*4 試し(2)
「<大いなる闇、影より来たりてここに具現せよ>」
導くもの (Uma pessoa para conduzir *4)
地面からNARUTOでいうシカマルの影縫いの術? みたいな闇の手が伸びてくる。
うわぁ……やさしそうな顔してマルシアルさん、容赦ないですね……。
手加減してほしいわけではないんですけど。ちょっと、びっくりしました。
得意属性なので詠唱はなし。私は片手で円を描いて手でぐっとつかむ動作をする。
これで出てきた「手」はすべて拘束することができた。
これを消せば、OKですよね。
マルシアルさんが魔力をこめて拘束を外そうとしてきているのがわかる。
マルシアルさんが発動している術より下に私は術を発動した。
黒い穴を作り、ブラックホールみたいにマルシアルさんの術を飲み込む。
中に取り込んでから、クルスさんの術と同じように包み込むようにして消した。
観客の方々には見えないだろうが、魔術を発動している人と魔眼が
使える人にはわかるだろう。
マルシアルさんがため息をついてから、言葉を発した。
「我が使うは夜の闇、今ここに魔導師の試し、達成したり。」
「アルベルティーナ・ギラルディーニ、闇の試し、達成したり。」
にこにこと握手を求めるように手を出されたので手を差し出す。
精神年齢30代後半だから、やさしそうなお兄さんと握手は少し照れる。
そうしたら、差し出した右手をぐいっとマルシアルさんのほうに引き寄せられた。
ええぇ、何ですか??
混乱していると私の耳元でマルシアルさんが小声でささやいた。
「君、一体何なんだい? まあ、何でもいいけど。気に入ったよ。」
「は、?」
ちゅ
……………………
▲%*@◎◆$!!!????
こい、っつ、頬にキスしやがった!!
今の私の外見で気に入ったとすれば、ロリコンか、ロリコンなのか!??(性格が変わってる)
顔が真っ赤になったのがわかる。恥ずかしい。
マルシアル(敬語なし。もういい。)は手を掴んだまま、にやにや(にこにこ、じゃなくて
にやにや、が正しい)と私を見ている。
むかついたので手を振り払うと、マルシアルがさっき使ったような闇の手で
会場の出入り口まで放り投げておいた。
真っ赤になった顔を戻そうと違うことをぐるぐると考えていると別の人が会場に入ってきた。
キャラメル色の髪に深緋色の目、あ、これが「燃えるような赤」の色なのかな?
確かに葡萄色よりもずっと赤い色だなぁ、と思ってじっとみる。
なんていうか……堅い? さっきへらへらしていたマルシアルがいたからかも
しれないけど、すっごく真面目そうな人だ。
真面目そうに見える人のタイプは
・根っからの真面目な、勉強熱心な人
・お堅い融通の利かない斜め45度くらいにずれちゃってる人
のどちらか、ということが多いと私は思う。
「バルドメロ・インフォンティーノ、一級魔術師の炎の使い手。お相手願おう。」
おおっと、そうでした、魔導師の試しでした。
「どうぞ。」
バルドメロさんは一息ついてから低い声で詠唱を始めた。
「<熱く滾りし焔、我が元に集いて炎塊となれ!>」
聞いたことがない、読んだこともない詠唱だな……オリジナルですかね?
私が苦手な火に限ってオリジナルで上級魔術ですか!?
