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導くもの  作者: アカリ
始まりはお城から
15/23

*12 次兄と……


 帝国2番目の皇子。……どんな人でしょうか?




 導くもの (Uma pessoa para conduzir *12)




 レオーヌ様に会った次の日。

 本当にブノア殿下に呼び出されてしまいました。今日はリアンは仕事をしているので、私とザール殿下の2人でブノア殿下のもとに行くことに。

 ブノア殿下の部屋に入ると、金髪青目の男の人の左隣に……藤鼠(ふじねず)色の髪に、紫黒しこく色の目の男が立っていた。左側のほうをなるべく見ないようにして、ブノア殿下のところに行く。

 

 「へえ、君が魔導師(マイブル)候補の女の子?

  ザールからは聞いてたけど若いね。僕より10こも年下かぁ。

  はじめまして、アルベルティーナ・ギラルディーニちゃん。

  僕はブノア・レク・ロジオン。マルシアルにはもう会ったことあるんだよね?」

 「はい、ブノア殿下。」


 ブノア殿下の目の色は正確に言うとザール殿下の目の色より少し紫に近いような……ウルトラマリン色の目の色。青で魔法使いってことは水使いでしょうか?


 「久しぶり。」

 「オヒサシブリデス。黒騎士団長サマ。」

 

 マルシアルに声をかけられたので(しょうがないので)返事を返しておく。その後ザール殿下に小声で聞いた。


 「今日黒騎士団長サマがいるの知ってたんですか?」

 「いや、次兄と一緒にいるのは知らなかった。」

 「そうですか。」


 じゃあしょうがないですか。と心の中で思っていたら、「あ、だけど次兄はマルシアルと仲がいいってこと話してなかったっけ?」と言われた。……聞いていませんよ。知ってたらなんとかしてマルシアルと会わない方法があったかもしれないのに。

 

 「ザール、いいかい?」

 「あ、すみません兄上。」


 ブノア殿下がにっこりと笑顔でザール殿下に話しかけたけど……なんていうか、普通に笑っているわけではなくて何かあります、ていう顔ですね。なるほど、腹黒い。 


 「今日ティーナちゃんを呼んだのは、ただ魔導師(マイブル)候補が見てみたかった、てわけじゃなくて

  ……まあそれも少しはあるんだけど、君に聞きたいとこがあったんだよ。」

 「何でしょう?」

 「単刀直入に聞くと、君、帝国の人間かい?」

 「……は?」


 私が突然の意味がよく分からない質問に思わずは?と言ってしまったけれど、そのことは予測していたみたいで、ブノア殿下はそのあとに言葉をすらすらとつなげる。


 「アルベルティーナ・ギラルディーニ。14歳。全属性使い(オールユーザー)

  祖母であるフレドリカ・ファルコーネに育てられた。フレドリカ・ファルコーネは

  元この帝国の一級魔術師マーゴ・デ・プリメーラ、通称魔女(ストレーガ)

  祖母の死後、一級魔術師マーゴ・デ・プリメーラのクルス・ベナーリオへの書状を持って

  帝都にあるこの城を訪れる。そこで魔導師(マイブル)の才能があることがわかり、

  魔導師の試し(マイブル・プルーバ)を受けることになる。

  現在、火、水、闇の試しは終了していて、今度の祝福祭で残りの試しを受けることに

  なっている。今は一級魔術師マーゴ・デ・プリメーラの任に就いている。

  ……てことであってるよね?」

 「はい。間違っていないです。」

 「うん。僕も別にこれについて嘘をつく必要性を感じないから、正しいと思ってる。

  だけどね、疑っている人もいるんだよ。」

 「……つまり、私が祖母の孫ではなく祖母の孫であると語ってクルスさんをだまして、

  私は帝国の人間ではなくほかの国から来たスパイみたいなものだと

  考えていらっしゃる方がいて、私が帝国に害をなすと?」

 「そうなんだよね。馬鹿だよね。

  君が嘘をついてここに居続けることで何の得があるんだい?

  君が全属性使い(オールユーザー)であること、魔導師(マイブル)としての才能があることは

  魔導師の試し(マイブル・プルーバ)で父たちと魔術師(マーゴ)が見てるし、そしてこの前ザールと

  いったらしい任務の結果から見ても、騎士(ナイト)たちだって才能を認めるはず。

  普段ザールと仕事していることから見ても、君が帝国に害をなしているわけでは

  ないことくらいわかるはずなのにね。

  害をなすつもりなら君1人で城に来た初日に城を壊すくらいできたはずだ。

  だけど、頭の固い連中は自分より優れた才能をそう簡単には認められないんだ。

  王国からのものじゃないか? とか昨日帰ってきた僕に言う奴がいたんだよ?

