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短編集【ヒューマンドラマ・現代】

そしていつかそこへ帰る

作者: ポン酢
掲載日:2023/06/19

子供の頃、クラシックが好きじゃなかった。


別に嫌いだった訳じゃない。

でも好きか嫌いかと聞かれたら、別に好きじゃなかった。


でも何故かよくクラシックコンサートに連れて行かれた。


別に好きじゃなかった。

よく眠れた。

(そして怒られた。)


子供の頃、楽器を習っていた。

どうしても興味があって、無理を言った気がする。


でも、クラシックは別に好きじゃなかった。


音を出せる事と弾けること、奏でられることに違いがある事を知った。


そして自分は奏でられないのだと、歌う事はできないのだと知った。



クラシックは別に好きじゃなかった。

だからそれを知った時、私の足はそこから離れて行った。



別に嫌いだった訳じゃない。

好きか嫌いかで言えば、別に好きじゃなかったというだけ。



けれど……。



大人になって、ふと気づいた。


ああ、別に嫌いじゃなったんだなと。

好きか嫌いかで言えば、別に好きじゃなかった。

でも嫌いじゃなった。



世の中に溢れた音。

たくさんの音。


多種多様の音楽。

あふれかえる音の世界。


そんな音の洪水に疲れた時、ふと、耳にすんなり入った音がある。



あの楽器の音色。

奏でられなかったあの歌声。



別にクラシックが好きな訳じゃない。



でも耳は覚えているんだ。

その歌声を。



別にクラシックが好きな訳じゃない。



でも、少しだけ何でクラシックが廃れないのかわかった気がした。


失恋した恋を思い返すように。

その音色にそっと寄り添う。


歳を食った分、思い出はいつでも物悲しくも美しい。

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