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第三章 赤の旅団
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声が…っ!
金魚の様に口をパクパクとするも、響の喉は全く音を発する事が出来ない。そう、首輪にかけられた魔法に封じられたからだ。
「声が出なければ魔法を唱える事も出来まい。魔力を持っていても、放出出来なければただの餓鬼。銀狼と言えども牙を抜かれた犬ッコロだな。おい、縄も解いてやれ。」
「はっ。」
命じられるままに響の縄を解き始めるが、響はチャンスを待つ。獣毛コートの中には短剣が隠してあった。
然しながらその反撃は失敗に終わる。縄が解けた瞬間を狙って扇に短剣を向けたが、鎖を引っ張られて壁に叩きつけられたのだ。それでもすぐに短剣を拾って飛び掛かるが、いとも簡単に手首を捩られてそれを落としてしまう。
「やはり野良犬は躾をせねばな。」
鎖を引き上げて吊り上げられた響は、首輪に手をかけて顔を歪ませる事しか出来なかった。
「ククッ、良い顔をする。」
一頻り響を眺めた後、そのまま手を放して床に叩きつける。苦しげな吐息しか出せない響は、一方的な暴力に堪えるしかなかった。
※
夜が明けてしまった。くそっ…響は無事だろうか。
サラサに響を追わす京は、未だ辿り着けぬ苛立ちを隠す余裕もない。響との差は半時もなかったはずなのだが、この大陸特有の降り続く雪に行く手を阻まれ遅滞を余儀なくされていた。それでもさすがに町一番鼻が利くサラサだけの事はある。漸く赤の旅団のテント群が前方に確認出来た。
この中の何処かに響がいる。しかしどうやって救出するか、だ。下手をすれば響の命が危ない。さすがにこの大群相手では、俺もこの間のようにはいかないだろうしな。
強行手段が通じるのは相手が少人数の場合のみ。響のように複数に向ける攻撃方法がある訳でもなく、剣士であるが故の接近戦法では多勢に無勢だ。
「何だ、お前は。また入団希望の剣士か。」
あれこれと考えを巡らせている間に、知らぬ間にテント群に歩み寄っていた京。見張りの兵士に見つかったが、まさか旅団を潰しに来たとは思ってもないようである。
勘違いされた事に便乗して頷くと、ちょっと待ってろと奥へ引っ込んでいった。そして特別な検査もなく、一つのテントに通される。そこは厳つい男ばかりが集められた場所で、見張りの兵士の言っていた入団希望者なのだろう事は簡単に推測された。




