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導くもの  作者: アカリ
始まりはお城から
19/23

*15 パーティー(1)

 今日の分の仕事が終わり、執務室を出るとリアンに声をかけられた。




 導くもの (Uma pessoa para conduzir *15)




 「ティーナ、親父が呼んでるから一緒に来てくれないか?」

 「バルドさんが?……術関係?」


 そうすると確実に帰るのが遅くなるんだけど。


 「いや、術関係じゃない。」

 「それ以外で?……何の用事だろう。」



 疑問に思いながらもバルドさんの研究室(城に来た初日から始まり、しょっちゅう呼ばれている。)に入ると、バルドさんが迎えてくれた。


 「ティーナにお願いがあってな。」

 「術のことじゃないんですよね? 何のことです?」

 「ああ。今日は術のことじゃない。……そういえばこの前やった術がな、」

 「父さん。」

 「おっと、そうだ、術のことじゃなくて。俺の伯父主催のパーティーのことだ。

  ティーナに是非とも来てもらいたいのだが。」 

 「バルドさんの、伯父? 何で私?」

 「前当主が親父に勝った魔術師(マーゴ)……しかも魔導師(マイブル)候補だってことを

  知ったら会いたいとうるさいらしい。」

 

 前当主=バルドさんの伯父ですか。そんなすごい人の誕生日会ということは……


 「大きな規模のものですか?」

 「そうだな。インフォンティーノ全体が来るわけだから。……どれくらいだ?」

 「大体100人くらいの規模だと思う。」


 かなりのものじゃないですか! しかもそのパーティーのメインの人に呼ばれているということは行くのは強制じゃないですか?

 

 「ちょっと待ってください。」 

 「? ああ。」


 バルドさんに聞こえないようにリアンを部屋の隅のほうに引っ張っていく。


 「術関係じゃないって言ってたけど、私が誘われてること知ってたよね?」

 

 リアンが頷く。


 「私がそういうところ好きじゃないってこと知ってるよね?」


 リアンがこれにも頷く。


 「パーティーの衣装って魔術師(マーゴ)のマントが正式の衣装?」

 「いや、インフォンティーノの半分が魔術師(マーゴ)、そのほかも魔法関係の仕事が多いから

  似たような格好が多くならないようにマントは駄目だ。」

 「……一応、聞きたいんだけど断っていい?」

 「駄目。というか無理。親父がうるさいぞ。」

 「…………あきらめないといけません?」

 「そうだな。断ることをあきらめたほうがいい。」


 2つの質問には即答された。

 ドレス、着たこともないけど着ると考えるだけで嫌になる。似合わないし、動きにくいし!

 はぁ。

 バルドさんの前のソファにまた座りなおす。


 「パーティー、行きます。いつですか?」

 「ありがとな! じゃあリアン、お前がエスコートしろよ?

  パーティーは5日後の夜だ。」


 バルドさんの言葉にリアンが頷く。

 私はそういったところに行ったことがないので、恥ずかしいけれど当日はリアン任せになるかもしれない。


 あ、重要なことが!


 「バルドさん、私ドレス持ってないんですけど……」

 「あ、そうか。ティーナはそういうところに行ったことないのか。

  じゃあジスレーヌのを貸そう。当日の昼、ここに来てくれ。

  ティーナに似合うの探しておくから。」

 「すみません。」


 ジスレーヌさんって誰でしょう? バルドさんの奥さん?




          ◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 「……これ、私が着るんですか?」

 「はい。当主様から仰せつかっております。」


 パーティー当日。バルドさんに言われていた通りに部屋に行くと侍女さんとドレスが5つ。


 「すべて試着していただいて、気に入ったのにを着ていただければと当主様から。」

 「……全て、ですか。」


 ドレスはそれぞれ黒(私の髪の色に合わせたのだろうか)のAラインドレス、深緑(これは目の色だ)のAラインドレス、緋色(これはインフォンティーノの色ですかね)のショートラインドレス。緋色のドレスがショートラインなのはやっぱり年齢を考慮しているかんじですかね?

