1−11
第一章 出会い
11
ザワザワと賑やかな通りを行く。宿屋は商店のすぐ裏にあった為、通りに入った途端活気ある声があちらこちらから聞こえて来た。
「へぇー、さすがに大きい町は違うよな。」
辺りを物珍しそうに見回しながら京の後ろに続く。響は平均的な身長だが、明らかに周囲より頭一つ分大きい京は目立っていた。身体付きもガッシリとしている為、道行く人々が自然に避けてくれる。
「お前、便利良いな。」
「何がだ?それより逸れるなよ。小さいから見えなくなる。」
響の言わんとする事が分からない様子の京だったが、さりげなく嫌味を返してきた。
「ムッ!何だよ、デカければ良いってもんじゃねーっうの。…あ、あれ美味そう!」
ブツブツと文句を言っていた響だが、すぐ横の店に砂魚の丸焼きを見付ける。砂魚は砂漠に住む魔物の一種だが、小型のものは町でも普通に食糧として販売されていた。
「美味そうだな、おっちゃん。」
「あー、うちのは特別なタレを使って焼いているからなぁ。どうだい、安くしておくよ?」
「さっき朝飯食ったけど…、美味そうだから小さめの一つ貰える?」
「毎度ありっ。」
店主と軽く話して砂魚を頬張る。やはり匂いに間違いはなかった。
「うめーっ!」
ホクホクと幸せそうな顔で振り返ると、言わずもがな京の姿は見えない。
「あれ?アイツ、何処行きやがった?…まぁ、良いか。オレも次の旅の準備があるし、荷物は宿屋に置いたままだからな。また会う…いや、会いたい訳では決してない。ただ…そう、まだ礼を言ってないからな。」
独り言を呟き、砂魚をかじりながら通りを歩いた。
「お、これ良いじゃん。あ、これも欲しかったんだよな。」
いつの間にか両手一杯の買い物の品を抱えている。
「ヤバい、買い過ぎた。ちょっと圧縮しないと、鞄にも入りそうにないな。」
響は辺りを見回し、手近な路地に入っていった。魔力を使うのに集中しやすい、人通りの少ない場所を必要としたのである。
「よし、ここなら大丈夫だな。」
辺りを見回し安全を確認。買った品を並べて魔力を集中した。
響の周囲に風が舞う。
「風の神の懐。」
周囲の風が品物を包み込み、ギュッと力が加えられた。風が止んだ時には、全ての品物を纏めても掌に収まるサイズになる。
「ふぅ。これでいつでも…。」
マントの内側に収納しつつ視線を上げた。




