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処刑

数日後の朝に目覚めると、俺は何人もの看守に取り囲まれていた。


いかにも厳重体制というように、全員が鎧と剣を武装している。


「ついてこい!」


言われなくても、手錠から伸びた鎖を持たれているので逃げることなんてできない。


大きな扉の前に着く。


扉の開いた先には、たくさんの傍観者たちが四角に並んでいた。

おそらくこの近隣に住んでいる村人だろう。

全員、俺を恐怖と好奇心の混ざった目で見ている。


その中に、両親とそっくりの人間二人を見つけた。

驚いて目が離せないでいると、その二人はゴミを見たかのように目を逸らす。


あいつらは、この世界でも俺を捨てたんだと気づいた。


そして、その四角の中心には、十字架が置かれていた。


看守たちが俺を持ち上げてそれに磔にしようとする。

抵抗しようとするも、手錠と足枷があっては抜け出すことなんて不可能であった。


俺が完全に十字架に張り付いて宙に浮いた時、扉から一人の貫禄のある老人が入ってきた。

推測だが、村の長か裁判長だとかそういう役職だろう。


「お前が、悪魔の子、ステラ・サクリじゃな?」


ここで、自分の名前が順番こそ変われど転生しても変わっていないことを初めて知る。

こんな名前、捨ててしまいたかったのに。


「…名前は合っている。でも、俺は決して悪魔の子なんかじゃない!」


「嘘を吐くな!お前が悪魔を宿しているというのは占い師の力で全て知っている!」


悪魔だとか占い師だとか、そんな迷信みたいなものを当たり前のように信じて人に話せるのがバカバカしい。

それに、俺をここまで運んできた看守も装備が鎧と剣だったが、普通は銃を持ってくるだろう。

まるで、時代が一回り逆行したようだ。


「占いなんて非科学的なもんを誰が信じるか!」


「カガクだかなんだか知らんが、まだシラを切るというのか!」

「ならば、その口から自分は悪魔の子だと吐かせてから処刑してやる!」


そういうと、老人は一本の槍を取り出した。


それを俺のほうに突き立てると、結びつけられて開かれた俺の左手に先端を思いっきり差し込んだ。


「がぁっ………!」


突然の強い痛みに俺はあえぐ。

しかし、こんな不条理には絶対に負けたくなかった。

俺は口を絶対に開かない決意をし、歯を食いしばって痛みに耐える。


「生意気なやつめ!!」


「ぐぅ………っ!」


今度は右手に槍が突き立てられる。


ドクドクと血が流れ出す感覚が手のひらを伝う。

俺は折れずに老人をきっと睨みつけた。


「その憎たらしい目をほじくり出してやる!!」


老人は俺の左目のまぶたに槍の刃先を持ってくる。


このまま、俺の目は無くなってしまうのか。

こんな訳もわからないまま磔にされて、全身をぐちゃぐちゃにされてから殺されないといけないのか。

そんなのは絶対におかしい。俺は間違っていないはずなのに。何もしていないのに。


今まさに槍を俺に向けている老人も、

ここに俺を無理やり連れてきた奴らも、

周りで愉快そうに俺を嘲笑う観衆たちも!


全員、殺してしまいたい。


そのためなら左目ぐらいはくれてやる!


許せない許せない許せない許せない…!


そう思った。

その刹那、その瞬間だった。



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