 うーん。……とりあえず着てみないとわかんないですかね。



 「よくお似合いですよ。」

 「あ、ありがとうございます。」


 準備してもらったお礼を言って部屋を出る。

 私が選んだのは深緑色のドレス。ショートラインドレスは足を出したくなかったので却下。黒色のドレスはなんというか……パーティーぽくなかったのでやめた。

 ドレスを決めたら髪の毛とかネックレスを準備してくれた。

 ちょっと着せ替え人形っぽくなったのは気のせいだと思いたい。


 うー……ヒールがあるのは慣れてない。前の世界以来だ。

 ドレスを踏まないように、足を気にしながら下を向いて歩く。


 「……ティーナ?」 

 「あ、リアン。ごめんね、前向いてなかった。」


 足元に集中してリアンが前に立ってたのも気づかなかった。危なかったです。

 リアンはカーキ色の軍服みたいな服を着ている。

 いやー、美形は何着てても似合ってていいですよね。目の保養です、今回のパーティーは。


 「似合ってるじゃないか。」

 「ありがとうございま、……殿下?」


 リアンだけかと思っていたら後ろからザール殿下も現れた。

 ザール殿下は学ランみたいな服の白と青バージョン、というか……軍服、というか……いや、語彙が少なくてごめんなさい。皇子様っぽい衣装をイメージしていただければ……。


 あれ? どうして殿下がここに? ……てそりゃあパーティーに参加するんですよね。


 「そうやってると16くらいに見えるんじゃないか?」

 「そうですか?……じゃなくて。今日のパーティーってインフォンティーノの家の

  人たちだけじゃないんですか?」

 「違うぞ? 他にも魔術師(マーゴ)の上の人だとか、皇帝家は、……まあ俺だけだけどな。」


 父上の名代だ。

 そういって殿下は不満そうな顔をする。


 「別に来たくなかったわけじゃあないんだが……前当主、ていうと、な?」

 「……すみません、殿下。」


 リアンが申し訳なさそうにしてる。前当主がどうかしたの?


 「いや、リアンが謝ることじゃあないぞ?」

 「しかし、」

 「まあいい。行くか。」



 「本日はインフォンティーノ前当主、エルモ・インフォンティーノ主催のパーティーに

  おこしいただきありがとうございます。ごゆっくりお楽しみください。」


 バルドさんが壇上で挨拶する。


 「俺は前当主に会ってくる。父上の名代だからさ。」

 「……気をつけてくださいね。」

 「ああ。わかってる。」


 リアンが殿下に小声でそういったけど、……ほんとに前当主がどうかしたのだろうか?

 殿下が会場であるホールから出ていった。



 「私はいつ会いに行くことになるかわかる?」 

 「親父がティーナを連れて行くことになるから、それまで待っててくれ。」

 「うん。」


 じゃあ殿下が戻ってきた後に行くことになるかな?

 バルドさんのほうを見たら随分と人に囲まれていた。

 バルドさん、インフォンティーノの当主ですもんね。挨拶に時間がかかりそうだ。


 そういえば、とリアンが私に取ってきた飲み物を渡して口を開く。


 「俺の兄と姉。会ったことないよな? 紹介しとくよ。」

 「今日来てるの?」

 「前当主のパーティーだから……来てないと困るんだけど、来てるかな……」


 え、来ないようなタイプの人なんですか?


 リアンは会場の中を見回して誰かを探して、私を引っ張っていく。

 リアンが引っ張っていった先に居たのは、地味(といっても私が選んだドレスと同じくらいの装飾だ。他の人が派手だからそう思える。)な装飾できれいなフランボワーズ色(ピンクと紫の間くらいの色)のドレスを着て、キャラメル色の長い髪をきれいにまとめている美人なお姉さん。目の色は葡萄色(えびいろ)だ。


 「姉さん」

 「、リアン。」


 来ててよかったよ。とリアンが小声で言うのが聞こえた。

 じゃあさっき言ってたのはお姉さんのことなのかな?


 「ジスレーヌ・モニチェリ。俺の姉だ。」

 「初めまして。」  

 「初めまして、アルベルティーナ・ギラルディーニです。」

 「魔導師(マイブル)候補?」

 「はい。今は一級魔術師マーゴ・デ・プリメーラとして仕えています。」

 「そう。」


 ジスレーヌさん、と言うと私が借りたこのドレスはジスレーヌさんの物ですよね。

 ジスレーヌさんにお礼を言った。

 

 「姉さんレオーヌ様と仲がいいのか?」

 「レオーヌ?……ああ、時々図書館で会って話すわね。」

 「専攻が違うんじゃないか?」

 「違うんだけど、彼女は話すのは楽ね。

  他の人と比べると余計に説明しなくていいから。」

 「そっか。ところで兄さんは……」

 「リアン! ジスレーヌ! それと、アルベルティーナちゃんで合ってるかい?」


 2人の会話を聞いていたら、明るい声で声をかけてきた人がいた。

 利休茶色の髪にココア色の目。リアンと同じようなデザインで色違いの服。……ということは。


 「はい。アルベルティーナ・ギラルディーニと申します。ティーナと呼んでください。」

 「やっぱりそっか! 俺、ヴァランタン・モニチェリ。ヴァラン、て呼んでくれ!

