*3 試し(1)
魔導師の試し? ……というかその前に、魔導師って?
導くもの (Uma pessoa para conduzir *3)
「すみません、魔導師って何ですか?」
「……フレドリカは、何も説明していなかったのか?」
「? 何について、ですか?」
クルスさんは手紙に書いてあったことを簡単に説明してくれる。
私が全属性使いであること。
帝国で現在確認されているのは3属性使いまでで過去に4属性使いが
2人いただけだそうだ。
魔力がフレドリカ(祖母のことですね)よりかなり多くあること。
一級魔術師より多い、となるとかなりのものであるらしい。
子供ながらに魔眼が使え、その他魔装具の類を作れること。
魔眼は魔力がかなり必要で、その調節が難しいらしい。
……おばあちゃんが普通に使ってたから気がつかなかった。
魔装具を作れればそれだけでかなり儲けることが可能なものらしい。
以上のことから私には魔導師の才能があるから魔導師の試しを
受けるように手配させてくれ、ということらしい。
そして、魔導師とは。
一、全属性使いである。
一、一級魔術師の各属性でもっとも優れている人に勝ったものである。
一、帝国の王の認証により、魔導師と名乗ることが可能である。
この3つを満たす人が魔術師のトップ、魔導師と名乗るのだそうです。
魔導師の試しはその人が上に書いてある中の2つ目の条件を
満たしているかを見るもの、とも解釈していいようだ。
…………全属性使い、いなかったのですか。
おばあちゃん、それくらい教えておいてくれても……。
試し、落ちたら駄目かな。そう思った瞬間に悪寒が走った。
……おばあさまに呪われる気がする。
…………真面目にやろう。
クルスさんに説明してもらってから、城のある場所についた。
魔眼について手紙に書いてあったなら使ってもいいですよね。
訓練所……よりも試合会場(というべきか? 観客席があるし。)みたいなところで、
「視る」と、周りに防御結界が張ってあった。
……魔術の影響を受けないためだろうか?
「クルス様、今日いらっしゃるのはバルドメロ様だけです。」
「そうか、じゃあ今日は水と火、それと闇、かの。アルベルティーナ。」
「はい、何でしょう? 祖母にはティーナと呼ばれておりましたので、
ティーナでかまいません。」
「そうか、それでの、ティーナ。」
クルスさんいわく、魔導師の試しでは、各属性の魔法をぶつけあうそうだ。
火なら火を、水なら水を、という形らしい。
「それで今城にいる一級魔術師はわしとバルドメロだけでの、
わしは水使い、バルドメロは火使いだからそれでやるとして……今一級魔術師には
闇使いがいないんじゃ。」
「それでは、闇、の相手とは?」
「帝国一の闇使いは今黒騎士の長であるからの。そのものにやってもらおうと思う。」
「はい、わかりました。」
つまり今日は前半戦、てことですか。
水、は治療もしていたから結構得意なほうに入る。
闇はあたしの目の色に入っていることもあって得意だ。
……問題は火、か。うまくいくといいのだけれど。
しばらく「視て」いたら(城は魔法にあふれていて、こんなに魔法が多いところは
私は初めてなのだ。「視」飽きない。)観客席に人が集まりだした。
…………もしかして。
「クルスさん、これって公開試験、みたいなものですか?」
「まあ、そんなものかの。なにしろ、魔導師の試しが行われるのは初めて。
魔術師にとっては絶好の勉強の場じゃ。皇帝陛下も見学されるそうだからの。」
「こうてい、へいか?」
「『一、帝国の王の認証により、魔導師と名乗ることが可能である。』だからの。
全属性の試しを見られるはずじゃ。」
うわぁぁぁぁぁ!! 恥ずかしい! 公開試験というよりは公開処刑じゃあないか!?
目立ちたくないのにーー!! 地味に生きたいのにーーー!!!
……そこでふと気づいた。魔導師は毎日公開処刑てことになるじゃないか。
人生あきらめが肝心、てことですか。
「皇帝陛下が到着なされました。」
「む、じゃあはじめるかの、ティーナ、会場の真ん中へ。」
「はい。」
会場に入っていくと今までざわざわと話し声がしていたのが一気になくなった。
皇帝陛下、見てみたかったけど、どっちにしろ認証される時に見ることができるだろう。
視線を感じる。……嫌だなぁ。
真ん中まで行ったらクルスさんと向きあう。
「いいかの?」
「いつでも。」
緊張はしているけど魔法ができない、なんてことはない。
……正直修行を始めたころのおばあさまの怖さに怯えていたときのほうが
ずっとやばかった。
「我はクルス・ベナーリオ。水を統べ、扱うものなり。
<水よ、我が元に聖なる力の源となりて具現せよ!>」
おお、上級魔術。おばあちゃんによくやられたやつの詠唱だ。
クルスさんが唱え終わってこちらに力を向ける。
おっと。
詠唱、したほうがいいのだろうか? まあいいか。
私は左手をクルスさんのほうに向け、頭の中で構築式を描いた。
―――――どんっ
クルスさんの丸い形をした水塊に私は盾のような形の水をぶつける。
私とクルスさんとの間で水がせめぎあう。
なかなかの威力だ。……けど、クルスさんの魔術はおばあちゃんの魔術に及ばない。
10歳のとき、私は水の魔術全般でおばあちゃんに勝るようになった。
もちろん、14になった今でも。
クルスさんが更に魔力をこめてきているのが魔眼でわかる。
……水の魔術で消せば、いいですよね?
「<水よ>」
短詠唱によってクルスさんが詠唱したものよりもう一段階上の魔術を発動する。
クルスさんの術を包み込むようにして、消えた。
魔力の量、ちゃんと調整できてよかった。
クルスさんが驚いた顔をして固まっている。
え? 今のじゃ駄目でしたか? 私が内心戸惑っているとクルスさんがはっとして言葉を発した。
「我が統べるは癒しの水、今ここに魔導師の試し、達成したり。」
……決まり文句、みたいなものかな?
「名を、名乗るのじゃ。」
さっきの文章につながる感じで?
「アルベルティーナ・ギラルディーニ、ここで水の試し、達成したり。」
……恥ずかしい。
こんなかんじでいいですか? という風にクルスさんを見るとクルスさんが頷いてくれた。
クルスさんが会場を出ていくのと同時に黒騎士の人が入ってくる。
この人が黒騎士の長の人か……。
年齢は20代だろうか? 藤鼠色の髪、紫黒色の目。
顔の印象はやさしいお兄さん、ってかんじだ。
……そういえば、この世界の人は美形しかいないのだろうか?
それとも転生前の価値観(美形観?)とちがうのか?
「我はマルシアル・ロジオン。帝国一の闇の使い手。……よろしいですか?」
「はい。」
さっきのクルスさんとの試しを見ていたのか、すぐに詠唱を始める。
……ちなみに「闇」というとおり、夜のほうが威力が増すのだけれど。
「<大いなる闇、影より来たりてここに具現せよ>」
さて、どんな魔術で、対抗するのがいいですかね??
今日はたくさん書けたので3話もUPします。