*5 相性
ひっぱられてやってきました。
一級魔術師、バルドメロ・インフォンティーノの研究室です。
導くもの (Uma pessoa para conduzir *5)
さすが、一級魔術師なだけある。
研究室の中にある本を見てそう思った。
おばあちゃんが持っていた魔術の本、魔装具の本、構築式の本に加えて、
バルドメロさんの魔術が特化している火の本は私が読んだことのないものが半分くらいある。
……あとで貸してもらおう。
「私の魔術には、相手が無理に魔力をこめたり、相殺させないようにするように
構築式を組んだつもりだったのだが……私の魔術のほうに魔力をこめた、
と言っていたが、どんな感じにこめたのだ??」
あぁ、なるほど。だからここまでひっぱってこられたわけですね。
研究室には1人、私と同じくらいの年齢の弟子さん? もしくは部下さん? がいた。
バルドメロさんと私が入ってきてバルドメロさんが私に質問をすると、
説明しやすいようにか、紙とペンを持ってきてくれた。気がききますね。
「逆向きに、流し込んだんです。」
「逆向き、とは?」
弟子さん(勝手に決定)がもってきてくれた紙にさっきの<華炎>の構築式を描く。
「バルドメロさんはこう、この部分に……時計回りに魔力を流していましたから、
私は反時計回りに。そうするとバルドメロさんの魔力と私の魔力がぶつかりますよね?」
構築式をさしながらバルドメロさんに話す。目で続けろ、と促された。
「そこで、わたしがバルドメロさんの魔力を無理やり変換して……こっちのほうに
流れるようにしたんです。そうすれば構築式自体が駄目になって、
どかん、となったんですね。」
「……なるほど。そこの部分は考えていなかったな。」
その後もいろいろと質問された。
真面目……というか私が疲れるのですが。
矢継ぎ早な質問がやっと終わった、と思ったら。
「よし、じゃあ実験だ。もう一回会場に戻るぞ!!」
……はい? いやいや、何で私も一緒に行かなきゃいけないんですか??
「それは、私も強制的に、ですか?」
「もちろん! ティーナに手伝ってもらったんだからティーナが行かなくてどうする!」
………………
「わかりました。実験できる空間があればいいんですね?」
「だから行くんじゃないか。研究室じゃあ狭すぎる。」
「作りますから。ちょっと待っててください。」
「作るって……空間魔法か! さすが魔導師候補だな!」
バルドメロさんがまたいろいろと質問してきたが、答えないでおく。
さっき1個1個答えていたら2時間かかりましたから。これ以上はちょっと。
魔眼を使いながら空間の軸を設定しようと思った。
けれどそこで城の座標なんて生活してもいないし、研究もしてないので
座標がわからないことに気づく。
……よし。
「すみません、お弟子さん??」
「弟子、じゃない。息子だぞ。」
わお。バルドメロさんは結婚してたんですね。……年齢的にそうですよね。
「そうなんですか。すみません、お名前は?」
「俺、ですか? マクシミリアン・インフォンティーノです。今は三級魔術師の
職についています。」
「年、いくつですか?」
「16です。」
三級魔術師、親子そろって魔術師なんですか。
マクシミリアンさんは利休茶色の髪の毛にバルドメロさんと同じ深緋の目。
話を聞くとマクシミリアンさんは次男で、あと姉が1人いるそうだ。
……質問に答えるのに必死で見てなかったけど、確かに親子、てかんじですね。
年が近いし、魔術師だ。これから手伝ってもらうことも多いだろう。
ということで敬語をやめてもらってリアン、と呼ぶことにした。
おっと。目的から脱線してしまいました。
「リアン、そこでちょっとこれつけて立っていてもらえます?」
「ここでいいか?」
「うん。動かないでねー。」
私が腕につけていた魔装具をリアンに渡す。
座標がわからないので人の魔力を媒介として空間をつなげることにする。
うん。これならできそう。
「<天と地、海と陸、人と人の中にありし無限の空間よ>」
空間魔法は光と闇からの派生魔法である。
失敗すると結構危ない魔法なので詠唱して発動する。
「<開け>」
よし、開いた。
「バルドメロさん、ここの中に入ってください。リアン、ありがとう。動いていいよ。」
「おう! じゃあこの中で実験だ!!」
「ん、ティーナ、腕輪返すよ。」
バルドメロさんが意気揚々と開いた空間の中に入っていく。
城では初めてやったけどうまく開いたなぁ。
…………ん?
「リアン、ちょっと手貸してね。」
リアンが腕輪を私に返すために伸ばしていた手を掴み、魔眼を発動する。
「……やっぱり。」
人の魔力には固有の波長、というか波紋、というものが存在する。
リアンと私、かなり相性がいいらしいです。
道理であまり「人」を媒介にしたのに魔力を取られず、安定して空間が開けたわけですね。
「……ティーナ、これ、は? 研究室の中、魔法陣であふれてるぞ??」
「あれ? あ、もしかして……。」
今リアンの手には魔装具がある。それによって私が発動している魔眼が
リアンにも伝わって発動しているみたいだ。
「かなり」じゃなくて「とても」相性がいいのだろうか?
決めました。
魔導師になるようだったら、バルドメロさんからリアンをもらっていきましょう。
一人でそう決定していると、開いた空間からバルドメロさんに呼ばれた。
忘れてました。すみません。
それから2時間、実験に実験を重ね……私が何回も実験台となり……完成しました。
「よしっ。これで<華炎>はかなりの上級魔術になったぞ!」
「はは、よかった、ですね、バルドさん。」
「ん? ……空間の維持に疲れたのか。すまないな。」
「いや……。」
「悪い、ティーナ……。(親父が。)」
リアン、君が言った()の中身まで伝わったよ。
正直、疲労のパラメータとしては、
空間の維持< <華炎>の開発 <<<< バルドさんの相手、だ。
研究室に戻って空間を閉じてから、一息ついたところでノックがあった。
ドアを開けるとクルスさんでした。
「終わったかの。じゃあ行くぞ。」
「行くって、どこにですか?」
私、バルドさんの相手(新術の開発)で疲れたのですが。
「言ってなかったかの? 陛下との謁見じゃよ。」
「……冗談、じゃないですよね?」
「一級魔術師を信用しなさい。」
いや、信用できるような一級魔術師、知りませんから。
陛下に会ってみたい、とは思いましたが……。はぁ。
あきらめて研究室を出て行く前に魔眼で見たことを伝えるのを忘れていたのに気づく。
「リアン、あなた火使いとして三級魔術師に登録してる?」
「ああ。」
「訂正したほうがいいね。リアン、風も使えると思うよ。今度試してみて。」
私とリアンの相性のよさはそこにもあったのです。
リアンの目の色には表れていないけれど……また研究してみよう。
リアンは驚いているけど、それ以上にバルドさんが驚いているように見えました。
……今日は驚いた人の顔、たくさん見てますね。
「ティーナ」
「はい、行きます。」
クルスさんに呼ばれたので、今度こそ研究室を出て行く。
皇帝陛下、どんな人何でしょう?
本日、2話目をUPです。10話くらいまで一日2話UPできればいいのですが・・・。
お気に入り登録してくださっている方、ありがとうございます。
だんだんティーナの性格が変わってきている気が・・・(汗)
色について活動報告のほうで出してあるので、気になる方は見てみてください。