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導くもの  作者: アカリ
祝福の光と
22/23

*18 準備


 こんにちは、一級魔術師マーゴ・デ・プリメーラやってます、アルベルティーナ・ギラルディーニです。今日のお城は普段よりもにぎやかです。


 「ぼーっとしている暇、ないだろ!」

 「……あ、いつかの黒騎士(ブラックナイト)さん……。」

 「おーい! こっちの火の輪(ブラウド・アナリオ)、ずっと火が灯っているようにするには

  何すればいいんだよ!? 火傷防止は!」

 「ここ、壁が崩れてるわよ! 誰か治せる人は!?」

 「そんなことより、これ、上手くいかないんだけど……どうすればいいの?」

 「ほら、出番じゃないか!」


 ………………。




 導くもの (Uma pessoa para conduzir *18)




 「これ、できないのか!? 一級魔術師マーゴ・デ・プリメーラ呼んで来い!」

 「屋根の飾り不均等だと思いますよ。誰か直して来てください。」


 今は祝福祭が始まるにあたってお城の準備中です。祝福祭は帝国で一番大きいお祭りだから準備も大変……とある騎士(ナイト)の人が言っていました。

 私は祝福祭が行われるにあたって城の防御魔法を違うものにかけなおせと言われたので防御魔法を変え、氷の彫像を作ったので祝福祭中溶けないようにしてくれとお願いされたので維持の魔法をかけ、空を飛ぶ光の玉みたいなものを製作して空に浮かせ、……初めはお願いします、とかすみません、とか皆さん一言ずつ言ってくれてたんですけど、時間が経つにつれ戦争状態に……。


 「ティーナ! 父上からの仕事だ行くぞ!」

 「ええっ、殿下、嬢ちゃん連れて行かないでくださいよ~。まだここの直しが……」

 「そこなら他の魔術師(マーゴ)に頼めばいいじゃないか!

  それよりも殿下見てくださいよ、これの使い方について説明を……」

 「姉さまとの一緒に居られる機会なのに!」

 「……お前ら、父上って皇帝陛下だってことわかってるのか?」

 「「「…………あ。」」」

 

 殿下が私を引っ張っていくときに抗議の声が上がったが、殿下の言葉でみんな自分の作業に戻る。殿下はため息をついていた。


 「全く……ティーナ、モテモテだな。」

 「は、はは……。」


 なんていうか、もう苦笑しか出ません。あっちに引っ張られ、こっちに押され、でしたから。


 「やってもらうのはお前がやる魔導師の試し(マイブル・プルーバ)と5、6日目に行われる

  武道大会の会場作りだ。ディーリもそこの係だからがんばれ。」

 「ディーリ?」

 「あ、会ったことないよな。

  一級魔術師マーゴ・デ・プリメーラの土魔術使い、ディーデリヒ・フロベールのこと。」

 「ディーデリヒ・フロベールさんですか。」


 これで一級魔術師マーゴ・デ・プリメーラ4人目ですね。


 城の隣に作りかけのコロシアムの中に入る。

 まっさらな土地のところに積みかけの四角のブロック、木材という状態にしか見えない木の棒が何本も置いてある。


 これは「作りかけ」ではない。これは「作りかけ」の前段階……むしろ「作り始め」とでも表現した方がいいんじゃないでしょうか……。


 「殿下……これは作りかけと言うのでしょうか?」

 「俺もどんな状態なのか聞いてなかったからな。

  この会場だけの話じゃないが……この様子だとかなり間に合ってないな、準備。」


 殿下を軽く睨んだが殿下は会場の様子を見ているので私の視線に気づいていない。



 「ディーリ!」


 殿下が呼ぶとそれまで何か地面に書いていた人が振り向いた。

 こっちをじっと見てきた彼は殿下と同じくらいの年齢だろう。黒いマント、つまり一級魔術師マーゴ・デ・プリメーラ

 なんかあの人、見覚えあるんですよねー……薄茶色の髪の毛、桑茶くわちゃ色の眼。どこかで会った気が……あ。


 私が思い出したのとほぼ同時に彼も何か思い出したような様子で口を開く。


 「あ、アンタ“山賊狩り”じゃん。魔術師(マーゴ)だったの?」

 「? “山賊狩り”? ティーナと既に知り合いなのか?」

 「バルタザール様。ふーん、アンタ、ティーナっていうの?」

 「本名はアルベルティーナ・ギラルディーニです……。」

 「さっきの“山賊狩り”ってのは?」

 「ああそれは「忘れてください!」…」

 「え、気になるじゃ「いいですから! 気にしないでください!」……」


 黙秘です、も・く・ひ!

 2人がこっちを見ているが、その話はしたくない、してほしくない!

 この姿(・・・)では会ってないんだけどな、彼には。

 「アレ」を見られたんだった、そうだ、あの時の……魔術師(マーゴ)だったのか……そうだよね、魔術師(マーゴ)じゃないとあの場面には来ないですよね……。殿下には何も報告していない、というか報告しなくていいようにするためにああやってあの件を片付けたのに……!

 私が冷や汗だらだらながらも「やめてください」オーラが伝わったのかその話を諦めた殿下が彼を紹介してくれた。


 「こいつ、さっき言ったやつな。ディーデリヒ・フロベール。通称ディーリ。」

 「バルタザール様しかディーリとは呼ばないですよ。」

 「そうなのか? ティーナ、こいつと2人で会場作り。」

 「「 え? 」」


 ディーデリヒさんと私の肩にぽんと手を置いて言った。「2人?」もっと居ないんですか?


