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第五話 仲間たちの最後

 第一の犠牲者はガレンだった。彼女はベッドごと斬り裂かれ一太刀のもと絶命した。処された理由は、下着姿で僕をベッドに誘った罪らしい。


 思い当たる節があった。


 ガレンは人一番逞しい女性で誰よりも力強く勇敢な戦士だった。だが、そんな彼女にも弱点はあった。それは酒類全般だ。酒の匂いだけで顔が赤くなる、一口飲んだだけで酩酊状態になるほど弱かった。


 そんな彼女がある日、レンフィーが注文した酒を水と間違って飲んだことがあった。


 案の定一発アウトとなったガレンを仲間たちと協力して、部屋まで連れて行きベッドに寝かしつけた。夜が更けるまで仲間二人がどんちゃん騒ぎをする中、脱落したツヴァルは部屋に戻ることにした。その際に様子見ついでにガレンの部屋に向かった。暑かったのかガレンは部屋着の脱ぎ捨てて下着一丁で布団を蹴飛ばし眠っていた。


 ツヴァルが「またかよ」とボヤキながら布団をかけ直そうと、ベッドに近づいた時だった。

 寝ぼけたガレンがツヴァルの首に手を回して抱き寄せた。

 ガッチリとヘッドロックが決まり気絶寸前のツヴァルと頬ずりし寝言を言うガレン。


 きっとあの聖剣はこの光景を目の当たりにしたことで処する決意をしたのだろう。

 何とか振り解きツヴァルが自室に戻って就寝した後に静かに刑は執行された。




 第二の犠牲者はイエルだった。彼女は落石の下敷きになり圧し潰されて命を落とした。処された理由は、僕の家族になろうとした罪らしい。


 これはすぐにピンときた。


 イエルは両親の奪った魔物に強い恨みを抱く天才魔術師だった。そのため幼いうちに両親が流行り病で亡くなり、祖父に育てられたツヴァルとは自然とすぐに仲良くなった。


 実の兄妹のように呼び合うほど親密になったある日、イエルは今後の命運を左右するある言動をとった。


 町長の依頼で廃城に棲みついている魔物を倒しに行く道中で、彼女はツヴァルに向かって微笑み『妹ってのもありかもね』と口にした。棲みついた魔物は夜な夜な親や兄妹、恋人に化けて道行く人間を廃城に誘い出して襲う。珍しいタイプの魔物だったこともあり、身内ネタとしてイエルは冗談のつもりでそう言った。


 これがエタニティの逆鱗に触れてしまったらしい。


 無事魔物を退治して町に帰る際、行きとは異なる道で帰ることになった。聖剣から近道だと言われた勇者一行は、その助言に従い峡谷を通ることにした。


 峡谷も残り半分に差し掛かった時だった。地震が発生し一部脆くなっていた岸壁が崩れて落下してきた。

 ツヴァルたちは声を掛け合って急いで峡谷を抜けたが、この時にはもうイエルは声を出すことも走ることもできなくなっていた。


 ツヴァルが落石に気取られた一瞬の隙に聖剣はイエルの喉とアキレス腱を斬っていた。

 振り向いた時にはもう峡谷は瓦礫により通れなくなっていた。




 第三の犠牲者がレンフィーだった。彼女は吊り橋から真っ逆さまに奈落へ落ちて亡くなった。処された理由は、僕に口づけをしたことらしい。


 全くもって記憶になかった。


 レンフィーは孤児院を経営している心優しき治癒師だった。誰にでも優しく接し眼差しは常に慈愛に満ちていた。孤児となったイエルにとって、その孤児院は第二の故郷であり彼女は第二の母親のような存在だった。


 女神の彼女にも欠点はあった。それは大の酒好きだったことだ。どんな相手だろうと彼女は一度たりとも負けたことがない正真正銘の蟒蛇(うわばみ)


 ある日、珍しいお酒を手に入れた彼女は、酒瓶片手に吊り橋を渡っていた。鼻歌交じりに肌身離さず持ち歩く彼女に禍が起こった。


 元から足場が不安定だったこともあり、彼女は床板を踏み外してよろけた際に酒瓶を落としてしまった。

 絶望しその場でへたり込む彼女を励まそうと、ツヴァルが肩に触れて声をかけた。

 反射的に振り向いたレンフィーの口がツヴァルの頬に触れてしまった。


 偶然とはいえ最もしてはいけない行為を聖剣の前でしてしまった。


 先行するツヴァルが渡り切った直後に吊り橋は崩落した。支柱から伸びたロープは斬られていた。異質なまでに綺麗な切断面を残して、誰による犯行かを物語っていた。


 それでも最後までツヴァルが気づくことはなかった。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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