姉VS妹
あの後昼ごはんを食べてまたログインしてきた。何でもギルドみんなで集まって作戦会議するんだって〜。 それで今は新しくコライユに建ったギルドハウスに来たんだけどーーーーーー。
「広すぎて何がなにやらわからん!」
『大きいですね』
そう。そうなんだよ!! ここのギルドハウスロビー自体がめちゃくちゃ大きくてちょっと怖い!! そして今は人ーーーギルドメンバーがいっぱいいるからコライユじゃないみたいだ
「メルちゃん達も着いてきたけど大丈夫なの?」
「ん。問題ない」
「はいっ!ブリザードも再確認出来ましたので!」
「イノリがいるからね〜ボクもついてくよ〜?」
「祈とメルティさんたちは一緒の方が楽しそうですからね」
あらそうなの? 確かに私は皆といると楽しいしそっちの方がいいけど強制はしてないしね〜。あくまでも妹たちには自主的に動いて欲しいよね。 これが姉たる私の姉道!!!
「お義姉様が出てこられましたね」
「何気に初めてかもね。 みんなの前でちゃんとギルドマスターをやってるおねぇの姿見るの」
「普段からお義姉様はギルドマスターをしていらっしゃいますよ? 祈が知らないだけでは?」
「そういわれればそうかも? 私は基本この子たちとナビちゃんのアトリエに居てギルドハウスにはあんまりいないもんね〜?」
「ん」
「はいっ!」
「ね〜」
ふふふふふ...妹たちは分かっているのだ!! ナビちゃんのアトリエこそ我が家だと!!! そしてあそこは私の嫁がいるところなのだと!!
『と、言うわけで妹とシミュレーションルームで対決しよう。 それでとやかく言う者もいないだろう?』
「んえっ?」
____【シュミレーションルーム】____
「ええっと...?」
「聞いていなかったのか?旗手はてっきり私やかるび、ショウ辺りだとギルドメンバーは思っていたそうだが、新参者の祈だということで少し、な?」
「なるほど。 つまり、最近入ったばっかりの私じゃ不安ってことか」
「そう捉えてもらって構わないな。 確かに私たちだけしか祈の強さは知らないからな。錬金術士は戦闘職じゃないから不安がる気持ちもわからんでもない」
「だから観戦ができるように設定したシュミレーションルームで1VS1を...さすがに私には荷が重いのでは?」
「万が一祈が負けても私が守ると言えば大丈夫だろう。安心して私に任せろ。 ここで私が手を抜くとほかのメンバーに示しがつかないからな」
なんか私が負ける前提で話が進んでない? そりゃぁ戦闘職に比べたら私は弱いと思うけどさ、それに私はここで負ける訳には行かないんだよね。 だってここで姉に負けたらギルドメンバーにも姉がギルマスだからサブマスになった妹としてレッテルを貼られるわけでしょ?そんなのはごめんだね。
そして私の妹たちが姉と戦うときまったときに応援してくれてた。 私の評判が悪いとあの子たちの評判も悪くなりそうだしね? ここはいっちょ姉として少し頑張ってみますか!!!
「それに...私を応援してくれてる人たちの期待も裏切りたくないしね」
「準備はいいか? 私は全力で行く。ギルドメンバーも見ているがそんなことは考えなくてもいい。 できれば私を倒して欲しいが...」
「そんなこと言ってられるのも今のうちだよ?私にも負けられない理由があるからね」
「ほう?ならばギルドマスターとして、姉としてお前の全力を受け止めてやろう。こいっ!!」
もし、ここで負けても何かが失われる訳じゃないけどーーーーー。
あーちゃんが少し情報をくれたけど、最高司祭は恐らく姉よりも強いはず。 姉には申し訳ないけど姉を1人でも倒せないようじゃ今回のイベントでメルちゃんたちがやられてしまう可能性がグンと上がる気がするんだよね。 私にも何かがあるならば試したい。あの子たちを守れるだけの強さは持っていたい。そしてあーちゃん、クリスマッマやコライユの人たちの期待も背負ってる... ギルドメンバーにコネでサブマスになったと言われ続けるのも嫌だしね?ここは錬禁術士としても踏ん張り所っぽいしね。
「ーーーッ!!!」
「やっぱり?おねぇならそう来ると思ってたんだよね」
『イノリが【左回りの天文時計】を使用しました!!!時が巻き戻ります!!!』
「!?」
「ね?私も本気で行かせてもらうよ...おねぇ!」
姉は奇襲やからめ手が得意な職業だ。 故に初手で油断させておいて瞬間移動系などのスキルで距離を詰めて一瞬で片をつけると思ってたんだ。 私の読み通りだね? 私だって伊達に妹やってないからね。姉の思考は多少なら読めるようにもなるもんさ!!
