表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

名門(現実逃避)

只今、孫策さん達が黄布ぶっ殺しファイヤーの最中です。しばらくお待ちください……


なう、ろーでぃんぐ。


ちょっと現実逃避しておりました袁垓です。

各地から集まった黄布追い詰め部隊の方々が囲む中で、周泰さんなどの諜報や工作が得意な部隊が黄布本隊の籠る砦に油を仕込み、黄蓋さんなどの率いるピンポイント百発百中弓矢部隊が火矢をぶち込んでいき、火だるまな砦に最初に到着しベストアンサーな位置取りをしていた曹操さんが砦にヒッャハーとばかりに飛び込んでいきました。


この間、実に3時間足らず。

色々おかしい。何でバラバラに集まった人達が

「お前の動きは全て知っている」

とばかりに絶妙なタイミングで動きを合わせたり出来るのかっ!!

躊躇いなく火攻めを選ぶ周瑜さんもアレだが、燃え盛りんぐボルケーノしている砦に突っ込める曹操さんの部下も充分アレである。

しかし、先頭で突っ込んでいった黒髪の女性は美人であった。

女性的な戦闘力も孫家の方々に負けず劣らず……ゴホンゲホン。くそう、現実逃避が止まらない。

取り敢えず、袁家的には出来る事がナッシング。

袁家直属の文官は弓矢などの消耗量の記録、武官は指揮の取り方や見るべき場所の参考を取ったり忙しい。

自分は本陣まで届く様な熱気に顔をしかめながら、黄布本陣の籠る砦を睨んでいる。



で、そんな自分をちょっと離れた所からジィーと見つめる孫権ちゃんの視線が痛い。

何だろう、何か失言しちゃってガチ切れでもされちゃっただろうか。

失言とか調子に乗るのは袁家の文化と思って貰うしかないのだから、広い心で見逃して欲しい。

横目でチラッと見るとキリッとした顔の孫権ちゃん、マジ美人。

違う、色々違う。

あれだよ、それっぽい台詞を期待されてるとして何か言わないとな。ほら、自分袁家ですし。名門ですし!!




「孫権さん、孫策さんが帰って来るまで少し話しませんか」


暗く沈む目に精一杯の気遣いをのせて、声をかけてくる袁垓に孫策は一瞬だけためらい


「喜んで」


と、ぎこちなく笑い返す。

袁垓が孫家の頭である孫策より、妹の孫権の方が与し易いと考えているのは自明の理である。

孫権が袁垓の立場であったなら同じ様に考えるし、孫権自身も我が身の至らなさに自噴している位なのだから。

だからこそ、その孫権自身の不甲斐なさを利用する。袁垓が過小評価してくれている内にその懐へ付け入り、油断させ、成長した暁に内側から食い破って袁術もろとも飲み込んでくれる。

そんな決意を心の奥深くにしまいこみ、淑やかに歩みより、袁垓の隣に儚げに並ぶ。

袁垓は轟々と燃え盛る砦を真正面に見据えたまま、後ろ手に腰で手を組んでいる。


「五十万とまで言われた黄布賊も呆気なく終わりですね」


大きく息を吐きながら感慨深く呟く袁垓。


「各地の黄布賊を追討してきた曹操殿達の活躍があればこそ、かと思います」


孫策達の活躍を強く主張しないのは袁術などに不要な危機感を与えたくないからだ。


「数だけ揃えても駄目な時代が来たのかも知れませんね」


呻く様に喋る袁垓の顔を見る。

暗く沈んだ目と青白い顔に感情の波は立っていない。


「しかし、数は確かな力です。黄布賊はそれを示したと言えるのではないですか?」


数の優位があるからこそ、袁家は孫家に絶対的優位であると思ってくれている。孫権は袁垓にその考えを改めて欲しくない。


「そうですね……五十万あれば漢王朝はゆらぐと判ったのですから」


そこで初めて孫権は袁垓の口調に熱を感じた。

横目に袁垓を見ると常に暗かったはずの目が煌々と赤く燃えていた。肌も脂が紅く照り映え、一文官の様な細身の体から燃え立つ様な熱気が溢れている。

ハッ、となり目をしばたかせる孫権。


「少し、暑いですね。孫策さん達も帰って来ますし下がりましょうか」


燃え盛っていた砦の屋根が崩れ、熱気が更に増していたのだろう。思っていたより炎が近くに燃え立っていた。

砦から孫権に目を移した袁垓の目はやはり暗く沈み、体からは常人並の覇気しか感じられない。

見間違いだったかと首を傾げる孫権に、袁垓は少しだけ微笑んだ。



フゥイエー!

緊張したったー!!

お互いに共通の話題とかないから、話をつなげるのマジできつかった……。

しかし、孫権ちゃんは昔からだけど孫策さんと違って女の子しとるね。いいよ、オジチャン感動しちゃう。孫家といえば肉食系という概念を打ち破る撫子っぷりに声が上ずるのを抑えきれない。顔も肌も熱くなろうってもんよ。

あー頬っぺた触るとあっつい、こりゃ顔赤くなってらーな。

しかし、孫権ちゃんが『数は力だよ』と話しを拾ってくれたのは有難かった。出来れば数は力だよ兄貴、とまでつなげてくれれば……いや、言うまい。

孫権ちゃんは良くやってくれた。自分も頑張った。それでいいじゃないか。出来れば孫家を初めとして他の人とも仲良くしたいけど、無理かなー無理じゃないといいけどなー。

官位とか都合してあげるから、美羽様のお手伝いしてね、キラッ!!みたいな風に爽やかに出来ればどれ程楽になるか……。

いや、これはあんまり爽やかじゃないな。思いっきり不正な匂いするし何故か腹にパンチされる幻想が。

黄布もこれで大元は断ったし、後は平和になるよね。さあ、帰って美羽様を愛でるとしますか。

ああ、皆仲良く世界が平和でありますように!

特に孫策さんとか孫策さんとか孫策さんが優しくありますように!!

美羽様とか美羽様とか美羽様が余計な事を言いませんように!!





「あら、もう帰ってしまうのかしら」


「あ、袁垓さん。お久しぶりです。少しよろしいですか?」


金髪ドリル(ミニ)と黒髪おかっぱの偉い美人二人に声をかけられた。

世界は自分に残酷だなぁ、と思いました。

袁垓統致、永遠の二十歳です。

美羽様成分が美羽成分が足りない。

後、七乃成分も深刻に足りない。

まとめて言うと、この二人居ないと袁垓はストレスで死ぬ。居てもストレスで死ぬ。

でも明日からまた頑張ろうって位に癒される。

袁家は本当に地獄だな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