もぬけの
金窪城落城の報告を受けた北条軍は進軍を速めたい所でありましたが……。
北条氏照「滝川一益自らが兵を率い、川を渡って来たのか?」
北条氏邦「はい。」
北条氏規「一益は確か沼田城に居たはずでは?」
北条氏邦「いえ。間違い無く一益本人でありました。」
北条氏照「藤田に送った我らの書状が、一益の下に届けられたに違いないな。」
北条氏邦「はい。私の手勢だけで追い返す事は出来ませんでした。申し訳ない。」
北条氏照「……仕方無い。金窪の備えで一益本隊を破る事は難しい。ところで一益は今何処に居る?」
北条氏邦「周囲を探らせていますが、金窪から動いていない模様であります。」
北条氏照「一益は動き出したら速い。監視を緩めぬよう。」
北条氏邦「わかりました。」
北条氏照「引き続き二手に別れ金窪を目指す事にする。相手は一益。何処から飛び出して来るかわからぬ。隊が間延びせぬよう兵を進める事。」
「御意。」
北条軍は滝川一益の奇襲に備え、慎重に兵を進め金窪城周辺に着陣。ここまで滝川一益の攻撃は無し。城の様子を伺うも反応は無し。もしかすると……。
伝令「申し上げます。金窪城。もぬけの殻であります。」
戻って沼田城。
矢沢頼綱「確かに兵の数では北条に分がある。しかし長らく彼らはいくさと言うものを経験していない。謙信が最後に関東に入ったのは8年前。その後、武田といくさを繰り広げて来たが……うちが負けた事は?」
真田昌幸「ありませんでした。」
矢沢頼綱「3ヶ月前のいくさにしても北条は、ただ兵を進めたに過ぎぬ。百戦錬磨の。それも斬り込み隊長とのいくさに勝つどころか体験すらしていないのが現状である。そんな奴らが、滝川様相手に正面から激突するとは到底考える事は出来ぬ。」
真田昌幸「確かに。」
矢沢頼綱「その間隙を狙って兵を収める事は可能。後は倉賀野次第。倉賀野の意志。もしくは説得に失敗し、彼独りで金窪を守る事になった場合。上野の衆は誰も動かぬ。いくさの経過を見守り、寄りかかるべき大木を選べば良い。」
真田昌幸「はい。」
矢沢頼綱「もし倉賀野が滝川様の説得に成功し、金窪からの退去を決断したのであれば我らも含め総力で以て彼らの退却を支援。上野でのいくさに全面を協力する。この事は……。」
真田昌幸「小幡に保科。そして内藤に同意を取り付けます。」
矢沢頼綱「頼むぞ。」
真田昌幸「はい。それでありましたら……。」
矢沢頼綱「どうした?何か不足に思う事があるのか?」
真田昌幸「いえ。……何もありません。」