 「この様子から見てわかると思うんだが、かなり準備が大変だろ。

  ティーナ、お前がさっきまで居たところも見たとおり、時間が足りていない。

  父上、こういう状態なの知ってたんだろうな……。普通の魔術師(マーゴ)じゃ荷が重い。

  騎士(ナイト)をこっちに送っても解決できる次元じゃあない。

  むしろ、騎士(ナイト)が居ても邪魔なだけ。」

 「……つまり、こいつと僕なら一級魔術師マーゴ・デ・プリメーラの中でも実力は上の方、

  僕は置いておくにしても、魔導師候補(ティーナ)サマは魔力は底なしって噂だから

  一日中働いても支障はなし。死ぬ気で完成させろ、てことですか?」

 「え、まさか……」

 「そういうこと。俺は城のほうに戻らないといけないから。がんばって完成させろよ?」


 そういって殿下は「作りはじめ」の会場から出て行った。

 殿下の最後の言葉に「俺には無理だから、お前らだったらできるだろ!」という副音声が聞こえた、気が……する。


 「「……………。」」


 ディーデリヒさんと私、しばしの無言。

 Q 祝福祭は何日後でしょう?

 A 3日後。

   1日目は精霊の踊りから始まるとされていて、精霊の踊りはパレードのように帝都を

   踊ってまわる。中でも――…じゃない、そんなことを考えている時間は、ない!


 ディーデリヒさんはため息をついてから詠唱を始めた。


 「<我が意志 形となりてここに具現せん>」


 ぼこぼことディーデリヒさんの前の土が動き出す。


 「<出でよ 我がしもべたりしもの 土偶(クライ・フィゴーラ)>」


 そこに作られたのは1m弱くらいの土偶(クライ・フィゴーラ)

 ぼこぼこと5体できあがった。

 これ、作るのはそれなりに練習すればできるんですけど、動かすのに自分の魔力をエネルギーとしなきゃいけないから魔力が多い人じゃないと使えないんですよね。


 「……僕とキミの二人でいいって陛下が思われた理由はこっちにあると思うけどね。」

 「私も作った方がいいですか?」

 「いや、多くても邪魔。時間ないからさっさとやろ。」

 「はい。」



 それから働きに働きましたよ……! ま、魔術師(マーゴ)って、きつい役目なんですね……。毎年こんなにやってるなんて……尊敬します。ぽろっとそんなことをもらしたら、ディーデリヒさんから返事が返ってきた。


 「いや、今年は特別でしょ。」

 「え?」

 「“山賊狩り”(アンタ)魔導師の試し(マイブル・プルーバ)

  それに併せて色々企画してるからこんなに人手不足なかんじになってんの。

  ……まあ、だけどまだアンタが底なしの魔力で助かったよ。」


 この人(ディーデリヒ)、途中から「疲れたからさ。」とか言いながら私の魔力で土偶(クライ・フィゴーラ)を動かしていたんです。それによって私の疲労はさらにたまりましたよ……。


 「そうですか……、! “山賊狩り”って呼ぶのやめてくださいよ!」

 「さっきの様子だとバルタザール様に報告してないんでしょ。」

 「そうなんですけど、それとこれとはまた別のお話でして!

  こんな小さい娘に“山賊狩り”とかいう恐ろしい名前で呼ばないでくださいよ。」

 「小さい娘、ねえ。まあ、僕よりは小さいけどさ。

  そんなに呼ばれるのが嫌なら……そうだな、カーシャでいいでしょ。」


 ディーデリヒが「小さい娘」と言ったとき意味ありげなかんじだった。事実ですよ、精神年齢はもっと上ですけど。老けて見えます?


 「カーシャ?」

 「うん、狩る者(ラ・カーシャ)からもじって。」

 「……まんまじゃないですか。」


 狩る者からもじるってそのままですよね?

 私の発言にディーデリヒは眉間に皺をよせた。


 「何? 不満? じゃあ“山賊狩り”のままでもいい?」

 「カーシャでお願いします。」


 “山賊狩り”よりはましですけどね、そうですけどね! その2つしか選択肢がないようなので即答。カーシャであきらめます。  


 「僕、次は城の方の作業あるから。バルタザール様に報告よろしく。」

 「私がですか?」

 「直属の部下なんでしょ?」


 (ちょっと休憩してから行こうかな。)

 そう思っていたらディーデリヒが私に声をかけてきた。

 げ、ばれました?


 「わかってると思うけど、魔導師の試し(マイブル・プルーバ)の土担当は僕。

  魔導師の試し(マイブル・プルーバ)って魔導師(マイブル)候補がその属性の魔法が

  優れていることを証明できればいいんだよね?」

 「そういうことだと思いますが。」

 「じゃ、試したいことあるから当日までにちゃんと魔力回復しといてね。」


 そう言って会場からさっさと出て行ってしまった。


 ……彼方が魔力を使ったんでしょ、おい。ちょっとは労ってくださいよ。

 まあ、我慢だ我慢。私は(肉体的には)若いので回復が早いのが幸いですね。


 [会場作り、終わったってディーデリヒさんから聞いたぞ!

  人手……というより魔術師(マーゴ)が足りてない! こっち来…]


 リアンから遠話が入った。……と思ったら途中でリアンの声ではなく、何かが派手に倒れる音が聞こえる。


 「リアン? 大丈夫?」

 [大丈夫、では、ない……かも…]

 「今行くから!」


 リアンの声からして大丈夫そうではなかった。

 私がいたときと大して変わってない状態? つまり戦争状態?

 殿下に報告に行く前にこっちを見てからにしよう。


 クルスさん、これ忙しいっていう言葉一言じゃ表せないレベルじゃないですか?

 私は慌ててリアンのもとに転移した。



登場人物が多くて覚えにくいですよね……すみません……(汗)

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