フローラ
リーシェの家族の話です。
あの後マリーはリーシェの家族について説明してくれた。
「リーシェお嬢様には、父であられるご当主さまの他に、3人の兄弟がおられます」
「お母様は?」
「奥様は……。」
マリーに母のことについて尋ねてみると、なにか言いがたそうな顔をした。
小説だと、確かお母様は……
「流行病で……。三男、ルイス様が生まれて間もない頃に、お亡くなりになりました」
「そう」
マリーは母について、事細かく教えてくれた。その内容は『 リトセニア王国物語』にも書いてないことで、マリーの話に集中して聞いてしまった。何故なら、リーシェの母親については、物語序盤でなくなった為、数行しか記されてなかったからだ。
(亡くなったことは知ってたけど、どんな人物か、詳しいことは分からなかったから、正直気になるわね。)
リーシェの母の名前は、フローラ=ル=ローズバルト。
元伯爵家の3女で、社交界の白百合と呼ばれるほどに、美しい人だった。
フローラは若い頃に、リーシェの父であるゲリックと出会い、恋に落ちた。
当時というか、今だけど、貴族にしては珍しい恋愛結婚だったらしく。結婚した当初は有名な夫婦だったらしい。
そんなフローラは生まれつき体が弱く、寝込むことが多かったそうだ。だからこそ、4人目を産んだ頃には、体が限界に近かったのだろう。
結果、4人目である三男のルイスを産んだあと、当時流行っていた伝染病にかかってしまい、そのまま帰らぬ人となった。
(よくそんな体で、4人も……。それは亡くなられてもおかしくないわ。)
「私はその頃はまだ、物覚えがない頃だったので奥様については詳しく存じ上げないのですが、旦那様と、長男のヴァージル様はよく知っておられると思いますよ」
確かに、その2人ならマリーが知らないことでも知ってそうね。
2人は恋愛結婚だったらしいし、あのお父様だったら、お母様の肖像画の1つや2つ持っていると思うのよね。頼んだら見せてくれるかな?その時にお母様について尋ねるのも悪くないかもしれない。
「お母様はお美しい人だったのね」
「社交界では白百合とまで言われていたお方ですから。お嬢様の髪は旦那様譲りですが、瞳の色はきっと奥様に似たのですかね」
確かに、リーシェの瞳の色が水色なのに対し、お父様の瞳の色は灰色だ。
この瞳はお母様から貰ったもの……
私はリーシェではないけれど、お母様と繋がりがあるというのは、なんだか嬉しい。
「マリー、私の兄弟はどんな人なの?」
「若様達のことですね」
やはり、マリーと年が近いからか、お母様のことを話す時より、声のトーンが高くなった。
それにしても、マリーはあの3人を若様なんて呼んでるんだ。
(なんだか、可愛い!!)
「まずはご長男のヴァージル様からご説明しますね!!」
「ええ、よろしく」
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