  この2人の兄で騎士(ナイト)やってる。ティーナちゃんには会ったことないよな。

  リアンが世話になってるみたいで。」

 「いえ。私こ「噂で聞いたんだけど、槍使えるんだって?」

 「はい。でもそこ「今度時間作って見せてくれないか?」

 「……あの、私ザー……バルタザール殿下の部下とな「じゃあ殿下に頼んでおくな!」

 「……兄さん、もうちょっと音量下げてくれないか?」

 「ヴァランは相変わらずね。」


 あと、ティーナの話を聞いてやってくれ。


 リアンがヴァランさんに突っ込みを入れる。ジスレーヌさんは苦笑している。


 私もそう思います。お願いします。

 バルドさんのあの性格がヴァランさんに引き継がれてる、てかんじがします。下2人には全くしないのになぁ。


 「ヴァルドさんは白騎士(ホワイト・ナイト)なんですか?」

 「そうだ! バルタザール殿下と同じ壮騎士(ニーバル・ナイト)だぞ。

  殿下とは得意分野が違うけどな。殿下は剣、俺は槍。

  殿下も俺も魔法が使えないのは同じだな! 槍、といってもな、」

 「……兄さんの槍についてはまた今度でいいから。」


 リアンがヴァランさんを止める。

 バルドさんと同じようにヴァランさんも語りだしたら止まらない感じに見える。

 止めてくれてありがとうございます。


 そうやって話していたらリアンと同じくらいの年齢のお姉さんが私たちのほうに向かって歩いてきているのが見えた。

 赤毛に茜色の目。

 目の色からしてインフォンティーノの人かな?


 「マクシミリアン!」

 「……ドロテア」

 「お久しぶり、かしら? あなた二級魔術師マーゴ・デ・シグナディオになったのよね。」

 「ああ。」  

 「だからと言ってあなたが私より有利なわけじゃないわ! わかってる?」

 「……別に俺は次期当主について興味ないから。ドロテアがなるのなら、それはそれでいい。」

 「そんなこと言って、本当は違うでしょう? ……まあいいわ。

  次の昇級試験で私も二級魔術師マーゴ・デ・シグナディオになるんだから!

  あなたの優位もそれまでね。」


 そういってお姉さん――――ドロテアさんは去っていった。

 私、ヴァランさん、ジスレーヌさんことは完璧に無視ですね。……私は別にいいんですけど、驚きました。 

 ヴァランさんたち2人には挨拶をしていけばいいと思うんですけど。面識がないのでしょうか?


 「悪いな。あいつ、昔からあんなかんじだから。」

 「いや、別に良いけど……。」


 2人の様子を見ても、さっきと変わらない。ドロテアさんのことは全く気にしてないみたいだ。

 昔からってことはいつもあの態度ですか? バルドさんとかヴァランさんとかのタイプとはまた別で疲れそう……。


 ドロテアさんについてリアンが簡単に説明してくれた。

 

 「あいつはドロテア・インフォンティーノ。俺の従姉妹。

  俺と同期で三級魔術師(テグナキヤ・マーゴ)になった火使いだよ。

  インフォンティーノの次期当主になりたいみたいでさ、今の当主である親父の子供の中で

  俺だけがインフォンティーノの姓だから俺がライバルみたいに思ってるらしい。」

 「ドロテアははっきりと物を言うタイプでな。

  確かに次期当主として候補にあがってるんだけど、どっちかっていうと

  俺はリアンだと思うな! あいつ、自分が選ばれた人間だと思ってるかんじで

  どうかと思うし。な、ジスレーヌ。」

 「そうね。今の最有力候補はリアンだと思うわ。あのインフォンティーノの姓を

  継がなかった私たちをどうでもいいように無視するふざけた態度は駄目よね。

  しかも、ティーナに挨拶なかったわ。ティーナが魔導師(マイブル)候補だってこと

  知らないのかしら? それとも自分よりすごい魔術師(マーゴ)に嫉妬して

  あえての無視なのかしら?」

 

 ドロテアさんの評価はよろしくないみたいですね。

 私は魔術師(マーゴ)の人と同じ食堂でご飯食べたり同じ棟で生活していると思うんですけど……ドロテアさんとは会わないですね。

 

 「まあ、あいつのことはいいだろ。

  兄さん、あの肉好きだろ? とってくれば?

  姉さんはこれ。アルコールに強くないんだからあんま飲むなよ。

  ティーナ、これ食べたことないんじゃないか?」


 はい。これ。


 リアンが私たちに会場にある食べ物を渡してくれた。


 「うん、ありがと。」

 「お、さすがリアン! じゃあ俺、リアンの分も一緒にとってくる。」

 「ありがとう。兄さん、私にも一口。」

 「おう!」

 

 おいしい料理ばっかりですね~。 

 ……リアンが2人と話しているのを聞いて、すこし母親っぽいなと思ったのは秘密です。




リアンとザールの服について語彙がなくてすみません……ご自由に想像してください。


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