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第二章 戦い
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響は苛立ち任せに、グイッとぶどう酒を飲み干す。
「響?」
「…何か腹立つ。」
「そうか。優しいな、響は。」
軽く手を上げて響の酒を注文しつつ、京は響の話を静かに聞いた。
「オレは優しくない。オレはオレの目的の為に行動しているだけだ。」
新しい酒が前に置かれると、再びそれを口にする。
「赤の奴等は横暴なんだ。…空から降って来る石は空石が殆どなんだ。その都度町を潰してたら…人間が全滅しちまう。」
呟く響の言葉を、京は一つ残らず聞き取ろうとした。
酒を飲む程に、深く酔う程に響は自分の殻を脱いでいく。だから勘違いして、それだけ俺に心を開いてくれていると勝手に思ってしまうんだ。
「…そう簡単に星の雫が手に入る訳…ないじゃねーか。」
そのままカウンターに伏せてしまう。
「…響?」
寝てしまった。本当に無防備過ぎだろ。けど今、星の雫の事を言っていた。響の目的はやはりそれなのか。
勘定を済ませ、京は軽々と響を抱き上げた。酒場の外は寒い為、響の来てきたコートで包む。その上から京が羽織った皮のマントで壊れ物のように抱き寄せた。
※
「…ん…っ、あったか…い…っ?」
突然意識が浮上する。瞬きを繰り返し、自分の現状を把握。隣に、というか背後に誰かいた。
「お、き、ろーっ!馬鹿変態ボケっ!お前は勝手に人の布団に入って来るんじゃねーっ!」
相手を確認しなくても分かる、体温と匂い。
「…あぁ…、おはよう響。」
蹴られて漸く薄く開けた黒い瞳が、寝癖のついた響の姿を映した。
「何怒ってるんだ?あ、響のベッドは後ろだぞ。夜ばい?あ、朝だから違うか。」
ゆっくりと半身を起こした京は何故か上半身裸である。
「えっ?オレがベッドを間違えた?つか、何で脱いでるんだよっ?」
「これは暑くなったから。寒いって、響が布団に入って来て。初めは冷たくて気持ち良かったけどな。」
話を聞いている間に段々と顔が赤くなっていく響。本当に記憶にないらしかった。
体温の低い響を抱いていたら気持ち良かったんだが。それ以上に熱くなる身体を抑えられなかった。下手に動くと響を起こしてしまうし、身体は正直で勝手に盛り上がってくるし。寝付けたのも、外が明るくなって来た頃なんだ。
「…悪い…。」
消えそうな声で頭を下げる響。
「ほら、来い。いつまでもそんな恰好で布団から出てるから、また冷たくなったじゃないか。」
暖炉のついてない部屋で、下着姿の響は酷く冷たくなっていた。
抱きしめると、冷たい身体が俺の火照りを冷ましてくれる。一人で反省中の響は、こんな俺の下心にも気付かないようだ。