「ほいっ!!」
『イノリが【投擲爆弾】を使用しました!!!』
「あれを防がれるとはな」
「ダメかぁーーー!!!」
姉は爆弾を避けたのかな?ピンピンしてるしログにも攻撃を受けたって書いてないしそうっぽいね。 でも、なんで今ので無傷なんだろう? 絶対に当たったと思ったのになぁ
「私も少し妹を舐めていたようだ。 錬金術士は何のアイテムを使ってくるか予想がつかない故に戦いにくいな」
「ふんっ!私だっておねぇに対抗できるんだよ!?」
「ならばーーーーーこればどうする?」
『アネがクナイを投擲しました!!!』
「前に見た爆発する札付きのクナイだねっ!それはもうみたっ!!」
これは攻撃でありながらも目くらましにもなるからクナイを防いでも姉がどこからともなく忍び寄ってる可能性も考慮しないとまずいかもね... ならば!!
『アネの攻撃を防ぎました!!!』
「ッ!?」
「今っ!!とどけぇぇ!!」
『イノリが武器を投擲しました!!!』
『アネに1237ダメージ!!!右手を切断しました!!!』
「クッ…油断したか。 剣を投げるだけでも部位殺しか...なるほど。 やられると相当なものだな。 しかし何故盾で防ぎながらロングソードも扱える?」
ふん!どうだ!?ナビちゃん直伝の操具術は? それにしても盾を投げて当てさえすればクナイの軌道も変えれたね。 その間に敵を追尾するネズミ爆弾を放って姉の位置も確認済みだ。 あとは私がロングソードを複数投げれば姉に攻撃が通るという仕組みだ。 これこそ錬禁術士の戦い方だ!!!
「私も1発で部位殺しになるとは予想外だったけどね?」
「言う気は無いか...ならば早期決戦だな。 長丁場になると私が不利になる一方だ。 いくぞ」
『アネがポーションで回復しました!!!』
「ポーションの存在忘れてた!!やべっ!?」
『アネが【影縫い】を発動、イノリが拘束されました!!!』
「これで終わりだ」
『アネが【暗殺者の手】を発動、影縫いの効果がきれました!!!イノリがーーーーイノリの加護が発動、ダメージを受けません!!!』
「っ!」
「かかったね!?」
『イノリがアネに37ダメージを与えました!!!』
うそーーん!?私の攻撃力低すぎーー!? 何か仕掛けてくると思ったけど恐らく複数回の攻撃じゃなくて1発が大きいダメージのスキルを撃ってくると思ったんだよね。 私には加護があるからそれなら耐えれて尚且つ、気の緩んだ所に反撃を加えれる。 それを狙ったんだけど...私には攻撃力があんまりなくてこれはまずったかなぁ。
「そうか、それもあったな。 私としたことが妹を相手にするとこうも気を乱されるとは」
「何を言ってんのさ?さっきからいつものおねぇじゃん! 別に気を乱すようなスキルとか使ってないんだけどねっ!」
『イノリが【投擲爆弾】を使用しました!!!アネに348ダメージ!!!』
「爆弾だけか?こちらも部位殺しというバッドステータスであまり時間が無いのでな。決め手がないなら私にもやりようがある」
チッ!バレてしまったか...。 そうだね。認めざるを得ない。 姉の言う通り私にはこれという決め手がない。確かに私は普通の錬金術士じゃなくて錬禁術士だけど、攻撃スキルなんかは持っていない。 あるのは調合や素材採集が快適になるスキルばかりであまり戦闘には向いていない。部位殺しは素材採集のついでの効果みたいなものだし?
「普通の撃ち合いならどうだ?」
「私も初日から1週間教会のクソ騎士にきたえられてきたからね!!それなりにはっ!!」
「右手がないのが辛いがっ!私も妹に負けたくないからなっ!」
私のショートソードと短剣で鍔迫り合いになってるけどーーー 姉は片方しか腕がない上にリーチが短い短剣に対して私は五体満足の体で拮抗している。 つまりこれは姉の方が格段に上だということの証明でもあるね。 どこかに罠みたいなのが仕掛けられている可能性もあるし安易に動き回ると姉にしてやられそうなので躱すのは最低限に留めないとやばいかもねっ!
「うん?」
なんだ?この違和感は...? 本気で行くと言いながら最初の方で攻撃を喰らうのか? あの姉が? でも、これは本気だとわかる...。 何かを狙っている?なんだろう?
