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剣聖・佐々木義輝は魔王討伐より推し活が大事  作者: 北大路京介


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9/20

第9話:地雷原の突破と、剣聖を待つ「特別特典会」

<魔導地雷原での回避推し活>


義輝は、出口に敷設されたカノーの魔導地雷原を前に、立ち止まった。


(地雷は、重量と魔力の振動に反応する。神剣を封印している今、魔力による相殺はできない。そして、リリア様の魔力ジェルとアリス様の無垢な歯車は、いかなる衝撃も許されない)


義輝は、推しの素材を自分の命よりも優先し、胸のポケットに厳重にしまい込んだ。


「仕方あるまい。神剣なき今、頼れるのは、大陸最強の剣聖として磨き上げた、『推し活に遅刻しないための最速回避能力』だけだ!」


剣聖の神速は、単なる移動速度ではない。それは、自身の体重、魔力、鎧の摩擦、地面の僅かな起伏、そして敵の攻撃の軌道を、全て演算し、瞬時に最も効率的な「無」の経路を割り出す、究極の空間認識能力である。


義輝は、地雷原の中を、まるで水面を滑るかのように走り出した。


ヒュン!


義輝の足元すれすれで、最初の地雷が爆発した。義輝は、爆風が素材に影響を与えないよう、身体全体で爆風を受け止め、わずかな魔力を使って自身の鎧にその衝撃を吸収させた。


『義輝!なぜだ!?その動きは、最高速度ではない!』カノーのスピーカーから、焦燥した声が響く。


「カノー!貴様には理解できまい!これは、ただの回避ではない!フローラ様のダンスの『完璧な体重移動と無駄のないステップ』を再現した、推しへの敬意を込めたパフォーマンスなのだ!」


義輝の動作は、まさに流れるようだった。地雷の爆発音、岩壁の反響、そして地雷に込められた魔力の粒子の流れを全て聴き分け、次に爆発する地雷の場所を予測し、その爆心地へと自身の身体を差し向けた。地雷は、義輝が踏みつける直前の、わずか数センチ横で次々と炸裂していく。


義輝の鎧は、爆発の熱と破片でボロボロになり、全身から血が噴き出した。だが、彼は素材を保護する姿勢を崩さない。


「推しの命運と、素材の安全は、私が守る!」


義輝は、満身創痍になりながらも、地雷原を突破し、地下迷宮の出口の光を捉えた。


<勝者の凱旋と、プロデューサーの裁定>


義輝が地上に出た瞬間、彼を待っていたのは、レオン、シズク、そして顔面蒼白になったカノーだった。


義輝は、よろめきながらカノーに向き直った。


「カノー。素材は、無傷で持ち帰った。貴様の情報力は、推しへの愛と献身には勝てなかったな」


義輝は、泥と血にまみれた手で、魔力ジェルと無垢な歯車の保存容器をプロデューサーに差し出した。どちらも、一切の破損や魔力干渉の跡がない、完璧な状態だった。


「こ、これは…!」プロデューサーは驚愕した。


その時、カノーが地団駄を踏んだ。「卑怯だ!武力で地雷を突破するとは!」


「待て、カノー君」プロデューサーは、冷静にカノーを制した。「地雷は、地雷原の設置自体がルール違反ではありません。しかし、義輝殿は神剣を封印し、素材を完璧に保護した。この『お使い』に対する誠実さと、それを達成した精密な能力は、剣聖殿の圧倒的な勝利と認めます!」


プロデューサーは、義輝に向かって深く頭を下げた。


「佐々木義輝殿。貴方を、今後一ヶ月間、ロイヤル・アクアの『専属非公式ボディーガード』に任命します!」


<推しからの、予想外の「特典」>


義輝は、喜びでその場に崩れ落ちそうになった。全身の傷の痛みも忘れるほどの歓喜だ。


「フローラ様を、間近で守れる…!これ以上の光栄はありません!」


シズクが慌てて駆け寄った。「義輝、今は治療が先よ!ひどい怪我だわ!」


義輝が治療を拒否しようとしたその時、奥からフローラが現れた。彼女は、義輝の血まみれの姿を見て、顔色を変えた。


「佐々木さん!そんなひどい怪我までして…私のお使いを…」


フローラは義輝に駆け寄り、そのボロボロの鎧にそっと触れた。


「ありがとう、佐々木さん。私、どうしてもお礼がしたいです。プロデューサーさん…」


プロデューサーは頷いた。


「実は、佐々木殿が地雷原を突破している間に、急遽、フローラさんの希望で、『特別特典会』の準備を進めていました」


義輝は、目を輝かせた。特典会!?どんな特典だ!


フローラは、優しく微笑んだ。


「佐々木さんへの特典は、『ツーショット撮影』でも『ロングトーク』でもありません。私が、佐々木さんの身体の傷を、一箇所だけ、聖女シズクさんの回復魔法の力も借りて、優しく撫でて治します」


「な…っ!?」


義輝の顔は、血の気が引くほどの驚きと興奮で歪んだ。フローラの優しさに触れてもらえる、しかも一箇所だけという、極めてパーソナルな特典!それは、ツーショット写真や3分間のトークを遥かに凌駕する、剣聖の推し活史上、最高の報酬だった。


「さあ、佐々木さん。どの傷を癒しましょうか?」


義輝は、全身の傷の中から、最もフローラに近づける傷を、必死に選ぼうとしていた。彼の推し活は、新たな極地へと到達した。

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第9話 完

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