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導くもの  作者: アカリ
始まりはお城から
12/23

*10 任務(4)



 子どもをさらい、家にとどまらせる。

 2つの、棺。書いてあった言葉。

 子を見守る、母のようにある姿。





 導くもの (Uma pessoa para conduzir *10)





 「……こんばんは、闇の精霊さん。その子は契約、してないですよね?」

 「ムゲンの魔力を持つ子よ。確かに、ワタクシはこの子と契約していません。

  ですが、この子を傷つけるようでしたら、ワタクシはあなたを敵と見なしましょう。」

 「敵わないと、わかっていても?」

 「この子の両親の願いです。」


 犯人は、子ども? どうすればいいですかね。


 精霊は話しを聞いてくれるかんじではない。

 うーん。手ごわいですね。子どもを起こすのが一番いいでしょうか?

 眠っている子どもに向けて魔力の糸をのばし、子どもの魔力と接触する。


 お、反応しました?


 「この子にナニをしましたか?」

 「安心してください。危害は加えていませんから。」


 今にも攻撃してやる! ていう顔でこっちを見ないでくださいよ。<ノーテ>が攻撃を仕掛けたら、その子にも被害が及びますよ?


 「……おねえちゃん、だあれ?」

 「私はティーナ。あなたに用があってきたの。起こしちゃってごめんね?」

 「エメ、おねえちゃん見るの初めて! おねえちゃんの隣にいるの、精霊さん?

  モデロが連れてきてくれたの?」


 エメちゃん、はネービーブルーの髪に、黒い、目。この魔力からして純粋な闇使いだろう。そして、今の言葉。5歳で魔眼(ディアブロ・アイ)は使えないだろうから、精霊が見えるのは先天的なもの?


 「<モデロ>? この精霊は<モデロ>、て名前なのかしら?」

 「うん。エメの、お姉さん! 美人でしょ!」


 確かに具現している姿は美人だけど……警戒心ばりばりで目つきが悪いですね。


 「エメ様、この人はワタクシが連れてきたわけではありません。

  新しい友達、下に連れてきましたよ?」

 「そうなのー? おねえちゃん、すぐ帰っちゃう?

  お父さんとお母さんね、いなくなっちゃったの。

  それで、泣いてたらモデロがお友達連れてきてくれたの。

  お家に呼んだ子、みんなエメがモデロと話してるとエメのこと気味悪そうにみるの。

  モデロが見えてないみたいなの。だから、エメはモデロが見えますように、って

  お願いしたの。おねえちゃん、モデロのこと見えるよね?」


 子どもさらい、そういう理由でしたか。

 2つの棺と、今の話。両親がなくなっているのですね。


 「うん。見えるから、安心して? ……<ノーテ>、この子と部屋の外に。」

 「御意。」

 「エメちゃん、ちょっとお部屋の外で待っててくれる? 

  私、<モデロ>さんとお話があるから。」

 「うん! ノーテ、ていうの? うさぎさん、かな?」


 <ノーテ>が近くにいればエメちゃんは大丈夫だろう。闇使いだから触ることもできるし。

 エメちゃんが<ノーテ>の近くにいるわけだから、話を聞いてくれないかな?


 「さて、<モデロ>さん。私は帝国からの任務を受けてここに来ています。

  ここでやるべきことは2つ。『犯人の確保』と『子どもの保護』。

  それでですね……」

 「エメ様に、危害を加えさせはしません! それが今亡き主との約束!」

 「っわ、」


 <モデロ>の魔力が膨れ上がる。待ってくださいよ、私、話している途中でしたから。危害を加えるなんて一言も言ってないですよ。


 「ムゲンの魔力を持つ子よ、ワタクシはアナタには敵いません。

  しかし、一時拘束するコトでしたら、何とかカノウでしょう。」

 「ちょ、待ってくださいよ。」



        どんっ



 <モデロ>が私を拘束しようとして闇の手を伸ばしてきたのがわかったので思わず防御壁を作って弾き飛ばしてしまった。


 「この量のマリョクではアナタを倒すことはできませんか……

  もっと、チカラを!」 


 え、私を「拘束する」ことから「倒す」ことに変わってませんか?


 この森は<モデロ>の加護によって半分くらい成り立っている。その力を無理やり取り込もうとしている。

 まずいですね、このままだと<モデロ>は無理に魔力を取り込もうとしていますから、失敗して魔物化する可能性が高いですね。……私のせいだろうか?


