4 ほんと、うんざりですわ
コテージに戻ると、猫は、侍女のマリが喜んで台所に連れて行ってしまった。
私も台所に行き、猫がミルクを飲むところを見たり、猫を撫でたりして楽しんだ。
しかし、侍女長のキアラが、いつまでも淑女が台所にいてはだめだと私を追い出した。
私は軽い食事をとると、さっさと就寝の準備を済ませ、そのままベッドに倒れこんだ。
とりとめもなく、今日の出来事を思い出す。
ミトロヒナ嬢は、なぜ猫を捕まえようとしていたのだろう。
ミトロヒナ嬢に理由を聞いて、ついでに、あまり猫をいじめないよう注意したい。
でも、彼女は、自分の気に入らない話だと、言葉の使い方が失礼だとか、平民出身であることを差別しているとか、関係のないことに文句をつけて何一つ話が進まない。
こちらが何かお願いしたいことがあっても、その話題にたどり着けない。
というより、そうやって話をはぐらかしている様子すらある。
猫を追いかけていた理由をミトロヒナ嬢に聞いても話ができそうもない。
ミトロヒナ嬢からのいじめを避けるために猫はうちで飼うほうがいいだろう。
ミトロヒナ嬢みたいに話が通じない人はどこにでもいるけれど、ミトロヒナ嬢の場合、王族であるイヴァン殿下が後ろ盾になっているので、めんどうくさい。
猫がうちにいることが彼女にばれると、文句をつけてきそう。
「ああ、もううんざり。私、ほんとにイヴァン殿下と結婚するのかしら」
イヴァン殿下は、第三王子でそこそこ整った顔立ちをしているため、宮中の女性に人気があり、それをいいことに複数の女性にちょっかいをかけている。
学校の成績はいまいちだし、感情的で気まぐれで、気に入らない者を徹底的に攻撃する性格は、王にふさわしいとは思えない。
だが、正妃の子供である第一王子は体が弱いという噂だ。
正妃は第二王子を生んだ後に儚くなり、第二王子は2歳の時に夭折した。
だから、側室の子であるイヴァン殿下が卒業後王太子として指名されるのではないかと予想されている。
元来、イヴァン殿下は外に出される予定ため、公爵家の一人娘である私と生まれた時から婚約させられていた。
私はアステリア王国の西の辺境を守るオルロー公爵家の長女で、7歳の時に王子妃教育を受けるため、泣く泣く両親と別れて領地から一人で王都に移り住んだ。
それ以降、王宮にある来客用のコテージで少数の使用人と一緒に生活している。
もともとオルロー家はアステリア王国創建時の王弟を始祖とするため、王都に来たときは王家の客人としてコテージで過ごすことが多い。
オルロー家独自のタウンハウスもあるが、本当に事務所のような建物しかないほどだ。
イヴァン殿下は、そういったところを田舎公爵だと馬鹿にしていた。
最近の、イヴァン殿下は、婚約者である私とはろくに会話もしない。
自分は王になるのだから田舎公爵家など意味がないと考えているのだろう。
このまま結婚しても、このような感じで私を無視し続けそうだ。
一方、最近、男爵家に引き取られたミトロヒナ嬢には、ずいぶんお熱を上げているご様子だった。
イヴァン殿下は、馬鹿のくせに、私や私の実家を馬鹿にしていて、婚約者としても不誠実なんて、最悪じゃない。
王都に来てからは、王子妃にふさわしくあれと言われ、勉学や社交に励み、同世代の女性の模範となるよう、お転婆な行動は慎んで、おしとやかに、言いたいことも言わずに過ごしてきた。
その努力のご褒美が、あんな、最悪な男との結婚か。
ほんとうんざりですわ。
ゲームの話をするする詐欺
2022.07.09 読みにくい箇所、誤字、改行を修正しました。




