交渉役
滝川益重了解の下、真田昌幸は藤田信吉に対し現況を伝えると同時に会見を要望。不利な状況を察した藤田は受諾。これを受け真田昌幸が派遣したのが……。
藤田信吉「敵陣只中への御足労。御礼申し上げます。」
矢沢頼綱「なぁに。わしは既に隠居の身。どうなろうとも態勢に影響は無い。何なりと致せ。」
藤田信吉「いえ。そのつもりは御座いません。」
矢沢頼綱「藤田殿。……後1週間遅かったら、此度の謀叛。……成功したかも知れぬな。」
藤田信吉「と言われますと?」
矢沢頼綱「北条が兵を集めている。小幡の情報だと来週には上野に侵入するとの事。さすれば滝川様の軍勢はここに来る事は出来なかった。藤田殿の相手は……沼田に居る益重様と真田のみであった……。」
藤田信吉「えっ!?」
矢沢頼綱「素直で宜しい。其方が北条の手に落ちたわけでは無い事がわかって安堵している。其方を誑かしたのは上杉景勝。間違い無いな?」
藤田信吉「……。」
矢沢頼綱「先に言っておくが上杉は其方を救いに来る事は無い。景勝は今、春日山で手一杯である。其方が首尾よく沼田を奪う事が出来ても状況は同じである。
『現地の事は現地に詳しい者に任せる。』
と言って終わりであろう。其方は孤立無援の状況の中、滝川か北条に攻め込まれる事になる。滅亡する時期が変わるだけに過ぎぬ。」
藤田信吉「……。」
矢沢頼綱「この事は川中島で既に証明されている。川中島に森長可が入るや否や、上杉の調略に乗った川中島の国衆が反旗を翻した。これに対し森は反撃し鎮圧。その間、上杉は何もしていない。」
藤田信吉「……。」
矢沢頼綱「このままでは藤田殿も同じ末路を辿る事になってしまう。藤田殿は滝川を裏切った。これは許される行為では無い。しかし其方は我ら真田と共に沼田を守り抜いた間柄。何とかする事は出来ないか?しかしここに留まる事は難しいし、其方も……。」
藤田信吉「失敗した以上、残る事は出来ぬ。」
矢沢頼綱「覚悟を持っての行動であった?」
藤田信吉「……無念である。」
矢沢頼綱「……わかった。今、其方を欲している人物が1人居る。」
藤田信吉「と言われますと?」
矢沢頼綱「お前を誘った張本人。上杉景勝だ。」
藤田信吉「戯言は止めて下され!私は景勝の指示である沼田攻略を実現させる事が出来なかった。上野に居場所を失った者である。斯様な者を景勝が必要であるはずは無い。かくなる上はここで潔く戦うまでである!!」
矢沢頼綱「藤田殿。」
藤田信吉「まだ何かありますか?」
矢沢頼綱「……だから良いんだよ。」




