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第三章 赤の旅団
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色々と言っていたが耳を貸さず宿屋に京を残し、響はマルゴタの商店街に足を延ばす。
ったく、アイツは毎回毎回…そんなにオレが襲われる訳ないだろっての。うー、寒っ!
出掛けに危ないだの行くなだの言われ、強引に言い放って出て来たのだ。勿論宿屋を出た所で吹雪に怯んだが、それは誰にも見られていない。
獣毛コートでキッチリと身体を包み込み、同じくフードで頭をガード。前が少し見辛いが、寒さには勝てないのだ。
早いところ買い物済ませないとオレが凍る。食べ物だけ買って帰るぞ。
町の住人はいつもの事だから、寒さをものともせず動き回っている。響は足早に商店を見回し、横になっていても食べれそうな物をいくつか購入した。
宿屋に戻り部屋を開けると、大型犬が尻尾を振って待っている…ように京が見えたのでる。
「何、起き上がってんだ。」
「…心配で。」
「ばぁーか。…ほら、食い物だ。横になっていても食べれそうな物を買って来たから、寝ながら食え。」
嬉しくなる気持ちを抑え、無愛想に買ってきた食料を一袋分突き付けた。そして獣毛コートを脱いでベッドに腰掛けると、もう一方の袋を開けて食事を始める。
「ありがとう、響。頂きます…。」
「あ…、頂きます。」
静かに見ていた京は、食べ始めた響を見て漸く手を合わせた。響は忘れていたとばかりに慌てて手を合わせ、チラッと京に視線を向ける。目が合った。初めの頃のように強くは言われないものの、京からは無言の圧力が加えられる。小さく溜め息をつき、再び食事を再開した。
「そういえば、仕事の依頼があるって言ってなかったか?」
食事を終えて一息付いた頃、思い出したように響が問う。
「…詳しくはまだ聞いていないが、メルテクの町に赤の旅団から立入検査予告が来たらしい。」
「立入検査?」
「そうだ。赤の旅団は各大陸を跨いで勢力を伸ばしている武力集団なのは知っているだろ。そこで不定期に町へ検査と称して立ち入り、寄附として金目の物を奪う。時には人も攫っていく。」
「な…、横暴じゃないかっ。」
「だからそれを穏便に済ましてくれないかと、ハンター協会に依頼があった。」
勿論相手が赤の旅団では誰も引き受けたがらず、そんなところに雪山椒魚を討伐した京が現れたのだ。




