1 目撃しました
前からぽちぽち書いていたのを載せてみました。
よろしくお願いします。
ああ、つまらないわね。
手芸の授業は、作品を提出すれば単位が取れるのだけれど、私の作品はもうとっくに出来上がっている。
それでも私が授業に出ているのは、針仕事しながらの社交的なおしゃべりに参加するためだ。
とはいえ、おしゃべりの内容は、誰それが付き合っているとか、この間のパーティのドレスはどうだったとか、どうでもいい噂話ばかり。
本音を言えば、欠席すれば悪口を言われそうだから、やむをえず来ているだけだ。
そんなおしゃべりが途切れた時、窓際に座っていたご令嬢が、外の景色を指さして言った。
「まあ、あれ、ご覧になって」
「あらあら、さすが平民の出の方は、はしたないわね」
「普通の平民なら、もう少しわきまえていますわよ。
でも、あの方は、ねえ・・・」
ああ、あの方たちがまた何かやらかしたのかしら。
「ライラ様は、ご覧にならないほうがよろしいわ」
と他の令嬢が私を止めてくれた。
けれど、私はあえて窓に近寄り、教室から校庭を眺めた。
木の葉が色づき、色とりどりの秋の花が咲く中に東屋が整備されている。
東屋のベンチには私の婚約者イヴァン殿下と、殿下の最近のお気に入りであるツチャビッチ・ミトロヒナ男爵令嬢が並んで座っていた。
イヴァン殿下は、金髪碧眼、スリムな体に厳しい目つきをしている。
ミトロヒナ嬢は、ピンクゴールドの髪に水色の目、小柄なかわいらしい顔立ちをしている。
何より目を引くのは制服の着こなしだ。
王族の前だというのにブレザーを着用せず、トップスは夜会服かと勘違いしそうなほど襟元を大きく開いたシャツ一枚、ボトムスのスカートは丈が短いため膝が見えている。
ミトロヒナ嬢は、殿下の腕を抱き、肩によりかかって胸を押し当て、顔を覗き込み、
つまりは殿下と親密な雰囲気を醸し出していた。
いつもは、またかと、うんざりするだけなのだけれど、
なぜか今日は、うまく言えないけれど、
よく知っていることを思い出せない時のような、もやもやとした、不吉な予感のようなものを感じる。
「娼婦みたい」
と私が困惑を隠しつつ平静を装って言うと、令嬢たちは口々に賛同した。
「やっぱりそうですわよね」
「べたべたして、みっともない」
「あの噂は本当としか思えないわ」
「あの方、高位貴族の御子息にはあんな感じですけど、女性にはずいぶんきついみたいよ」
「裏の顔、ってことかしら」
「気に入らない人につまらない文句をつけては、理屈で問い詰めて、泣かせてしまうのですって。
下級生の中には、ショックを受けて学校を休んでいる方もいらっしゃるそうよ」
「まあ、ひどい」
「ちょっと!
ライラ様、こちらにおかけになってください。お顔が真っ青よ」
いつもお優しいケイトリン様が言うと、みな私のほうを気の毒そうに見ながら、小さな声で何かをささやきあった。
ふとベンチを見ると、もう彼らはいなかった。
2022.07.09 読みにくい箇所及び改行を修正しました。




