*6 陛下
「俺、こいつが気に入りました。父上、こいつ俺の部下にくださいよ。」
「……は?」
導くもの (Uma pessoa para conduzir *6)
時間は遡りまして。
クルスさんについて行って着きました、謁見の間。
……城って広いですよね、迷いますよね。1人で歩かないようにしましょう。
歩くなら方位の魔法でも使わないといけない気がします。
「連れてきました。」
「おお、待ってたぞ。入れ。」
クルスさんが謁見の間の外から声をかけるとすぐに返事が返ってきました。
……今の声の人が皇帝陛下、だろうか?
「失礼します。」
中に入るとRPG! というかんじの部屋でした。
(ドラ○エとかテ○ルズとかの王様の部屋を想像してもらえればいいです。)
「私が14代皇帝、オスワルド・ジル・ロジオンだ。
さっきの魔導師の試し、見せてもらったぞ。こいつ倒すとか、
初めてみた。さすがだな。」
「ありがとうございます。フレドリカ・ファルコーネの書状によりここにきました、
フレドリカ・ファルコーネの孫、アルベルティーナ・ギラルディーニでございます。」
……私の王様のイメージ、ほぼそのままです。ありがとうございます。
オスワルド・ジル・ロジオン陛下(長いからやっぱりさっきまでと同じで陛下でいいか)は
玉蜀黍色の髪の毛に群青色の目で、短髪。
今まであった人のように陛下も美形でした。
髪の色と目の色の組み合わせ、私の好みである。(あ、ここはまったく関係ないですよね。)
隣に座っていらっしゃる長い杏色の髪の毛に新橋色の目の女の方は奥様だろう。
陛下にぴったりのお方で、すごくきれいな人でした。
反対隣、は空席だけど……王子さまかお姫さまがいらっしゃるのだろうか?
同じくらいの年、いや、もっと年下でもいい、だったら魔導師になれた後
お会いしておしゃべり相手、くらいにさせてもらえないだろうか。
この2人の子供だ、確実に私が好きな髪の色と目の色の方に違いない。
私がこんなくだらないことを数秒の間に考えていると、陛下がおもしろそうに笑っていた。
「そうか、魔女の孫、そうだったな。してティーナ、お前は何が得意だ?」
「得意、ですか?」
これは結構難しい質問だ。おばあちゃんに言われて全属性使いとして鍛えてはきたが、
私には「これが私の十八番!」というのがないんです。(古いですか?)
強いて言えば、よく使う魔眼だろうか。
いや、だけどそれは術といえるのか?
陛下が見たい、というつもりでおっしゃっているのなら地味すぎないか?
答えるのに時間がかかっていると陛下がまた口を開いた。
「魔導師候補だから、いろいろできるのだろう? 私の希望を聞いてもらえるか?」
「はい。」
可能な限り。と心の中で付け加える。
「ティーナ、城の防御魔法は見たか?」
「はい。城に入ってくるときに確認しました。」
「よし。じゃあそれをはりなおしてもらおう。」
「……今日来たばっかりの私がやっていいものですか?」
正直、そこの部分が問題だと思います。
もしこれで私が隣国のもので、防御魔法を手を抜くというつもりだとしたら、大変なことに
なるのではないのでしょうか?
「大丈夫だ。なあ、クルス?」
「はい。ティーナ、お前さんこの方が陛下だって今日はじめて知ったじゃろ?
わしの顔も今日始めてみたじゃろ? フレドリカは何も教えていなかっただろ。
城の中を不思議そうにきょろきょろと見ていたお前さんが隣国のスパイ、と
いうことはまずないじゃろ。違うか?」
「……ありがとうございます。そうですよね。」
陛下もクルスさんも私を疑っていないみたいですね。
では、その信頼にこたえて防御魔法をはることにします。
外ではるのか、謁見の間ではるのか、と陛下に聞こうと口を開いたとき、
後ろのドア(つまり私とクルスさんが入ってきたほうですね)が開いて人が入ってきた。
「お、ザール、ちょうどいい。こっちに座れ。」
「はい。」
入ってきた人は陛下の隣(空席だったほう)に座る。
そこに座った人を見、私は予想は間違っていなかった!と心の中でガッツポーズをする。
ザール殿下(ですよね? 多分。本名知らないのでこの呼び方で)は
金糸雀色の髪に瑠璃色の目で、やや長い髪の毛を後ろで結んでいる。
年齢は16~18歳、というところだろうか? この世界の人はみんなはっきりと年齢がわからない。
「ティーナ、魔女は世間について全く教えてないんだって?
