*2 城
「クルス・ベナーリオ様への面会、か?」
「はい。……通していただけますか?」
導くもの (Uma pessoa para conduzir *2)
「すまないが、すぐに通すことはできない。誰かからの紹介による面会か?」
「はい。フレドリカ・ファルコーネの書状によるものです。」
「フレドリカ・ファルコーネ、だな? 確認をとろう。しばらく待っていてくれ。」
2人いた門番さんの一人が城の中に入っていった。
さすがにすぐに「はい、どうぞー。」にはならないか。そしたらいろいろ危険だもんな。
……祖母の名前を出してみたが祖母はクルス・ベナーリオさんと知り合いなのだろうか?
よし、待っている間に「魔術師」について聞いておくことにしますか。
門番さんA(城のなかに入っていった人がBです。勝手に決めました。)によりますと、
帝国、というかこの世界全体ですかね、では「魔法使い」の国家資格があって、
その実力や使える属性によって3段階に分けるそうだ。
偉い順から「一級魔術師」「二級魔術師」「三級魔術師」。
それに加えて治療に特化した「治癒術師」だそうで。
剣を使える、とかまあ魔法に+αできるような才能がある人は「騎士」になる人が多いそうだ。
騎士団は魔法が使えなくても入れるみたいだが。
騎士団には「白騎士」と「黒騎士」の二つの部隊があるそうで、
火・風・光のどれか、(またはすべて)を使える人は白騎士に、
水・土・闇を使える人は黒騎士になるらしい。
ちなみに門番さんAは白い団服を着ていたから白騎士、Bさんは黒騎士だそうだ。
そういう風に二つの部隊があると対立する可能性が高いので、したっぱのうちから少しでも
友好関係を、ということで門番は各部隊から一人ずつでペアを組むそうだ。
騎士団について更に詳しい説明を人名を交えてAさんがしてくれていたが、
私が騎士団に入る、ということは(武器は祖母への対抗手段として一通り使えるようにはしたが)
まずないと思うので適当にあいずちをうちつつ城を「視る」。
ここで魔法スキルの発動である。
『魔眼』―― 簡単にいうと自分の目に魔力をこめて周りを見、
魔法陣や、どのような魔法が使われているのか、
対人、魔物だとその人の使える属性がわかる目のことだ。
私が得意としているのが闇なこともあり、通常状態でも見えているのだが
詳しく「視る」ためには魔眼をするのが一番いい。
城の防御魔法か……結構きれいな網目だなぁ……光? かな。
これで防いでいるのは何だろうか? 攻撃魔法?
Aさんに騎士団の説明をうけつつ(流しつつ)、城の防御魔法について考えをめぐらせていると
Bさんが白マントを着た人を連れて帰ってきた。
「確認がとれた。こちらの方についていってくれ。」
「ありがとうございます。」
おばあちゃんはクルス・ベナーリオさんとちゃんと知り合いだったのか……よかった。
Bさんにお礼を言って白マントの人と向き合う。
「行きましょうか。」
「はい。」
城の中でさすがにフードは失礼だろう、と思いフードを外すと3人(白マント+門番2人)が
少し驚いていた。
「……珍しいですかね?やっぱり。」
この髪と眼。
「……魔術師だろうとは思っていたが……風か? それとも闇、か?」
……? どちらが得意、という意味だろうか?
「どちらとも同じくらいに術は使えますが……」
「! 2属性、か。一級魔術師への面会希望者なだけあるな……。」
Bさんが何か考えだしてしまった。2属性使いも珍しいのか……何人くらいいるのだろう?