  ありえないのにね。」

  

 そういってブノア殿下はため息をついた。……毒吐きまくりじゃないですか?

 ブノア殿下が言った言葉に対し、ザール殿下が驚いた後にすこし怒ったようにブノア殿下に言葉を返す。


 「俺にはなんとも言ってこないですよ!……ティーナは俺の部下だってこと知ってるはずなのに。」

 「だからこそだよ。ザールはティーナちゃんの才能を認めてるからね。

  ティーナちゃんを疑うような人物、それこそ帝国の領地の中を歩き回っていて

  ティーナちゃんについてほとんど知らないような人物に疑わしいと

  思わせたかったんだろうね。

  レオーヌは研究熱心な子だから王国だろうが帝国だろうが気にしない、

  研究できればそれでよし、で疑おうと思わないって予測したんでしょ。

  馬鹿兄とパメラはまだ帰ってこないからね。だから、僕。

  僕、そんなに連中のいうこと鵜呑みにする人間だと思われてるのかな?

  ……今度潰してやろ。」


 なんか、私が疑われているということよりも最後ににこにこと言った言葉のほうがはるかに恐ろしかった。馬鹿兄って。……ブノア殿下の上……オビディオ殿下、でしたっけ?

 それに、とブノア殿下が言葉を続ける。


 「マルシアルが君に興味を持ったのも気になったしね。」

 「いえいえ、黒騎士だんちょ「ティーナ、俺のことさっきから無視してるでしょ。」


 おいおい、私が話している途中で口を出さないでくださいよ。あなた(マルシアル)のことを無視しているのはあってますけど。


 「マルシアルの闇魔法って結構いやらしい感じじゃないか。

  それに勝ったのが、14歳の女の子! 僕、かなり笑ったよ。」

 「いやらしいって表現はおかしいんじゃないかい?

  別に一番俺の勝てるような形で闇を使っただけなのに……。」

 「その『一番勝てる形』がいやらしいんだよ。君は。」 


 ありがとう。と言われましたが……いや、お礼を言われることでも……ない、と……。  

 2人の会話を聞いているとなんか、全力で逃げたくなってくる。2人とも笑顔なんだけど、目が笑ってない。

 ちら、と横を見るとザール殿下が部屋から出るタイミングをうかがっているかんじだった。

 そうですよね、こんな腹黒い方々の腹の探りあいなんて見ていたくないですよね。


 「ティーナのことすごいと思っていたからこその行動だよ。目の色から見て闇使いだとは

  思ってたけど、無詠唱(ノン・カント)で俺が出した術消しちゃうんだよ?

  あっさりと。だからどんな性格なのか気になってね。ちょっと。」


 ちょっと、じゃないですよ!

 マルシアルの言葉には答えず、ギロリと睨む。


 「いや、初心(うぶ)だったんだね。ごめん。」

 「ティーナって見かけよりももっと年上なかんじに落ち着いてるんだよな。

  だから14歳てこと忘れるのはわかる。」 


 すみませんね! どうせ前の人生でも彼氏の居ない暦=生きていた年齢ですから!

 そういう関係のことは苦手ですよ!

 ……とまあ反論するのはできないので2人の言葉には返事をしないでおいた。



 「僕は別に、君を特別信頼しているわけでもないけど……疑っているわけでもないから。

  だけど君を疑っている人がいることは覚えておいたほうがいいと思うよ。

  じゃあ、祝福祭の魔導師の試し(マイブル・プルーバ)楽しみにしてるから。」

 「はい。ありがとうございます。」


 出て行くタイミングがなかなかつかめず、途中で私も会話の中で発言を求められ、……部屋を無事出ることができたのはそれからかなり後のことでした。

 あれ? 私、精神年齢はあの方々より高いんですよね? 城に来てからこういうパターン多くありませんか??

 まあ、だけど無理なことってありますよね。なにしろ、前世のときにこの世界にいるような人たちの性格の人たちに会ったこと、ありませんから。あんなに腹黒い人たちと話した経験なんてありませんから。


 ……そういえば。


 「殿下、殿下。」

 「何だ?」

 「ブノア殿下が私が王国のものってことはありえないって言ったのは

  何か理由があるんですか?