こいつはバルタザール・デオ・ロジオン。私の3番目の息子だ。」
教えてくださってありがとうございます。
バルタザール殿下、ですか。……それよりも3番目ってことは、まだ金髪青目の家族が
いらっしゃるのか! 見てみたいですね。
「ザールよりも防御魔法だ。ティーナ、ここでできるか?
できれば私にもかけたのがわかるようにしてほしいのだが。」
「わかりました。何か金属、もしくは水をためるものはありますか?」
バルタザール殿下(私はバルタザール殿下しか知らないからそのまま殿下、でいいか)の扱いは
そんなかんじでいいのだろうか?
まあ、それはおいといて。
映像を出すなら純粋な物質の上のほうがいい。もしくは水鏡ですかね。
陛下が水鏡を見てみたい、とおっしゃったので持って来てもらった丸いお盆
みたいなところに水をはった。
「<浄化>」
ちょっと補正の魔法をかけて陛下達に見えるようにお盆を宙に浮かせる。
城の外の防御魔法がかかっているのがわかるように水鏡に「視」える効果を加える。
何気にクルスさんも興味津々そうに見ていた。
「じゃあ、防御魔法かけますね。」
城の外で私が「視た」感じだと、今かかっているのは光と風の絡み合って網状にしてあるもので、
外からの攻撃、門ではないところから入ってくる人に反応するものみたいだ。
そして、それの維持に働いている魔力をもつ人が6人。
結構な魔力を取るものになっているみたいでした。
私がかけるのは同様に網目状のものではあるが、光・風・闇を混ぜる。
同様に外からの攻撃を防ぎ、門ではないところから入ってくる人に反応する、のに加え、
門での会話がわかるようにし、侵入者が入ってきたら「空間」に拘束するようにして、
構築式を組み替え、維持に働く人が4人でいいように変更した。
(2人分の魔力は私から取るようにしてある)
ついでにちょこちょこと開いていた穴も塞いでおく。
よし。これで(少なくとも私がいる間は)大丈夫だろう。
「こんなかんじでよろしいでしょうか?」
水鏡をまじまじと見つめている陛下(達)に聞く。
「あぁ。・・・想像以上だ。」
「ありがとうございます。」
水鏡を元に戻して水を払う。
美形にほめられるのはうれしい。と心の中で思っていると、殿下がこっちを見ているのに気づく。
殿下のほうに目を向けると目があった。
殿下がにやり、そう、にやり、と笑った。
既視感。
金髪青目なんて皇帝家以外見たことがないのに、なぜか今の顔に見覚えが……。
殿下はにやり、とこっちを向いて笑った後、陛下に声をかけた。
「俺、こいつが気に入りました。父上、こいつ俺の部下にくださいよ。」
「……は?」
……ここで、冒頭に戻るわけです。
「ああ。魔導師の試し終わっていないからティーナはまだ魔導師とは
名乗れないよな。風と土、は1週間のうちにできないこともないんだが……光、がなぁ。
光使いはかなり忙しいからな。」
「陛下、この調子だとティーナは魔導師になれるでしょうから、半年後の、
祝福祭のときにあわせて魔導師の試しを行うのはどうでしょう?」
「そうだな。じゃあ半年後まで、ティーナはザールの部下、てことでいいか。」
クルスさんが陛下に提案したのがあっさり通った。
って、え? 私、殿下の部下決定ですか? クルスさんの部下とかではなく?
「とりあえずそれまでは一級魔術師を名乗るようにしてくれ。
あ、クルスより水魔法、得意なようだから治癒術師でもいいぞ?」
「え、あの、クルスさんの部下、とかではいけないのでしょうか?」
「なんだ、俺の部下になるのは嫌か?」
さっきのにやり、がちょっと……嫌です!と答えようと思いましたが……殿下の、その、
顔がですね、悲しそうで、ですね……断れませんでした。
「わかりました。」
「そうか。じゃあ明日、とりあえず俺の部屋来いよ。」
私が了承した瞬間に顔が変わった。……殿下、私がその顔に弱いってわかってたんでしょうか。
ティーナ は 一級魔術師(仮)
治癒術師(仮)
に なった!
各話少しずつ訂正しました。
ティーナさんは金髪青目が好きです。
今日の夜にもう1話UPしようと思います。
この後2話は番外編、というか閑話になると思います。