「<華炎>!!」
普通に防いだら負け、ですよね……おばあさまに呪われたくないです!!(汗)
とりあえず右手で炎の壁、みたいなものを構築して<華炎>を防ぐ。
その間に魔眼で術式の読み込みをする。
……きれいな形の構築式ですね……真面目そうな人タイプの前者ですね。
今のままでは私が押し負けますから、申し訳ないですけど真似させてもらいます。
右手で防いだまま左手で魔眼でみた構築式を宙に描く。
「<華炎>」
短詠唱で右手で発動していた魔術と入れ替わりにバルドメロさんの術にぶつける。
バルドメロさんは一瞬驚いた顔をしたけれど、その後、だんだんとこめる魔力を多くしてきた。
……ちょっと油断してました。バルドメロさんの火は予想以上、ですね。
私が対抗して私の炎に魔力をこめると多分相殺してしまうだろう。
「相殺=負け」だから、私がやることは、1つ。
バルドメロさんの炎、に魔力をこめた。
どおんっ
爆風とともに土が舞い上がる。収まった先に残っている炎は、私の、炎。
「我が統べるは暖かき焔、ここに魔導師の試し、達成せり。」
「アルベルティーナ・ギラルディーニ、火の試し、達成したり。」
ふう。これで半分、ですか。
まだまだ修行不足ですね……。苦手な属性でも押し負けそうになるとは。
おばあさまに呪われてしまう。……え? 祖母は死人だからそんなことはないんじゃないか?
死人だからこそ、「呪い」、できそうなんですよ、おばあさまには。
バルドメロさんの術、参考になりました。
バルドメロさんにペこっというかんじで頭を下げ、会場の出入り口へと足を向ける。
この後ってどうすればいいのでしょう?
皇帝陛下に会えるのはすべての属性が終わってから、でしょうか??
……今でももしかしたら観客席にいらっしゃるのかもしれないけど、
正直観客席をきょろきょろと見回すのは恥ずかしい。
マルシアルのせいで。そう、マルシアルの。
クルスさんにこの後どうすればいいか聞けばいいかな。
そんなことを悶々と考えていたら肩を掴まれた。
……誰でしょう?
「さっきの、術、何をやったのか教えていただきたい。」
「へ?」
そうですよね、会場にいたのは普通に考えてバルドメロさんですよね。
さっきの術って……あぁ。<華炎>のことですか。
「すみませんでした、オリジナルの術なのに、真似しちゃって……。」
「いや、そんなことはどうでも、いや、どうでもよくはないんだが、それより!!」
? 術を真似したことではないのですか。
じゃあ、……術を消しちゃったことですかね??
「術を消したことについては、魔力をこめただけなんですけど……。」
「魔力をこめた? それは、私の術のほうに、ということですか??」
「はい。」
「人の術に? ……魔力移動の理論、……いや、構築式……」
答えたら、バルドメロさんがぶつぶつと悩みだしてしまった。
ちなみにバルドメロさんはひげを生やしたダンディーなおじさま、という感じだ。
そんな人がぶつぶつといっているのは、正直ちょっと変ですね。
いや、悩むのはいいのですが。手を離していただけないでしょうか。
私がそう考えているのが通じたのか、肩から手を離してもらえた。
けれど、今度は腕を掴まれた。
「確認したいことが多すぎる! 研究室に一緒に来ていただけないか!??」
「え、や「ありがとう! さあ、いこう!!」……」
OK、してないつもりなんですが。
今のでわかりました。根っからの真面目さんは確認したいことがあるとわが道を行く、と。
助けを求めてクルスさんのほうに目を向けたら目があった。
「バルドメロ、4時間したらティーアの迎えに行くからの。」
「わかった。4時間だな。……足りないかもしれない、急ごう。」
……助けてくれるんじゃないんですね。
恨みがこもった目でクルスさんを見たらウインクされた。
一級魔術師って、クルスさんしかり、バルドメロさんしかり、
そしておばあさましかり。まともな人はいないのでしょうか?
馬鹿と天才は紙一重、ってかんじのものがあるのでしょうか??
そのまま、バルドメロさんの研究室に連行されていくことになったのでした……。
戦いの描写、てできません。
そして自分でつけたキャラの名前を覚えていることができない・・・!!
何回も「バルドメロ」が「バルメドロ」になりました・・・。
5話は午後にUPしようと思います。
見ていただけるとうれしいです。