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剣聖・佐々木義輝は魔王討伐より推し活が大事  作者: 北大路京介


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第17話:狂乱のライブと、推しの「名前の力」

<義輝の暴走と、ライブ会場の異変>


ライブ会場は、義輝の放出する禍々しい紫色の魔力に包まれていた。カノーが起動した「強制推し変システム」は機能しているものの、観客の視覚と聴覚は義輝の魔力に上書きされ、全員がフローラのライブを見ていると思い込んでいた。


ステージ上では、ロイヤル・アクアの三人が困惑していた。観客は熱狂しているが、彼らの目にはカノーのアイドルの映像が映っているはずだ。しかし、義輝の魔力が作り出す「幻影」のせいで、観客の熱狂は最高潮に達している。


義輝は、魔導装置室で狂気の笑いを漏らしていた。


「フローラさん!見てください!この推し活の光景を!誰にも邪魔させん!私の推し活こそが、真実の光だ!」


カノーは、義輝の異常な変貌に恐怖を感じたが、ここで退くわけにはいかない。


「義輝!貴様、完全に推し活の道を踏み外したな!推しとは、正しく応援されるべきだ!私の力で、貴様を打ち負かす!」


<カノーの最終兵器「超高額課金兵団」>


カノーは、懐から最高級の魔導トランシーバーを取り出した。


「総員に告ぐ!今こそ、我々の推し活の経済力を見せつける時だ!投入せよ、超高額課金兵団ハイ・スペンド・ファナティクス!」


カノーが指示を出すと、会場の最前列に陣取っていた十数名のファンが、突如として動き出した。彼らは、全員がカノーの支援を受けた「重課金」の熱狂的なファンたちだ。


彼らは、腰に下げた魔導の札束(課金証明)を空中に放ち、それが魔力となって集束する。彼らは、その強大な金銭魔力で、義輝の幻影魔力に対抗しようとした。


「我々は、カノー様の提供する究極のグッズとトーク券で強化された、推し活の精鋭だ!義輝の妄想など、私たちの『資本の力』で押し潰してやる!」


課金兵団の放つ金銭魔力が、義輝の紫色の狂気魔力と衝突した。会場の観客は、二つの魔力の衝突による激しい振動に、さらに熱狂する。彼らには、それがライブの最高の特殊効果に見えていた。


義輝は、カノーの資本力に圧倒され、紫色の魔力を一瞬揺るがせた。


「ぐっ…経済力か!それが、推し活の敗者の最終兵器か!」


義輝の幻影魔力が弱まり、観客の視界に、一瞬だけカノーのアイドルの映像がチラつき始めた。このままでは、観客の混乱を招き、ライブは失敗してしまう。


<フローラが放つ「名前の力」>


ステージ上では、フローラが、義輝の苦しむ姿を見ていた。


(義輝さん…あなたの身体は毒の魔力に侵されて、暴走しているのね。でも、それは、私を守りたいという、あなたの純粋な気持ちから来ている…)


フローラは、マイクを握りしめた。彼女は歌うのを止め、会場の騒音と魔力の衝突を突き破る、澄んだ声で、義輝に語りかけた。


「義輝さん!」


その呼びかけは、義輝の放出する魔力の周波数と、カノーの課金兵団の金銭魔力を打ち消し、義輝の毒に侵された脳に、直接響いた。


義輝の身体が、ビクリと硬直する。


「私を助けてくれて、ありがとうございます。でも、もう大丈夫です。あなたの守りたいものは、私の笑顔ですよね?」


フローラの言葉は、義輝の狂気を鎮め、彼を「剣聖・佐々木義輝」という存在へと引き戻そうとした。


「お願いです、義輝さん。あなたは、私にとって大切な、剣聖です。私を守るために、あなたの体を傷つけないでください。あなたの推し活は、私を輝かせますが、あなたの悲しい姿は、私を苦しめます。」


フローラは、優しく、しかし会場の誰にも聞こえるように、最後の一言を放った。


「義輝さん。私のために、元の佐々木義輝に戻ってください」


「…フローラ、さん…」


義輝の紫色の鎧が、一瞬で光を失い、元の白銀の鎧に戻った。右肩の傷から噴き出していた魔力も収束し、義輝の目には、正気が戻っていた。


義輝は、カノーの装置を指さし、静かに言った。


「カノー。推しへの愛は、金銭でも狂気でもない。推しの望みを叶えることだ。フローラさんが望んでいるのは、私たちが争うことではない」


義輝は、剣を抜き、カノーの装置を破壊した。魔力の暴走は起こらず、照明は一瞬で元のロイヤル・アクアのテーマカラーに戻った。


カノーは、義輝の復活と、推しの呼びかけの力に完敗を認め、その場に崩れ落ちた。


「ば、馬鹿な…推しの呼びかけ一つで、私の資本力が…!」


義輝は、ステージ上のフローラに深く一礼し、静かに会場を後にした。彼の推し活は、カノーの妨害を乗り越え、そして推しとの関係を一段深くしたのだ。


第17話 完

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