 「おねえちゃん! モデロ、どうしたの? おかしいよ!」

 「! エメちゃん」


 ちゃんと部屋の外で見張っててくださいよ、と<ノーレ>に言うと、一瞬魔力が押し負けたのだ、とかえってきた。


 「モデロ! モデロ! どうしたの? 聞こえる??」


 ……守ろうとした対象の声も聞こえていないみたいだ。<モデロ>は精霊。魔物化するとしたら、かなりのレベルの魔物になってしまうだろう。


 「エメ、<モデロ>を、元に戻したいですか?」

 「うん。 ちゃんとお話したいよ!」

 「そうですか。では、私が今から言う言葉を後に続いていってください。

  <ノーテ>、<モデロ>の力の取り込みを妨害していて。」

 「御意。」


 一番手っ取り早い方法をとらせてもらいましょう。精霊と人との契約だ。契約をすれば、主の命令で魔力の量は変えられるし、主とのつながりによって自我を取り戻すだろう。

 私がしてもいいのだが、私がエメにやらせようと思ったのはエメの魔力の量が理由だ。<ノーテ>を一瞬でも上回ったならかなりのものだ。一級魔術師マーゴ・デ・プリメーラになる素質は十分ある。幼いうちにコントロールを身に着けるのは難しいだろう。だったら魔力の一定量を精霊に預けていたほうがいい。

 そして、精霊が見える目がある。精霊のことは精霊に教えてもらうことが一番だから、精霊との契約を結んでおいたほうがエメにとってはいいでしょう。


 <我の力 尽きるまで 汝に 与え続けることを>

 「<われの力 つきるまで 汝に あたえつづけることを>」


 <汝の力 我の 刃となり 盾となりて 具現することを>

 「<汝のちから われの やいばとなり たてとなりて ぐげんすることを>」


 悪くないですね。私はエメの片手を握ってエメの魔力を<モデロ>に向ける。

 これで、最後です。


 <ここに 誓い 契約す>

 「<ここに ちかい 契約す>」


 「<ノーテ>、どいていいよ」


 エメの片手で契約の魔法陣を描いて<モデロ>に飛ばした。

 <モデロ>は力の取り込みをやめた瞬間、女の人だった姿から、黒いウサギの形になった。


 エメは知らないが、精霊との契約の中で一番強く、重い契約をさせてもらった。

 この契約は主の魔力がなくなるまで消えることはない。魔力がなくなるまでということはほぼ死ぬまで、と同等だ。本来は精霊の同意もなければいけないのだが、何しろ魔物化していて自我がほぼなかったので同意がなくても契約ができた。


 「モデロ! 大丈夫? 怪我してない?」

 「エメ、様、……いえ、主……?」

 「あるじ? お母さんのこと?」


 <モデロ>の前の契約主は、エメの母親ですか。だからエメが生きている年数よりも長く、精霊の加護がここにあるんですね。


 「エメ様の母様に約束、したのです。母様がもう、エメ様と一緒にいられないから

  ワタクシがお傍にいることを、願われたのです。」

 「エメ、モデロがいるからもうさびしくないよ? 泣いちゃってごめんね。

  ほら! おねえちゃんが手伝ってくれたし、エメはげんき!」


 そこにあったのは、母親の愛情だったのだ。

 子どもを1人にしたくない、さびしい思いをさせたくない、「契約」ではなく「約束」だったでしょう。それを<モデロ>が受け入れ、今までエメを守っていたんですね。

 エメが<モデロ>のことを気にかけていたから魔力を<モデロ>にあげる形となったのではないでしょうか。



 母親、ですか。私をおばあさまのところへおいていったのは何故だったのでしょう。


 私を育てるのが嫌になったのか? 私が異質だったから?

 ……今更そんなこと考えても、母が私をおいていった理由なんて、わからないのに。

 


 「ティーナ様、でしたか? 無礼を働きました。申し訳ございません。」

 「それはおいておきましょう。エメとあなたには一緒に帝都に来てもらうことになると

  思います。他の子どもたちは村に返しましょう。」

 「わかりました。ワタクシは主とともにありましょう。」


 私に向けて攻撃しようとしたことは気にしないでおきましょう。怪我1つしたわけではないですし。

 それよりも、やっと言おうと思っていたことが言えましたよ。

 朝にならないうちに村に行きましょうか。

 <モデロ>が使っていた村に行く転移の魔法の痕跡が残っていたので、それを利用して全員一緒に転移することにしよう。




 村に戻ると騎士(ナイト)の皆さんが出迎えてくれた。

 ……さすがに10人以上の転移は疲れました。


 「殿下、すみません。さすがに疲れました。後任せて部屋戻ってもいいですか?」

 「……顔色、わるいぞ。無理すんなよ。」


 殿下が何か言いたそうに口を開いたけど何も言わず、私の頭を撫でて子どもたちのほうに歩いていった。

 ……顔にでるほど疲れがたまっていたのだろうか?

