4−12
第四章 支部団長
12
「そんなにワシに会いたかったのか、尚。話しは全て聞いていたぞ。」
腕を組み、言い逃れの出来ない威圧感を振り撒く扇。
「全てって…どこら辺からですか?」
「そうだな。京が団員七人に短剣を向けられているところからだ。銀狼があまりに落ち着きがなくなるので、仕方なく京の後を追ったのだがな。」
一人で頷きながらも、響の頭を撫でる。つまりはほぼ初めから見ていたのだ。
いたのなら顔を出せ、熊がっ。そうすれば…いや、ボコるのを止めたかどうかは保証出来ないがな。
胸中で呟くが、京の無表情からは誰も感情を読み取れない。唯一響だけは、歩み寄って静かに手を頬の傷に伸ばしてきた。
「大丈夫だ、響。舐めときゃ治る。」
それくらい小さな傷だと言いたかったのだが、響は何を思ったのか京の衿元をぐいっと下に引っ張る。そして必然的に近付いた傷口をペロリと舐めたのだ。
「っ!」
「なっ?!」
「っ?」
三者それぞれの驚きを見せたが、一番の変化は京である。片手で己の顔を隠してはいるが、傍から見ても分かる程に赤面していた。
「いやぁ、面白いものを見ちゃったねぇ。京ってば、案外むっつり助平さん?あ、むっつりさんなのは皆も知ってるか。」
からかう尚。
「ふむ。ワシの知らない二人の世界なのだな。ん?どうした、銀狼。おぉ、黒板か。」
感心する扇の裾を引っ張って主張した響は、扇に渡していたテントを出る時に持っていた黒板を手にする。
『今、薬草がないから舐めてやった』
京の言葉を言葉通りに受け取った響だ。
『京は助平なのか?』
「ぶっ!アハハハハ、面白いね君!」
次に綴られた文字に尚が反応する。腹を抱えて笑い転げ、バンバンと力任せに隣にいた京の背中を叩いた。
「煩いぞ、尚。黙れ。」
ムッとしながら睨みつけるが、全く効果がない。扇は砂の大陸文字を読めないのか反応がなかった。
「もぅ、京ったらぁ。本当に自覚ないのかねぇ?彼に接する態度と全く違うのにぃ。」
「何がだ。」
「だからぁ、この魔導師君に向ける目はスッゴく優しいの。無表情の割に、目は感情だだ漏れだよねぇ。京ってば、助平さん。」
「…ほっとけ。」
からかう尚の言葉に、少しは思い当たる部分がある。言い返す事も出来ず、京はプイッと顔を背けた。




