第12話:魔王軍デザイナーの陰謀と、勇者パーティの合流
<衣装に隠された魔王軍の意図>
剣聖ドッペルが消滅した後、仕立て屋の店内に緊張感が走る中、奥の部屋から一人の男が現れた。
その男は、全身を黒と紫のベルベットで包み、奇抜な仮面をつけている。彼の腰には、ロイヤル・アクアの新しいライブ衣装の最終デザイン画が括り付けられていた。
「ああ、なんてことだ。私の傑作の舞台が汚された」男は嘆息した。「私は魔王軍御用達のデザイナー、『闇縫いのヴァニタス』。この王都の仕立て屋は、私が魔王様のために支配した、最高のファッションアトリエだ」
義輝は即座に普通の剣を抜き構えた。「貴様!魔王軍の刺客か!フローラ様たちの衣装に、何か細工をしたな!」
ヴァニタスは優雅に笑った。「細工?いいえ。私は彼女たちに、最高の『呪いの衣装』を用意したのです。リリアさんが求める『魔力ジェル』の衣装は、着用者の魔力を徐々に吸い取り、ライブ中に彼女を衰弱させる。アリスさんが求める『無垢な歯車』の衣装は、ライブ中に制御不能な高速回転を始め、彼女を物理的に拘束する」
ヴァニタスはデザイン画を広げた。「私の真の目的は、フローラさんを拉致することではない。勇者パーティの士気低下を狙い、アイドルグループ『ロイヤル・アクア』を、ファンが見守る前で公開崩壊させることです!」
フローラたちは、自分たちの衣装にそんな恐ろしい仕掛けが施されていたことに、顔面蒼白になった。
<義輝とカノー、衣装を巡る対立>
「やはり、魔王軍は推し活の邪魔をする!」義輝は怒りに震えた。「貴様のような非人道的なデザイナーは、私の推し活の敵だ!」
しかし、ヴァニタスは冷静だった。「剣聖殿。その衣装に使われている素材こそ、貴方が地下迷宮から持ち帰った、あのブレス・トードのジェルとミミックの歯車です。つまり、貴方自身が、この陰謀に加担していたのですよ」
義輝は言葉を失った。彼の純粋な推し活が、結果として魔王軍の計画の最終段階を完成させてしまったのだ。
「馬鹿な…私が、推しを傷つけることに…」
その時、カノーが前に出た。
「貴様、ヴァニタス!私の資金力で、貴様よりも最高の衣装を彼女たちに用意してやる!推しへの貢献は、貴様のような悪趣味な芸術家風情に汚されていいものではない!」
カノーは、資金力でヴァニタスを買収しようとした。しかし、ヴァニタスはそれを拒否した。
「推し活は、愛の戦いです。私のデザイン哲学は、魔王軍の絶対的な征服の美学。貴様の薄っぺらな金銭的な愛では、私の芸術には勝てない」
<勇者パーティ、王都に乗り込む>
義輝が、ヴァニタスとの戦闘を始めようとした瞬間、仕立て屋のドアが勢いよく開け放たれた。
「義輝!いい加減にしろ!貴様の神剣は私たちが持っているんだぞ!世界の命運を、このアイドルの護衛なんかで遅らせるな!」
そこに立っていたのは、勇者レオンと聖女シズクだった。レオンは、義輝の神剣を腰に携えており、怒りに顔を紅潮させている。
「レオン、シズク!見ての通り、私はフローラ様たちの安全を守るという、新たな、そしてより重要な使命を得たのだ!このデザイナーは魔王軍の刺客だ!」
シズクは、仕立て屋の惨状と、義輝の前に立つ怪しいデザイナーを見て、状況を把握した。
「義輝の行動は極端だけど…彼が魔王軍の刺客と戦っているのは事実よ、レオン。それに、フローラさんたちの衣装に仕掛けがされているなら、これは放置できないわ!」
レオンは、義輝の推し活への異常な執着に呆れつつも、眼前の魔王軍の刺客を見過ごすことはできなかった。
「チッ、わかった!一時的な共闘だぞ、義輝。さっさとこのデザイナーを片付けて、神剣を受け取って魔王城に戻るんだ!」
ヴァニタスは、勇者パーティの合流を見て、余裕の笑みを浮かべた。
「ふふふ。これで舞台は整った。剣聖、勇者、そして金銭狂の貴族。貴方たち全員を、私の最高のファッションアトリエで、醜く敗北させて差し上げましょう!」
義輝は、レオンに神剣を預けているため、未だに手元にあるのは普通の剣だけだ。彼は、推しを守るために、レオン、シズク、そして一時的に協力するカノーと共に、魔王軍の刺客ヴァニタスとの最終決戦に挑む。
「レオン、シズク!カノー!この戦いは、世界の平和のためではない!推し活の秩序を守るための、聖戦だ!」
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第12話 完