「どうした?さっきから少し鈍くなってるぞ」
『アネがイノリに354ダメージを与えました!!!』
「ッッ!?短剣でこんなにダメージが!?」
「よそ見をすると痛い目を見るぞ?」
『アネのトラップが発動!!!霧が発生します!!!』
「やっぱり!」
これを狙ってたのかぁ。罠のスキルはあるとは聞いていたけど、どんなものなのかは不明だから気をつけてたんだけどこれは詰んだかな? 他にも色々あるっぽいし...霧で視界が良くない上に姉を見失ったから相当ピンチだね。
「いや待てよ?ネズミ爆弾は標的を追いかける...これは姉の位置を割り出せる」
アイテムボックスにあるのはーーーー。 これだ!これで罠を作動させて解除出来ればッ!!
『イノリがアイテムを投擲しました!!!』
『アネのトラップが発動します!!!』
「キタっ!!これで私は視界がひらけるまで盾を持っていれば...」
『アネがイノリに24ダメージを与えました!!!』
うそっ!?どこから!?しかも盾を持ってたけど貫通した!? やはり操具術は本職と比べると劣るっていると実感できるね。 持ってるだけだから攻撃を完全にはパリィ出来ないのか!!! ならば!
『イノリがアイテムを複数投擲しました!!!』
『アネのトラップが発動します!!!』
『アネがトラップによる自傷ダメージをうけました!!!』
「よしっ!!」
「チッ!」
「そこっ!」
『イノリがアイテムを投擲しました!!!』
「それはもう見たと言ったろう」
「本当に?」
『アネに574ダメージを与えました!!!』
「!?」
やっぱり...私の予想は正しかったみたいだね? 盾に爆弾を仕込んでみたんだ。 とは言ってもやり方はすごく単純で盾の上に爆弾を置いて投げたら謎の抑止力が働いて爆弾は落ちない。そして何かしら弾こうと攻撃を加えれば、ドカン!ということだ。 これはもしかしたら凄く悪いスキルなのかもしれないね? さっき複数のアイテムを投げた時に気がついたんだけど無我夢中に投げてたら偶然2つのアイテムを重ねて投げてたものもあったみたいでそれでピン!と来たんだよね。
「ネズミ爆弾も厄介だが、そのスキルは一体なんなんだ?本当に錬金術士なのか?」
「そうだよ?私はれっきとした錬禁術士さ!」
ふふふ...気づいているかな?我が姉は。 盾を弾いてる時に上に隙を見て投げていた複数の爆弾が自身の上から降ってくることに...
「こちらもっ...」
『投擲爆弾が爆発連鎖!!!威力と範囲が倍増します!!!』
『アネのHPが1になりました!!!』
『勝者はイノリです!!!』
勝っちゃった...?ホントに?戦闘職に生産職が?
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「ねぇね強かった」
「はいっ!アンノウン様みたいでとても素敵でしたっ!」
「さすがイノリだね!とってもかっこよかったよ!」
「ふへへへそれほどでも?」
「少し油断しすぎたな...スキルの詳細を知りたくて会話をしている場合ではなかったな」
「おねぇも強かったからねー。次やったら絶対負けそうだし?もうやりたくないね〜実の姉と殺し合いみたいたことしたくないもん」
「同意だな。私も祈相手だから無意識のうちに手加減をしていたのかもしれないな」
「私にはお義姉様が少し手加減しているように見えましたね。ほかのギルドメンバーには分からなかったようですが...」
ほーーん?まぁ、でもそこは私の姉っぽいしほかの人たちが何も言わなくなるならいいかな? 逆に姉がギルドマスターとして弱いと思われそうだけど大丈夫かなぁ?
「それなら心配ない。私の妹も強かったということで丸く収まるだろう。 これだけ強ければ今回のイベントの旗手でも皆が納得するだろう。」
「とは言っても一部だけ疑問視してただけですが...」
「え?そうなの?やる意味なかったのでは?この試合?」
「私の妹のお披露目会だからな」
本当にッッ!!この姉は!!!なんでそういう所は言ってくれないかなぁ!?
「でもさ、なんで火遁?とかいう魔法みたいなのは使わなかったの?」
「あれは印を結ばないと発動出来なくてな、片腕だと発動モーションが出来なかっただけだ」
「あぁ、いつもやってるアレって発動モーションだったんだ?なんかいつも両手を合わせて何かやってるなーとは思ってたけどさ」
「その分色々な属性攻撃が簡単に行えるからな。多少はどのスキルも代償はあるだろう?」
そうなの?私自身のスキルはあんまり代償ないんだけどぉ? 戦闘職だとそういうのが一般的なのね。だってうちの子たち何もデメリットない技しか使ってないし!
「メルティさんたちと比べるのはやめましょうね」
「だってほかの人たちのスキルとかしらないもん」
「異常に強いということだけを覚えておけばいいと思います」
そうかぁ...。メルちゃんたちはものすごく強いのね?分かった!! やはりうちの子たちは最強だってことね!!!




