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馬防柵

 夜が白み始めた頃、金窪城に北条氏規が到着。


北条氏規「殿。味方同士で派手にやり合いましたね。」

北条氏直「……滝川の野郎!絶対許さぬ!!」

北条氏規「せめてもの救いは……。」


 この混乱に乗じ、敵がいくさを仕掛けて来なかった事。


北条氏規「もし滝川一益が勝負に出て来たら、今頃殿はどうなっていたか……。」

北条氏直「……。」

北条氏規「棄て城にこれだけ仕掛けて来た連中です。一時の怒りで妄動してはなりませぬぞ。」

北条氏直「……わかった。肝に銘じる。」


 そこに……。


北条氏邦「殿。御無事で何よりであります。」

北条氏規「兄上。お疲れ様。敵に変わった動きは見られましたか?」

北条氏邦「こちら側に敵は居ない。ただ対岸の様子を確認した所……。」

北条氏規「敵が集まっていましたか?」

北条氏邦「そこまで見通す事は出来なかった。しかし昨日までは無かった物が拵えられていた。」

北条氏規「と言われますと?」

北条氏邦「柵だ。それも長い距離に渡って構築されていた。」

北条氏照「やっと落ち着かせる事が出来たわ。氏邦に氏規も来ていたか。柵と言う言葉が聞こえて来たが……。」

北条氏邦「えぇ。あの様子を見る限り、敵は我らの事を恐れていると見て間違いありません。」

北条氏照「そうなると奴はこちらで戦おうとは考えていないな。」

北条氏邦「はい。こちらを挑発し、川を渡って来た所を狙い撃ちしようと。」

北条氏直「(……滝川の野郎……。)」

北条氏規「持久戦に持ち込まれて困るのは向こうであります。今は暫し辛抱であります。」

北条氏照「ただその柵について何だが。」

北条氏邦「何か気になる点でもありましたか?」

北条氏照「ここ金窪の対岸の柵が、所々切れているのが気になる。私や氏邦の陣の対岸はしっかりしているのに対し、金窪と相対すべき柵が余りにも脆弱で不備が多い……。」

北条氏規「殿を挑発しているのかも知れません。ここは辛抱でありますよ。」


 そこへ……。


伝令「申し上げます!対岸より敵兵!柵の前に進み、こちらへ向かっています!!」

北条氏照「旗印は!?」

伝令「丸に竪木瓜!滝川一益であります!!」

北条氏邦「挑発か?それともここを勝負と見たか?」

北条氏規「挑発であれば動く必要はありません。突っ込んで来るのであれば、殿を囮に奥深くに引き込んでやりましょう。上野勢への調略は済んでいます。滝川に続く者は居ません。」

北条氏邦「殿。負けたふり。お願いする事は出来ますか?」

北条氏直「今までの屈辱を考えれば造作も無い事。」

北条氏照「滝川を葬るは今ぞ!皆の者!油断無きよう!」

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