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剣聖・佐々木義輝は魔王討伐より推し活が大事  作者: 北大路京介


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3/20

第3話:3分間の護衛依頼と、魔王軍、特典会に降臨

<衝撃の2分30秒と、剣聖の自我崩壊>


残り2分30秒。


ブース内の空気は凍り付いていた。大陸最強の剣聖、佐々木義輝(32)は、その場で全身の鎧が軋むほど硬直していた。


フローラの言葉が頭の中を何度も反響する。


「え、海賊の宝?えーっと、別に深い意味はないですよ?なんか、衣装が可愛いから、ってプロデューサーさんが…」


「…な、なに?深い、意味は…ない?」


義輝の推し活は、常に「深読み」の上に成り立っていた。歌詞、MC、衣装の色、ブログの絵文字一つに至るまで、全てに隠された意味を読み解き、それを戦闘戦略に転換することで、彼は剣聖の地位を築いたのだ。その大前提が、たった一言で根底から覆された。


(馬鹿な!『海賊』!『宝』!これほどメタファーに富んだテーマが、単に衣装が可愛いというだけで選ばれるだと?そんな無意味な行動原理で、この世界は動いているのか!?)


義輝の推し活論理は、世界の真理を追求する学問だと信じていた。それが、単なる「可愛い」という感情論だった。


フローラは、義輝の異様な沈黙に不安そうな笑顔を向けた。


「あの…佐々木さん?大丈夫ですか?なんか、すごく汗かいてますけど…」


「あ、いや、大丈夫で、ございます」


義輝は慌てて汗を拭った。この貴重な残り時間を、精神的な動揺で無駄にするわけにはいかない。義輝は思考を強制的に切り替えた。


(そうだ、意味がなければ、私が意味を付与すればいい。それが、真のオタクの役割ではないのか?)


<推し活の目的変更と、残りの時間>


残り2分0秒。


義輝は、トークテーマを急遽変更した。もはや「海賊の真意」などどうでもいい。今は、フローラとの「相互理解」の時間を守ることに全力を注ぐべきだ。


「フローラ様!失礼いたしました。では、単刀直入に申し上げます。この残り2分間で、私に『護衛依頼』をしてください」


フローラは目を丸くした。「護衛?私をですか?」


「はい。フローラ様は今、世界で最も輝く存在です。その輝きは、魔王軍にとっても無視できない脅威。魔王軍は、フローラ様を拉致することで、我々勇者パーティの士気を根こそぎ奪おうと画策している可能性があります」


義輝の理論は飛躍しているが、妙な説得力があった。


「そこで、私、剣聖・佐々木義輝に、今後一週間、ロイヤル・アクアの『専属非公式ボディーガード』の座を与えていただきたいのです。私の剣技は、フローラ様の安全を保証します」


フローラはクスッと笑った。


「佐々木さん、面白い冗談ですね!でも、安心してください。私たちには、プロデューサーさんがつけてくれた警備の騎士団がいますから…」


「その警備は、『魔王軍幹部級の討伐証明書』と交換できるレベルの魔物に対応できますか!?」義輝は身を乗り出した。


そのとき、ブースの外がにわかに騒がしくなった。


<魔王軍、特典会に降臨>


残り45秒。


会場の壁の一部が、突如、轟音と共に崩れ去った。土煙の中から現れたのは、全身が黒曜石のような鎧に包まれた大柄な魔物だった。


魔王軍直属の刺客、ブラック・ゴーレム。その名は、討伐証明書ランクでいうと、カノーが手に入れたばかりの「魔王軍幹部級」に相当する!


「ロイヤル・アクアのメンバーを確認…対象、フローラを確認。魔王様の命により、勇者の士気低下のため、拉致する」


ブラック・ゴーレムは、他のファンや警備騎士を無視し、一直線にフローラが座るブースへと進んだ。会場はパニックに陥り、ファンたちは悲鳴を上げて逃げ惑う。


義輝のライバルであるカノーは、ブースの外で討伐証明書を握りしめ、顔面蒼白になっていた。「魔王軍幹部級!?嘘だろ、こんな現場に…!」


だが、義輝は違った。彼の顔には、安堵と喜びの表情が浮かんでいた。


「来たか…!やはり私の推測は正しかった!フローラ様は、世界の命運を握る重要人物なのだ!」


義輝にとって、このゴーレムの出現は、特典会の価値を証明してくれる最高の出来事だった。


<特典会を守る剣聖の誓い>


残り20秒。


「フローラ様!」義輝は立ち上がり、神剣を抜き放った。「先ほどの護衛依頼の件、今、ここで証明させてください!貴方の3分間は、私が、剣聖・佐々木義輝が、絶対に守り抜きます!」


ブラック・ゴーレムは、ブースに飛び込んできた。義輝は、フローラが座るテーブルを後ろに庇いながら、神剣を構えた。


「トーク時間中の戦闘だと?不敬千万!私がフローラ様と交わす、この一秒一秒の『対話』を邪魔するなど、万死に値する!」


義輝は、トーク券を胸に抱きしめ、戦闘態勢に入った。彼の剣技は、フローラとの残り時間を守るという、絶対的な使命感によって、極限まで研ぎ澄まされていた。


「レオン!シズク!手出し無用だ!この戦いは、私の推し活の正当性を証明するための、個人的な特典会延長戦なのだ!」


義輝はブラック・ゴーレムに向かって、神速の一撃を放った。


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第3話 完

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