  それとも、殿下の勘とかそういうものでしょうか?」

 「ああ、そのことか。兄上が言ったのは王国の決まりがあるからだろう。

  王国では2属性使い(ダブル)以上の女の魔法使いのことを聖女っていうんだよ。」

 「聖女?」

 「これまでの研究で、統計学的に2属性使い(ダブル)以上の女の魔法使いから生まれる

  子どもは普通の子どもよりも魔力の量が多く、魔法使いになれることが多い。

  魔法使いが貴重なことはどこでも同じ。聖女は生活についてのすべてを王国から

  援助され一生をすごすことができるが、王都に永住し、子どもを最低でも4人、

  だったかな、産むことが義務付けられているんだ。

  もしお前が王国のものだったら確実に聖女だろ?王国の外に出してもらえるはずがない。

  いくら帝国の事情が知りたくたって、お前が全属性使い(オールユーザー)だからって、

  王国の人たちがお前を送ることはしない。聖女はそれくらいの存在だからな。」

 「……私、帝国でよかったです。帝国はそんな決まりないですよね?」

 「ああ。」


 王国で全属性使い(オールユーザー)だとばれていたら私の生活はかなり違っていたに違いない。……きっとつまらないのだろう。

 


 ザール殿下と一緒に執務室に戻ると、1人で仕事をしていたリアン(書類と格闘中)が顔をあげた。


 「お疲れ様です。殿下、さっき白騎士(ホワイト・ナイト)の方がまた書類を持ってきて

  そこの書類の上に重ねていきましたよ。

  ティーナ、これお前宛の手紙だって。」

 「うわ、昨日姉上に言われてできなかった分もあるのに兄上のもとに行って来たら

  書類が倍かよ……2人とも、後で手伝え。上司命令。」

 「今日こそバルドさんから借りた本読みたかったんですけど……しょうがないですよね。

  私宛の手紙? リアン、ありがとう。」


 リアンから手紙を受け取り、中身を読む。

 ……あー……


 「殿下、私2日くらい休みを取りたいんですけど、私が休みを取れる日って

  どこかありますか?」

 「休み? その手紙、何かあったのか?」

 「ちょっと……私が作った魔装具(ディアブロ・コーシー)の修理に行かなくてはならなくて。

  出来るだけ早めに直しに行きたいんですけど、何日後になりますか?」


 直しに行くのは冷蔵庫もどきのものだ。この世界は魔法があるからかわからないけれど、科学みたいなものは発展していない。食料を保存するのは冷暗所、ということになっている。

 祖母は水使いだったし、私も水、氷と使うことができたので、食料の保存にはあまり困っていなかったけれど、魔法が使えない村の人たちにはどうにもならない。時々無料で野菜をもらって来たこともあったので、どうにかしてお礼をしたいと思って作ったのが冷蔵庫もどきなんです。

 冷蔵庫もどきは村に1つしか作ってきていないし、私が時々メンテナンスをお願いしておいた子から来た手紙なので、製作者である私以外は誰も直せないと思う。


 「お前が作った魔装具(ディアブロ・コーシー)を直しに行くってことは……お前が住んでいた

  村にか?」

 「いえ。隣村です。」

 「よし。じゃあ1週間待て。そうすれば行けるな。」

 「ありがとうございます。」


 1週間か。それだったら何とかがんばってもらえるだろう。……ん? 『行ける』?


 「行けるって……殿下がついてくるわけではないですよね?」

 「俺も行くに決まってるだろ。そうしないと1週間後じゃなくて

  1ヵ月後くらいになるぞ?

  お前が住んでいた村には前の任務の時から行ってみたいと思っていたんだ。

  お前が作った魔装具(ディアブロ・コーシー)があるだろうし。」 

 「いや、殿下がついていくのは無理かと……」


 書類、たまってますよ。

 当然のように私の言葉にザール殿下が答えると、リアンがつっこんだ。


 「……そうだったな。」


 書類に目を向けて殿下がため息をついた。そしてしばらく考えた後、リアンの方を向いた。


 「リアン、お前ティーナについて行って来い。2日間休み取れるようにしておくから。

  考えてみれば、俺は魔眼(ディアブロ・アイ)使えないけどお前は使えるから、魔眼(ディアブロ・アイ)使って

  ティーナがはった結界の様子とか見て来い。で、使えそうな奴居たら城へ勧誘。

  勧誘の前には俺に報告するように。」

 「……は? 俺、ですか。でもお「行ってきたら城にある精霊関係の本、

  全部確保しておいてやるぞ?」……行きます。」


 別についてくるつもりではなかったリアンだけれど、殿下の言葉であっさりとついて行くことに決まった。

 城の本の量って多いし、色々なところに分散してますからね。自分の調べたい分野の本を探すのにも一苦労しますもんね。

 任務から帰ってきてからはリアンは精霊と契約するために調べているので殿下の言葉はありがたいだろう。私も、その言葉につられるのは、わかります。


 ……というわけで、冷蔵庫もどきを直しに行くのには私1人ではなく、+αで行くことになりました。

 村の人たちに1週間はがんばってもらうことができますが、1ヶ月は無理ですからね……。

 リアンと行く修理の旅、ということにしましょうか。



次はリアンと2人旅~と行きます。

が、その前に閑話を1話入れたいと思います。

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