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第三章 赤の旅団
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「まぁ…、俺は剣士だからな。」
「ん?」
唐突に告げられた京の言葉に、響は訳が分からず首を捻る。
「剣士は感情を表に出してはならないと、俺の師匠が言っていた。幼い頃からの修行で、それが染み付いたんだろう。」
「何だ、それ。面倒臭いな、お前。いっくらでもいるぞ、馬鹿みたいに騒がしい剣士なんか。…まぁ、騒がしい奴ならオレの方が願い下げだがな。」
「そうか。それは良かった。」
「何だ、それ。まぁ、良いや。腹減った!」
既に疑問より食い気に走っている響。テーブルに広げられた数々の料理に、満足げに舌鼓を打つのだった。
※
「今日なんだよな?奴等が来るの。」
「…そうだ。何もなければ良いが、恐らく素直には帰らないだろう。」
響の言葉に反応してしまう京は、本日という意味合いに心の中で肩を落とす。
あれから三日経ち、赤の旅団が立入検査をする日が来た。響と京は宿に残り、何かあれば町の人が声をかける事になっている。
「暇だなぁ。」
ベッドに転がり、時間を持て余している響。
「寝ていれば良いだろう。」
「さっき起きたばっかで、そう簡単に寝れるかよっ。」
「それなら、運動するか。」
「何処で?」
「ここ。ベッドの上で。」
「…お前、今すぐ死にたいらしいな。」
「冗談だ。」
「お前なっ!」
「しっ…、誰か来る。」
掴み掛かろうとした響だが、京が自らの口元に立てた人差し指を持っていった事で我に返った。確かに階下から荒々しい声が聞こえる。
「やめて下さいませ。こちらはお客様のお部屋でございます。」
「煩い!立入検査に来た我等の前に、町民も旅人も関係ない!」
「おやめ下さいませっ。」
そしてドカッと扉が蹴破られ、頭に赤い布を巻き付けた熊の様な男が入ってきた。
「ひゅー、綺麗な兄ちゃんがいるじゃねぇか。コイツも貰って…なんだぁ?お前。」
入って来るなりベッドの上に座っていた響に目を付けた男が手を伸ばした途端、同じくベッドの上の隣にいた京にその腕を思い切り掴まれる。しかもただ掴んだだけではなく、握り潰さんばかりの腕力。
「イデデ!?な、何しやがる!」
「人様の物に勝手に手を出したら、裁かれても当然だよな?」
「誰が人様の物だって?」
無表情で怒りを声音に乗せる京に、後ろから軽く蹴りを食らわす響だった。




