1−4+《Ⅰ》
第一章 出会い
4
「…一度死ななきゃ分からんみたいだなぁ?」
ギラリと鋭い眼差しを向けるが、京は全く堪えていない。
「死んだら分からないし。それに男とか女とか関係ないじゃないか。好きな者同士が結婚出来るって法律もある。」
「うるせー、うるせーっ!誰が男と結婚するかっ!」
「じゃあ、俺が女なら良い?ってか、名前教えて。」
「響…って、お前みたいな馬鹿デカイのがどうやったら女に見えるんだっ!」
「あ、それもそうか。ん?」
ふと気付く周囲。ギャラリーが大勢で取り囲み、黒マント響と大男京のコントの様な言い合いを見物していた。そしていつの間にか先程の男達はいない。
「あーっ、お前のせいでアイツ等逃がしちまったじゃねーかっ!どーしてくれんだよ、ってか放せ!」
「そうだね。んじゃとりあえず、医者かな。」
「ぅわっ?ボケ、下ろせっ!」
「どうも、お騒がせしました。」
暴れる響を軽々肩に担ぎ見物人達に頭を下げると、背中をボカボカ叩かれつつも酒場の前を立ち去っていく京。
「ボケがっ、下ろせって言ってんだろーがっ!」
「余り暴れない方が良いよ。頭から血が出てるし。」
背中越しに騒ぎ立てる響は、苛立ちの余り忘れていた。
京の背中を叩いていた手を止め、自らの後頭部に触れる。ヌルリとした感触にその手を見て数秒、その後気を失った。
「あれ?静かになった。響?」
呼んでも返答がない為、肩から下ろしてみる。響に意識がない事に京が酷く驚いたのは言うまでもなかった。
《Ⅰ》
※
「う〜っ…、ボケがっ!…ん?…何処だ、ここ。」
半ばうなされつつも意識を取り戻した響。見慣れない天井と知らない臭いに驚いて起き上がる。
「っく〜…、痛い…。」
頭部の激痛に前屈みになって堪えていると、ガチャリと扉が開いた。
「気付いたのか。でもまだ横になっていた方が良い。」
京は持っていた水の入った桶を近くの机に置くと、静かに響の身体を支えながら横たわらせる。頭の痛みで思考が回らない響は、ジッと京を見ていた。
「どうした?痛いのか?」
大きな身体を丸め、小首を傾げて問い掛けてくる。確かに痛いかと問われれば痛いので、響は小さく頷いてみた。