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1 お見合いブラフ

昨日は大変だった。


私たちは闘技大会で優勝し、またリタが【剣神】スキルを授かった。

表彰後、たくさんの生徒の皆様から、お祝いの言葉をいただき、うれしくなった。


私とリタは、制服に着替え、身だしなみを整えた後、おじいさまのところにうかがった。


たくさんの観覧者がご挨拶やお祝いにいらっしゃり、おじいさまが張らせた天幕のあたりに人だかりができていた。

レオニード先生や生徒会の皆さんがご挨拶をするために列を作るように手配してくださったようだ。

私がおじいさまのところにうかがった時点では、おじいさまは、パーティの主催者であるかのように、列に並んだ皆様から順番にご挨拶を受けておられた。


ただ、天幕の周りは、ご挨拶を終えた皆様が歓談したり、保護者と出場していた生徒が合流したりして、大混雑だった。


私たちが天幕のところに行くと、おじいさまが大声でおっしゃった。

「おや、我がオルロー家の戦乙女たちの凱旋だな!」


周りにいた皆様も私たちに気が付いたようで、拍手して迎えてくれた。

髪をおさげにしたリタは、真っ赤になって何回もぺこぺことお辞儀をした。リタは剣を持つと強いけれど、普段は内気なただの女の子なのだ。

私はリタの肩を抱いて、彼女をたたえた。


「じゃあ、後はうちの執事に任せ、我々はここで失礼させていただこうかな」

おじいさまは、タウンハウスの執事に何事かを伝えると、私たちが人に囲まれる前に連れ出してくださった。


馬車の中で、おじいさまがお客様を紹介してくださった。

彼は帝国の属国の王子様だった。

たまたま留学先から帰るついでに王都を来訪中、おじいさまが王都にいると聞いて尋ねてきたそうだ。

おじいさまとは帝国の夜会で知り合い、一度よくお話をしてみたいと思っていたと、王子はゆっくりしたアルテリア語でおっしゃった。


「まあ、それじゃあ、いきなり学生の闘技大会を観戦することになって、驚かれたでしょう」

私もリタも帝国共通語を話すことができるので、その言葉で話しかけると、王子は少しうれしそうに答えた。


「いえ、私も学生ですから、皆さんの戦いぶりに刺激を受けました。

それに、ジェコフスカヤ嬢が【剣神】スキルを授かるところを目の当たりにし、今こうして同席させていただいていることをとてもうれしく思います」


それから、リタの将来について質問があった。

リタはできることならオルロー家の私兵団に加入して、魔獣狩りや私の警備をしたいと答えた。


「おや、もったいない。

【剣神】スキルがあれば、どこの国でもしかるべき地位を用意してスカウトするでしょうに」

「私は、ライラお姉さま、いえ、ライラ様にお仕えしたいと思っておりますので」

「つまり、ライラと結婚すれば【剣神】スキル保持者がついてくるというわけだ」おじいさまはさらりと冗談でかわした。

「では、オルロヴァ嬢はますます引く手あまたですね」と王子も笑顔で返した。


その後、オルロー家のタウンハウスでささやかな祝勝会を開いていただいた。

リタは、ジュコフス伯爵とグータッチを交わして喜んでいた。



朝食後、テラスでスビートと遊びながら、うれしそうなリタを思い出して暖かい気持ちで昨夜のことを思い出していると、ダイがお茶を用意してやってきた。


「お嬢様、昨日はご活躍だったようですね、優勝おめでとうございます」

「ありがとう」

「しかも、お見合いまでされたそうじゃないですか。


マリから、城の使用人たちの噂を聞きましたよ。

イヴァン殿下は国宝のアイテムを勝手に使用したとか、オルロー家がイヴァン殿下と婚約解消するつもりじゃないかとか、たった一晩で恐ろしい勢いで噂が広がっているようです」


え、どういうことかしら。

私が固まっていると、ダイはニヤニヤしながら言った。


《帝国の王子殿下ですよ。彼は、お嬢様の戦う様子を観戦し、同じ馬車で帰ったのでしょう?


悪役令嬢転生小説では、パーティで婚約破棄された後、第三国の王子が傷ついた悪役令嬢を助けてプロポーズするまでがテンプレです。


ただ、婚約破棄相手との結婚については政略なのに真実の愛を叫んで婚約破棄なんてけしからんとか言う割に、新しい相手との結婚は悪役令嬢が勝手に決めていて、悪役令嬢も真実の愛を見つけただけじゃないかと疑問はありました。

しかし、こうやってあらかじめオルロー公爵のお眼鏡にかなった人物とお見合いしているのであれば納得です。


とりあえず、アル戦ではなかった展開ですが、結構ストーリー自体変わっているので、お嬢様がOKなら、行っちゃうのもありじゃないですか》


《ちょっと待って、初耳だわ。お見合いなんて聞いてない》


私は驚いたが、お茶を飲みながら、落ち着いて考えると、言った。


《そうね、確かに、リタが同席していたことを除けばお見合いみたいな状況だったわね》


《そうですよね!お相手はどんな方でしたか》


《ただ、多分、おじいさまは本気で私にお見合いさせたわけではないと思うの。


彼はディアス帝国の属国の王子だから、彼と結婚すれば、オルロー家と帝国の距離が近づきすぎる。

今でさえ、王家はおばあさまが帝国の元皇女であることを警戒して、私を人質のようにしてコテージから出させないわ。

昨日、オルロー家のタウンハウスに行った際は、お祝いだからと許可が出たけれど、急遽、王宮の警備隊がタウンハウスに派遣されたそうよ。

こんな状況で、おじいさまが、帝国関係者と私を本気で結婚させるかしら。

おじいさまは、オルロー家と王家、ディアス帝国とのバランスをとるよう、いつも気を配っていらっしゃるから。


リタが同じ馬車に乗っていたのだから、王家からなにか言われても、お見合いではないと言い訳ができるし。


それに、王子様も、王都に来たのは偶々だとおっしゃっていたしね。


ただ、おじいさまは、帝国関係の王子様と私とのお見合があったと噂されること自体は想定し、許容していたと思うの》


《それはどうしてですか》


《イヴァン殿下が態度を改めないのであれば、オルロー家は他にも手札を持っているという脅し(ブラフ)でしょうね》

オルロー家のタウンハウスは自分の家だから、まだ引きこもりの範囲内ですよね、ね!

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