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2 ダイとアン1

R15表現あり。

「ばあさん、調子はどうだい」


ダイがギルドの依頼完了証を手にエンシェントドラゴンの家の扉を開けると、すざまじいいびきが聞こえてきた。

見ると、昨日置いて帰った葡萄酒の大樽が3つ、空っぽになって転がっている。


「風邪ひくぜ」

ダイが声をかけると、エンシェントドラゴンは薄目を空け、ふんと鼻を鳴らすとまた眠り始めた。


ばあさんは最近ギルドに「ショタオタを探せ」という常時依頼を出している。「ショタオタ」というのは、ダイの本名大田翔太のことだろう。

ダイとしては、少年好きととられそうな呼び方は不本意だったが、ゴリポリのギルドで依頼を受ければすぐエンシェントドラゴンの家に入るのに必要な完了証が手に入るので重宝していた。


ダイは、手持ち無沙汰な感じで椅子に座ると、大人の背丈よりもでかい水晶玉の起動スイッチを押した。魔法の水晶玉は白く光った後、近くの森の映像を映し出した。


画面には、テントの中らしき場所で、ツチャビッチ・ミトロヒナが、乱れた布団の上で、あられもないかっこうで白目をむいて倒れている姿が映っている。

少し離れたところで、騎士見習いの稽古着を着たボリス・サハロフが、座りこんで剣を磨いている。


ダイは、ミトロヒナ嬢の腹や乳房が微かに上下しているのを見て、「生きているようだ」とつぶやいた。一瞬、《エロっ!》と言って女の体に見入ってしまったことも、(下も髪と同じ色か)と思ったことも秘密だ。


「こいつら、いったい何がしたいんだ」


ダイはばあさんから聞いた話を思い出しながらつぶやいた。

4日前から、二人は、ばあさんのなわばりに入り込み、ドラゴン笛を吹き鳴らし歩き回っている。

ドラゴン笛というのは、人間には聞こえないが、ドラゴンには聞こえる音を鳴らす笛で、ばあさんによると「その音を聞くと、ぞわっとする」らしい。


そのうち、男が積極的に女にちょっかいをかけはじめた。

女は嫌だと言っていたが、男は、「そんなに恥ずかしがるなよ」、「照れなくていい」、「もう我慢できない」と言い、行動をエスカレートさせていった。


昨夜、何があったのかは知らないが、ドラゴンのなわばりで昼前まで寝ているとはのんきな話だ。


ドラゴン笛を吹くのはドラゴンを呼び寄せたいからかもしれない。

しかし、二人の装備は、ドラゴンに立ち向かうには全く足りないし、途中でイチャつくとか、ほんと、何をしたいのかわからない。


「あたしの宝狙いだろ。あそこらへんは、前、あたしが宝物を隠したところだもの」

ダイの独り言に、ばあさんが答えた。


「そうだっけ」


「そうだよ、どこに隠したのかわからなくなって、あんたが取ってきてくれたじゃないか」


ダイは、テントの周りに転移できるかを確認して言った。

「いや、俺が取りに行ったのはあそこじゃないよ」


「そうかい。あちこちに宝物を隠したから、よくわかんないよ」


「やれやれ、国宝級のアーティファクトを適当に埋めるなよ」


「ふん、あたしの宝物はあたしのもんだ。どんな欠片も渡す気がしないよ」


「道具は使ってこそ、だぜ」


「言われなくても使うさ!ほら!」とばあさんは、ダイに角笛を見せた。


「ドラゴン笛を見ていて思い出したんだ。

これを吹くと、世界創造時に生まれた7頭のエンシェントドラゴンを全て呼び寄せることができるんだよ。あたしの番も這ってでも来るよ!」


「やめて、ばあさん、多分それ使うと世界終わるからやめて」


「だって、水星の杖を使えるようになったから、けがを治してやりたいのに、あいつはどこにいるかも連絡してこないんだよ!」


「わかる、気持ちはわかる。だから、こう、もう少し、穏当な道具はないのか?

だいたいの場所が分かれば、俺がばあさんのために番さんを必ず探し出すから」


「だいたい、あの人間たちは何なのさ。こっちは番が行方不明なのに人のなわばりでいちゃいちゃいちゃいちゃしやがって、ほんと腹が立つよ!」


「俺、よかったら、ばあさんのアイテムを全部調べて、その番さんに連絡取れそうなアイテム探すよ。

ばあさんが隠していたアイテムを調べて、棚を作って整理しただろ、あんな感じで。

前からこの洞窟に転がっているアイテムも整理しなきゃって思っていたから、ちょうどいい。


どう?とりあえず、その角笛も調べて片づけるから貸して」


ダイは、ばあさんの了承を得て角笛をアイテムボックスにしまい、アイテム説明に「最後の角笛/世界の終わりを告げる戦いの到来を告げる笛」と書いてあるのを確認すると、少し涙目になった。


「これなんかどうだろう、『誓いの指輪/愛し合いながら引き裂かれた恋人たちを再びめぐり合わせるためのしるし』だってさ。

それから、『伝書妖精のベル/妖精を召喚し、すぐに手紙を届けさせる』なんていいんじゃないか?ばあさん、番さんに手紙書きなよ」


「えー、いいよ、いまさら。なんて書けばいいのさ」


「いいから、今の素直な気持ちを書け、な」


ダイは指輪を急いで磨き上げ、素早くテーブルをセットして便せんやペンを並べてやる。


ばあさんは、人型になると、いそいそと指輪をはめ、手紙を書き始めた。

時々、手を止めると、指輪を眺めては、「これ、キラキラしてるね」とよだれを垂らしそうな顔でニヤニヤしている。

その間にダイは、もっと棚を買わなきゃ、前整理したのもぐちゃぐちゃだなどとブツブツ言いながら、アイテムの目録を作って棚にアイテムを並べた。


そうこうするうち、ミトロヒナ嬢が服を着て、ボリスと交代でドラゴン笛を吹き始めた。


「ばあさん、ドラゴン笛、大丈夫?邪魔だったら、水晶玉のスイッチ切っとくけど」


「大丈夫、大丈夫。うーん、書き出しが難しいね」


その時、大きな音がしたので、二人は水晶玉を見た。


水晶玉には、斜めに切り裂かれたボリス・サハロフの体と、血しぶきを浴びて立ち尽くしているツチャビッチ・ミトロヒナが映し出されていた。

ボリス死す。

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