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第三章 赤の旅団
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町民と赤の旅団の話し合いを眺め続ける京だったが、一向に帰って来ない響に不安を覚え始める。
何処までトイレに行ってるんだ?遅い、遅すぎる。
苛立ちを抑えながら赤の旅団を睨みつけていると、急に動きがあった。話が済んだのか、頭を下げる町民を残して去っていく赤の旅団。何故か気になる、一団が抱えて行く大きないくつかの布袋の一つ。
まさか…な。
嫌な予感は得てして当たりやすいものだ。京は感情を押し殺したまま、引き返して来る町民に近付く。
「済んだのか。」
「あ、あぁはい。暫く渋っていたのですが、何やら急に上機嫌になりまして。今回はこれで良いとのお言葉を頂きました。京様もわざわざご足労頂きましたのに、何やら拍子抜けな感じですが…本当にありがとうございました。」
どうやら心底ホッとしている様子だ。響の事など知りもしないだろう。
「一つ聞きたいのだが、俺の連れの姿が見えない。知らないか?」
静かに告げられた言葉に、町民がザワザワと反応した。
「あの…っ!」
声を上げたのは、あの時宿屋に残っていた女性。オドオドとしながらも、京の側まで歩み寄って来る。
「何だ。」
「お連れの方が…宿屋に一度戻られて…、出て行かれたすぐに…赤の旅団の方々が…大きな布袋を担がれて…っ。」
この女性は響の姿を見ているのだ。見間違えるはずもない。
「…連れて行かれた、と?」
「は…、はい…っ。」
地を這うような低い声音に、真っ青になりながら首を縦に振っていた。感情を押し殺しているつもりの京だが、明らかに触れたら切れそうな程の空気を纏っている。
「そうか…。確認するが、ハンター協会への依頼は完了だな。」
「は、はいっ!」
代表者と思しい男が、首がもげそうな程首を縦に振っていた。
「それじゃあ、この後の事は俺の好きにさせてもらう。」
それだけ言うと、京は町民の返答も聞かずに踵を返す。その背に誰も声をかける事が出来なかった。
京が向かったのはレンタル屋。
「鼻が利くサラサを借りたい。」
「は、はいっ。」
無表情の裏にある怒りに圧倒されつつ、店主はこの店一番のサラサを貸し出す。もしサラサが戻って来なければそれに対する金額は膨大な損失だが、店主は自身の命に替えられなかった。




