今更、適当に決めましたとは言えず…それでも、鬼封の景色の写真を撮るのもいいなぁと思いなおし、うなずいた。


「えー、二人とも写真部かよぉー。女子サッカーか女子バスケは?」

どうやら準は、中学自体はバスケだったようだが、『彼女』を作るんだったらサッカーか?などと不謹慎な事を考えていたらしい。そして、女性陣二人は揃って首を振った。

「桃ちんが写真部入りたいって言うからさ。友達いた方が心強いじゃん?」

桃華は、『友達』として見てくれたことが嬉しくて、頬を染めた。

「うーそっかぁ。んじゃ、俺サッカーやるからさー雄姿を写真に撮ってよ。」

「レギュラーになって、エースになったらねー。つか、そーゆーのは新聞部じゃないの?」

「うぉーそっかぁ!!」


結局、部活で桃華と涼子とは何の接点も見いだせず、「俺の青春おわた」と呟いた後、近くでサッカー部に入ろうかと話している男子の方へフラフラと去って行った。


オリエンテーリングの部活動の紹介も終わり、休憩時間で一旦教室に戻った。

教室では、生徒達がどの部活にするか、同じクラスに仲間がいるか大騒ぎだった。

 男子に人気があったのはサッカーバスケ、次いで軽音楽部。女子に人気があったのは、チアリーディング、吹奏楽、スポーツ系の部活のマネージャーとなっていた。


 その日の午後、桃華と涼子は写真部の部室へ行った。

「失礼します。」


 恐る恐る、中に入ると数名の生徒がいた。


「あ、体験入部の方ですか?」

優しそうな、男子生徒が立ちあがった。


「はい!二人です。よろしくお願いします。」

涼子が勢いよくお辞儀したのをみて桃華も慌ててお辞儀をする。

 そして、癖で霞をチェックする。この人たちも普通の人と同じ程度の霞で、知らず知らず吐息を零した。

「あ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。とりあえず今日は構図とか何も考えずにカメラに触ってもらって自由に写真を撮ってもらうから。」

 勘違いした、先ほどの男子生徒がニコニコ笑って可愛らしい新入生二人を眺める。

「俺はこの写真部の部長で高科(たかしな) (けい)と言います。そっちが副部長の楠田(くすだ) 美穂(みほ)さん。そして、二年生で次期部長予定の名越(なごし) 大地(だいち)な。他にも、三年が三人二年が五人位いる。でも、殆ど幽霊部員だな。」

 桂は、困ったように眉を寄せた。


「とりあえず、こっち来て座ってよ。どうして人数少ないのに部として存続しているかって言うと、割と賞をもらう事が多いからなの。良かったら、作品見てみる?」

 美穂は、ずっしりとした作品集を二人に広げた。

 

「私は人物で、高科は風景や雑貨。んで、名越は鉄道写真が得意なんだよね。」

 桃華は三人の作品の中では、美穂の人物写真がいいなって思った。笑顔の写真だけじゃなく、何かを苦悩しているような写真だったり、考え事をしている人だったり。ストーリを想像してしまうぐらい引き込まれる写真だった。


「わぁ、高科先輩の写真、カッコイイ!これポストカードになりますよっ!」

 どうやら涼子は高科の写真に惹かれたようだ。


「有難う。文化祭では、気に入った写真をポストカードにして販売するんだよ。楠田さんみたいな人物写真は難しいから、いつも文化祭前はポスカ用にバタバタしてるよね。」

「もう、そういう事は黙っててよ!」


 なんだか部の感じも良さそうだし、桃華はここにしようと決めた。


「名越くんも、その道の鉄道マニアには有名な人物でね、しょっちゅう鉄道雑誌に写真が掲載されているんだよね。」

 美穂さんが数ページ捲ると、桜と電車、富士山と電車…様々な風景と共に、色々な電車が映り込んでいる写真があった。

「しかも、文化祭のポスカの売り上げは断トツなのよ?マニアな方々の他に男の子がいる家族が買い占めていくの!」

 美穂は熱く語る。もしかしたら、楠田先輩は名越先輩が好きなんだろうか、ぼんやりと写真を眺めながらそう思う。しかし、写真は本当に綺麗だった。

「凄い…です。私も皆さんみたいな写真が撮りたいです。」

 桃華は、ふわっと微笑んだ。純粋な笑顔に四人が固まった後、桂は照れたように咳払いをして、デジタル一眼レフカメラを取り出した。

「これは部の備品だけど、写真にはまると皆バイトして自分だけのカメラを買うんだよ。今日は備品のカメラを使って、写真を撮ってみようか?」

「「はい」」


「普通のコンパクトデジカメもかなり性能いいけど、一眼レフの良さは”ボケ感”かな。それじゃあ、小物とか撮ってみようか。これはマイクロレンズって言って、携帯カメラとかコンパクトカメラでは取れない細部まで撮れるレンズだよ。」

 桂の指導の元夢中になって写真を撮った。


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