悪魔の子
意識を取り戻して顔を上げると、目の前には鉄格子があった。
俺は死んだはずだ。それなのにどうして今こうして生きている?
それに、なんで牢屋に入れられているんだ?
体を見ると、衣服も剥ぎ取られて
腰回りを布で覆われているだけの姿にされていた。
しばらく考えこんで、ようやく理解する。
おそらく、自分は「転生」してしまったのだろう。
しかし、こういう転生というものは何かと自分に都合のいいところに生まれ変わるものではないのか。
何もできずに座り込んでいると、看守らしき人間が近付いてきた。
「ようやく目覚めたか。」
「おい!こんなところに閉じ込めてないで俺を出せ!」
気づけば叫んでいた。
間違いなく不当に自分は監禁されている。
自分の人生を振り返っても鎖に繋がれるほどの罪になるようなことは何一つしていない。
「何を言っている?自分が何者か忘れたのか?」
「は?俺はただの人間で……」
「黙れ!悪魔の子が!」
看守は手に持った細長い棒で俺の頭を叩きつける。
俺は鉄格子から離れて牢屋の奥に逃げ込む。
「悪魔の子だって……?」
「そうだ!忘れたのか?お前は悪魔の力を持ったこの村の邪魔者だろう!」
いったい何のことを言っているのかわからない。
そんな悪魔の力など俺の体にあるようには感じられない。
「処刑までのあと少しの命を惜しんで泣いてりゃいいさ!」
そう言うと看守は俺と関わりたくもないというように早足で去っていった。
看守は確かに言った。「処刑」という言葉を。
きっと口ぶりから察するに、俺は数日後にも処刑されてしまうのだろう。
なぜ生まれ変わった先ですらこんな扱いを受けなければいけないのか。
嘆いているうちに、処刑の日はすぐにやってくるのであった…