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響、またもや…。
第一章 出会い
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「少し疲れるが、気分が悪くなるよりマシだな。」
地図を布袋に入れて改めて出発する。が、又してもだ。
「…しつこいって言われない?」
呆れて大きな溜め息をこぼす。
「俺達は狙った獲物を逃がさないのさ。…今日は一人だよな?」
三度目の暴漢。響本人に単独かを確認する間抜けさは憎めないが、ここは既に町の外だ。つまりは、生死にかかわる法律は適用されない。
「オレが一人だろうとパーティーがいようと関係ないだろ。ここは町の外だと分かってて、会いに来てくれたんだよな。歓迎するぜ。」
対する響も、やられたらやり返すをモットーとしていた。頭を殴られた借りは、倍にして返さないと気が済まない。
「やっちまえ!!」
暴漢も響に火の魔法球で痛い目をみているので、互いがギラギラと殺気立っていた。
「火の玉。」
近付かれては体力の劣る響が不利になる為、暴漢達が戦闘体勢に入った途端に攻撃を開始する。響は火の魔法球が幾つも飛び交わせ、相手に武器を振るう隙を与えなかった。
だが暴漢も対魔導師戦に慣れているらしく、それぞれが手にした武器で魔法球を叩き壊す。同時に五人と戦っている響は、一つ一つの魔法球に集中して操作が出来なかった。
ジリジリと距離が縮まっていく。
「っ!」
前方の暴漢の足に魔法球を当てた途端、背後から飛んできた鎖に首を搦め捕られた。その勢いで後ろに引き倒され、思い切り背中を打つ。
背中の痛みと首を絞められた事で息が詰まり、響は無意識に呼吸をしようと大きく口を開けた。
「んうっ!?」
口の中に何かを押し込まれ、力強く横腹を蹴り飛ばされる。勢い良く転がり、首に巻き付いていた鎖が同様に全身に巻き付いた。
「どうだっ!これで身動き一つ取れまいっ!」
暴漢のリーダーらしき背の低い男が高笑いをする。
「口には丸めた布、全身に巻き付いた鎖。いくら魔法の発動が早くても、これでは声も出せまい。ぁあ?魔導師さんよぉ。」
顎を掴んで顔を近付かれ、響はギラギラとした瞳で呪う事しか出来なかった。
「…中々良い顔をしてるな。こりゃ、上玉だ。奴隷市場で高く売れるぞっ。その前に、俺達で味見させてもらうがな。」
一斉に下卑た笑い声がこだまする。最悪だった。
あぁ、芋虫状態です。




