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第二章 戦い
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「…いつまでくっついてんだよっ!」
拳が伸びてくる。自己反省の終わった響は、抱きしめる京の腕から勢い良く飛び出した。
本当に油断も隙もない奴。酒が入ったり朝一番とかは、やたらにスキンシップしてくる。って、今日はオレがベッドに入って行ったらしいけど…知らないからオレは悪くないんだ。
結論は自分は被害者だと言う事らしい。寒いのもあって急いで服を着る響。下着の上に黒いモコモコとした服を着て、皮パンツに獣毛コートを羽織るだけだ。
「本当に猫みたいだな。」
「何っ?」
「気まぐれで、我が儘で。それでたまに甘えっ子なんだ。小さい頃に飼っていたな、猫。」
「野性のあの獣をか?凶暴でずる賢い…、悪魔じゃないか。」
「響そっくり。」
「何だとっ!お、お前は大型犬みたいだぞっ。自己中で人の話を聞かないし、自分の気のままに人を引きずって歩いて行くんだ!」
「…飼っていたのか、犬。で、引きずられていたと。それは単に、響に忠誠を尽くしていないだけだな。犬は忠義を重んじて群れをなす生き物だからな。」
「ムッ!」
響の言葉全てを返してくる。やはり、京には口でも敵わないのだ。
「うるせーっ!」
最終的にはその一言。そして京も既に装備を終えている事に気付く。
コイツ、いつか負かしてやるんだ。いつだって平気な顔してオレを上から見下ろしてくる。
ブツブツ文句を言いながらも、響は肩に布袋を背負った。
「何だ、もう行くのか?」
「オレがどうしようとお前には関係ないだろ。ほっとけっ!」
「そうだな。じゃあ、俺も出るとしよう。」
京がついて来るのを確認するまでもなく、響が部屋を出るとすぐその後ろを歩いてくる。
ストーカーかよ、コイツ。
「ブワッ!?」
だが宿屋の扉を開けて、すぐに雪混じりの突風に後ろに飛ばされた。勿論、軽く京に受け止められる。
「雪の大陸ライカでは、一日の大半が雪混じりの強風が吹き抜ける極寒の地だ。気をつけろ。」
「う、うるせーっ!びっくりしただけだよ!」
慌てて京から放れ、今度は風に負けないように前屈みになって足を踏み出した。そして一歩、二歩。だが、三歩目はない。思い切り固まった雪に足を取られ、滑った。
「ぅきゃっ?!」
「…響、冗談抜きだよな。」
もう少しで顔面強打というところで、腰を捕まれて抱き留められる。さすがの京も、呆れたように溜め息をついていた。