 

 部屋に行こうと歩いていると、リアンが立っていた。


 「リアン、どうしたの?」

 「どうした、て聞くのはこっちの方だ。」

 「? 任務のこと? それはあし「じゃなくて。」


 任務の報告なら明日するよ、と言おうとしたら途中で言葉をさえぎられ、リアンに手を引かれてリアンの部屋の中に入ってしまう。


 リアンさん、ここ、あなたの部屋ですけど。

 部屋の中に入って何するんですか、と聞こうと思ったらリアンが真剣な表情で私のほうを見ていたので黙っておく。


 「泣きそうな顔してるぞ? 何かあったのか?」

 「何もないよ、だいじょ「大丈夫、ていう顔じゃない。」


 私が大丈夫、といったら大丈夫なんです。気にしないでください。


 ……そうしないと、今日は色々思い出して泣いちゃいそうですから。


 「泣きたいなら泣け。そんな顔でいるなよ。」


 リアンが私を抱きしめる。


 「見てほしくないから、見ないから。

  泣かないようにするくらいなら、今ここで泣いちゃえよ。」


 ………………


 「精霊と、あの子がいたところで何かあったんだろ?

  聞かないから。言わなくてもいいからさ。」


 リアンが優しく、私に話しかけてくる。

 やさしく、しないでほしい。

 涙が出てくるじゃないか。

 今まで考えないようにしてきたことを、考えてしまう。


 「……っふ、……ごめ、」

 「いいから。」


 おばあちゃん、私、がんばってますから。

 おばあちゃんがいなくても、あなたのように、みんなの、支えになるように。

 

 父さん、母さん、私をおいて何処かへ行ったのは、何故?


 父さん、母さん、……どこに、行ったんですか?



          ◆  ◆  ◆  ◆  ◆



 「おねえちゃーん! あれ、何?」

 「どれですか?……あれは風の妖精ですね。声をかけると風で

  挨拶してくれると思いますよ?」

 「ほんとに? こんにちはー!」


 風がエメのところに吹く。風に吹かれてエメの髪の毛がぼさぼさになった。

 エメは帝都で魔力のコントロールと魔術の勉強をすることになった。闇使いは魔術師(マーゴ)にあまりいなく、しかも精霊が見えるので、試験が受けられるくらいになったら魔術師(マーゴ)になるのだと思う。



 アレベルティーナ・ギラルディーニ、完全復活です!


 昨日(というか今日の朝、だったのでしょうか)のことがあってリアンの顔がまともに見れない。恥ずかしすぎます。目があうと顔、赤くなります。

 だって! リアンに抱きしめられる時点でいつもなら魔法で吹き飛ばすのに! いや、まあ、色々、あったからですけど、そのまま泣いてしまうとは!! 仮にも(精神)年齢は年上なのに……しかも朝起きたらちゃんと自分のベットでしたし……運んでくれたんだろうけど……重力操作とかしておけばよかった……。


 「ティーナ」

 「な、何?」


 悶々と考えていたらリアンに声をかけられた。けど、顔は見れない。無理です。返事だけ。


 「重くなかったから、安心しろよ。」

 「………………」 


 重くない=軽い、なんでしょうか!? いや、違う気がするような……でも、「不味くない=旨い」と同じように? だけど、私自分で軽いと思える体重じゃないことは分かってるので……あ、「見た目よりは重くない」的な?


 「……殿下? 何でわらってるんですか?」

 「いや? 天下の魔導師(マイブル)候補でも悩み事があるんだなぁ、と。」

 「私、人ですから! 悩み事の1つや2つ、ありますよ。」

 「そうですよ、バルタザール殿下。悩み事の1つにきっと親父の扱いが

  入っていると思います。」

 「そうですよ! バルドさん実験実験、て姿を見かけるとおいかけ……ではなくて、

  リアンも私のことからかってるんですか?」


 こうして、私の一級魔術師マーゴ・デ・プリメーラとしての初任務は成功と恥ずかしさを残して終わったのでした。(成功だけ残すつもりだったんですが……)


 ……こんな任務がずっと続くようだったら帝国の使いって相当大変ですよね。





表現力のなさが悲しくなる今日この頃です。

わかりにくくてすみません。

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