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幼馴染で婚約者

「はるくん、あさだよー」


 平日の朝7時半。アラームをかけていない俺こと白浜春己しらはま・はるきが遅刻とは無縁でいられるのは、可愛い幼馴染が毎日起こしてくれるからだ。

 身体を揺すられて目が覚めた俺は、ベッドから起き上がると目の前にいる少女に向き合う。


「凪ちゃん、おはよ」

「えへへ。それじゃあ、あさごはんのじゅんびしてくるから、はるくんはおふろはいっててね」


 俺を起こしてくれた幼馴染であり婚約者でもある本藤凪ほんどう・なぎの頭を撫でてやると、彼女は嬉しそうにはにかみながら、エプロン姿(勿論裸エプロンでは無い)のまま台所へと去っていく。

 促されるまま俺は朝風呂を堪能し、濡れた髪をわしゃわしゃとバスタオルで拭いて終わらせ、鏡を見てヒゲはまだ目立たないし剃らなくていいかと判断して制服姿に着替えてリビングへ。


「はるくん、ごはんできたよー!」

「……」

「おはよう、母さん、凪ちゃん」


 父親は既に仕事のために家を出ており、我が家のリビングには俺と母親と、毎日隣の家からこうして通い妻として家事を手伝いに来ている凪ちゃんの3人。俺が高校生になってから、こうした日常が当たり前になりつつある。



「いただきまーす!」

「頂きます」

「……」


 三人で朝食を食べながら、主に凪ちゃんが料理の何を担当したかなんて話で盛り上がる。

 その間、俺の母親は終始無言で、食事を終えるとさっさと食器を片付けに行ってしまう。


「わたしもおてつだいします! あ、はるくんはそろそろがっこういかなきゃ!」


 食後の後片付けを行う二人を眺めながら、最後に母親の声を聞いたのはいつだっただろうかと記憶を辿るが、うまく出て来ない。


 別に母親は病気で喋れない訳では無い。

 昔は今ほど女性用の教育が完成されていなかったこともあるが、自発的に喋るように教育されていないし、言葉だってそこまで知らない。

 母親の持ち主、と言えば聞こえは悪いが、父親に何か言われた時に反応を返すくらいだろう。


 俺と凪ちゃんのように家が隣で、幼馴染で、小さい頃からよく遊んでいて、男と女で教育が分断されてからもそこまで関係が劇的に変わらなかったような例は特殊中の特殊。


 大抵の女性は洗脳にも近い教育で感情を奪われ、家事や育児、単純な作業に関する技術のみを習得させられ、ある程度の年齢になると、DNAによって決められた相性の良い男の下へ嫁がされて、子供を産まされて、母親にさせられる。


 俺も凪ちゃんも、そんな一般家庭から産まれた子供だ。

 凪ちゃんが周りの女性に比べればよく喋るのは、子供の頃から俺とよく喋っていた経験と、たまたま相性が良かったため早期に婚約者となり、俺の好みを反映させるためにある程度の会話教育が認められているからに過ぎない。


 それほどまでに、今の世の中の女性は、人形だらけなのだ。


「いってきます」

「いってらっしゃーい!」


 男性にとって都合の良い世界になったのかもしれないが、裏を返せば今の世の中の女性はほとんど仕事をしない。

 女性の仕事は男性の性処理をする事であり、子供を産む事であり、科学技術の進歩によって非常に簡単になった家事をする事。

 それ以外の全ての仕事は、男性がやるのだ。



 しっかり仕事の出来る男になって、凪ちゃんとまだ見ぬ子供を養える人間になるために、俺は彼女に手を振りながら、学校へと向かうのだった。

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