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短編集【ヒューマンドラマ・現代】

そしていつかそこへ帰る

作者: ポン酢

子供の頃、クラシックが好きじゃなかった。


別に嫌いだった訳じゃない。

でも好きか嫌いかと聞かれたら、別に好きじゃなかった。


でも何故かよくクラシックコンサートに連れて行かれた。


別に好きじゃなかった。

よく眠れた。

(そして怒られた。)


子供の頃、楽器を習っていた。

どうしても興味があって、無理を言った気がする。


でも、クラシックは別に好きじゃなかった。


音を出せる事と弾けること、奏でられることに違いがある事を知った。


そして自分は奏でられないのだと、歌う事はできないのだと知った。



クラシックは別に好きじゃなかった。

だからそれを知った時、私の足はそこから離れて行った。



別に嫌いだった訳じゃない。

好きか嫌いかで言えば、別に好きじゃなかったというだけ。



けれど……。



大人になって、ふと気づいた。


ああ、別に嫌いじゃなったんだなと。

好きか嫌いかで言えば、別に好きじゃなかった。

でも嫌いじゃなった。



世の中に溢れた音。

たくさんの音。


多種多様の音楽。

あふれかえる音の世界。


そんな音の洪水に疲れた時、ふと、耳にすんなり入った音がある。



あの楽器の音色。

奏でられなかったあの歌声。



別にクラシックが好きな訳じゃない。



でも耳は覚えているんだ。

その歌声を。



別にクラシックが好きな訳じゃない。



でも、少しだけ何でクラシックが廃れないのかわかった気がした。


失恋した恋を思い返すように。

その音色にそっと寄り添う。


歳を食った分、思い出はいつでも物悲しくも美しい。

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