まあ、ともかく。
「すみません、クルス・ベナーリオさんへの面会を……」
「、ああ、そうでしたね。」
白マントの人について城の中を歩く。同じような白マントの人がいるなぁ……。
下のほうに入っている線の色が一人ひとり違う。
「視る」とその糸にその人の魔力がこもっているみたいだ。
……見られている気がする。やっぱり珍しいのか。
気にしていてはきりがないので黙って白マントの人についていく。
「ここです。」
ある部屋の前で止まるとドアをあけてくれる。先にどうぞ、ということらしい。紳士だなぁ。
中に入ると黒いマントの人が真ん中で、その両隣に白マントの人が2人つくかたちになった。
「君がフレドリカ・ファルコーネの書状を持ってきた子かい?」
「はい。フレドリカ・ファルコーネの孫、アルベルティーナ・ギラルディーニです。」
そう名乗るとその部屋にいた3人の人に驚かれる。
「そうか、あの、『魔女』が……孫がいたのか。私はクルス・ベナーリオ。
一級魔術師だよ。」
黒マントさんがクルスさん、ですね。
ん? 『魔女』? 今の流れからすると……確実に……おばあちゃんが?
「……祖母は『魔女』と呼ばれる人だったのですか?」
「うむ。あいつの性格からすると、話してなさそうだの。」
うわー……やっぱり人じゃなかったのか。よかったよかった。
話を聞くと、フレドリカ・ファルコーネは一級魔術師であり、一級魔術師の中でも
薬の調合や毒物の解毒などに特化していて、冷静沈着、自分の興味の持った分野にしか
動かない、という性格から『魔女』と呼ばれていたらしい。
クルス・ベナーリオさんとは30年間魔術師として働いていたときの同期だそうだ。
祖母は20年前、一級魔術師をやめてからはまったくどこにいるか
わからない存在だったらしい。
……なんだかすごく祖母らしい。けど人だったのか。
ちなみに魔女と呼ばれるくらいだから名前も有名じゃないか、と聞いたら
名前を名乗らず、魔女、とそのまま名乗ることが多かったらしいので名前は有名じゃないらしい。
そうだよね、名前が有名だったらこの10年ちょっと、もっと大変でしたよね。
「祖母から、クルスさんに渡すように、ということで……。」
これです。と手紙を差し出す。
「ん? この手紙か。読むからしばらく待っていてくれ。」
手紙を読んでいる間にクルスさんたちを観察してみる。
クルスさんは50……60歳? くらいだろうか? 祖母と同じで年齢不詳な感じがある。
白髪と銀髪が混じった(まあそんな感じの色の)髪の毛、天色の目。
一級魔術師でこの目の色ってことは光と、水? 2属性使いだろうか?
それとももっと使えるのか? 治癒術師でもあるのかな?
白マントの二人は一般的な焦茶色の髪に案内してくれた人のほうは浅緑色の目、
もう一人は青色の目だ。
風属性に、水属性?? 村では魔法使いは滅多にいなかったので
一日でこんなに会えるとうれしい。
一級魔術師についている人、てことかな? 二級魔術師か三級魔術師の可能性が高いだろう。
魔眼を使って何か言われると面倒くさいので普通に観察する。
祖母が一級魔術師さんへのお手紙をわたした、てことは私は魔術師になるのだろうか?
一級、二級、三級の違いは何で決めているのだろうか?
……時間があればもうちょっとAさんに聞いていたんだけどな。
……ん? なんかクルスさん驚いた顔してる? 微妙に青ざめてません?
白マントの2人に何か話すと青色の人は驚いた顔をして部屋を出て行った。
一体おばあちゃんの手紙には何が書いてあったんだ?
「場所を、変更するかの」
「へ?」
場所を変更して、何やるんだ?
頭の上に「?」をたくさん飛ばしているだろう私にクルスさんが言葉を続ける。
「魔導師の試し、か。……これは歴史上、初めてだの。」
魔導師の試し? 何、それ??
今の流れからすると、……私が何かしないといけないものですか?
…………何か、面倒くさいことになってきたなぁ…………。
はじめのうちは一日2話投稿できたら、と思います。
色についてはまたどこかに出したいな、と思ってます。