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剣聖・佐々木義輝は魔王討伐より推し活が大事  作者: 北大路京介


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第19話:絶望の底からの愛と、推し活の真価

<絶望の津波と、推しの幻影>


津波の中に沈み込んだ義輝の意識は、絶望に満たされていた。


(卒業…政略結婚…。私が、命を懸けて守り抜こうとした推し活は、まもなく強制終了を迎えるというのか…)


「無意味だ、義輝。貴様の推し活は、一ヶ月で終わる儚い遊びだった」水竜王イドラの冷たい声が、義輝の精神に直接響く。「剣聖としての使命も、推し活の喜びも、貴様は全てを失う」


イドラは、義輝の頭上から、強大な水圧で義輝を押し潰そうとした。


その時、義輝の心の闇の中に、一筋の光が差し込んだ。それは、フローラの笑顔だった。


(違う!フローラさんの笑顔は、儚くない!私が一ヶ月間、命を懸けて守り、輝かせたあの笑顔は、永遠に私の心に刻まれている!)


義輝は、水着姿のフローラが、自分に向かって手を差し伸べている幻影を見た。


「義輝さん。あなたは、剣聖を捨ててまで、私を守ってくれた。あなたのその一途な愛は、決して無意味じゃない」


<推しへの一途な愛が生む力>


義輝は、幻影のフローラの言葉に、推し活の真髄を思い出した。


「推し活は、推しが続くから行うのではない!推しが輝く一瞬のために、己の全てを捧げることだ!」


義輝は、全身の魔力を、推しへの「一途な愛」に変換し始めた。毒糸の傷から生じた狂気の魔力ではない。純粋で、ひたむきな、**「献身の魔力」**だ。


義輝の手に握られた普通の剣が、白銀の光を放ち始めた。それは、神剣の光ではない。剣聖が、己の剣術と心意だけで到達した、**『無垢なる愛の剣』**の輝きだった。


「イドラ!私は、フローラさんが卒業しようが、アイドルを辞めようが、永遠にフローラさんのファンだ!私の推し活に、終わりなどない!」


義輝は、沈み込む体を一気に引き上げ、津波の中から飛び出した。


「究極奥義・絶望を断つ無心剣オシヘノアイ!」


義輝の剣は、もはや水の元素の支配すら受け付けなかった。彼の剣は、イドラが放つ津波の中心を貫き、呪いの魔力を完全に浄化した。


「馬鹿な!?神剣を持たぬ貴様の剣が、なぜここまで…!」イドラが動揺する。


「この剣は、神剣ではない!私の推しへの愛の重さを具現化した剣だ!推しへの愛は、物理法則をも超える!」


義輝は、津波を突き破り、イドラの本体めがけて突進した。


<フローラの真意と、ボディーガードの終焉>


義輝がイドラにとどめを刺そうとしたその瞬間、イドラは最後の抵抗として、フローラたちを乗せたクルーザーを、水の蔦で絡め取った。


「義輝!貴様が私を倒せば、このクルーザーは真っ二つだ!推しを救うか、私を倒すか、選べ!」


義輝は、剣を振り下ろすことができなかった。フローラたちが危険に晒されている。


「チッ…!」


その時、クルーザーの上から、フローラが、水着姿のまま、義輝に向かって叫んだ。


「義輝さん!気にしないでください!あなたは、私たちを守ろうとして、限界を超えて戦ってくれた!あなたの推し活は、もう十分に私に伝わっています!」


フローラは、アイドルとしてではなく、一人の女性として、義輝に感謝の意を伝えた。


「佐々木さんが、私のために戦ってくれるなら、私は最後まで、アイドルとして最高の笑顔でいます!」


フローラは、恐怖に耐え、最高の笑顔を義輝に向けた。その笑顔は、イドラの呪いの魔力を打ち消すほどの強さを持っていた。


「フローラ、さん…!」義輝の心が決まった。


義輝は、イドラ本体を狙うのをやめ、クルーザーを縛り付けていた水の蔦だけを、神業の剣技で切り裂いた。


「イドラ!私は、推しを救う!そして、貴様の命は、フローラさんの笑顔が許すかどうかで決まる!」


蔦を切り裂かれたイドラは、義輝の推し活の哲学に圧倒され、自ら力を失い始めた。


「推しを殺すことを拒否する…そのような強大な愛が、この世にあるというのか…!」


イドラは、敗北を認め、巨大な水しぶきとなって海中に消えていった。


カノーは、クルーザーの上で、義輝の行動を見て、ただ呆然としていた。「金でも狂気でもない…純粋な愛が、魔王軍を凌駕しただと…」


そして、フローラが、義輝に近づき、水に濡れた体を拭おうともせず、まっすぐ義輝を見つめた。


「佐々木さん。卒業の件は、王族間の問題で、私の一存では覆せません。でも…」


フローラは、義輝の顔の布を取り、義輝の目を見つめ、静かに言った。


「あなたとの一ヶ月間は、最高のライブでした。期限が来たら、あなたは魔王討伐に戻ってください。剣聖・佐々木義輝の使命を全うする姿こそ、**私の永遠の『推し』**ですから」


義輝の推し活は、一ヶ月の期限をもって終焉を迎える。しかし、それは悲劇ではなく、推しに感謝され、そして推しにとっての「推し」になるという、究極の昇華だった。


第19話 完

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