第6話(最終話) 最後の抵抗と幸せな2人
「1度だけ、みーくん自身の意思で、私を押し倒して、種を仕込んでほしいんです。もちろん、ピルはなしです。それと、ちゃんと私に愛が伝わるような言葉を添えてくださいね?」
!?!?!?!?!?!?!??!
「い、いや、それは......」
「大丈夫です。愛を込めるためのセリフは用意してあげます。みーくんはただそれに従って私に愛を囁きながら気持ちよく出すだけでいいんですよ?」
そ、そんなのはだめでしょう!?
だってそんなのは愛のない交尾です。
それこそ本当にうーちゃんのことトイレ扱いするようなものじゃないですか!?
「そ、そんなのできないですよ!そういうことではなくてですね!?」
「まったく、みーくんは否定ばっかりですね。あれも嫌、これも嫌。我儘は程々にしないといけませんよ?」
えー、僕が悪いんですか?
「えっと、我儘とかじゃないですって。も、もし子どもとかできたらどうするんですか!?」
「一緒に育てるに決まっているでしょう?」
即答されてしまった。
そんな簡単な問題じゃないと思うんですけど。
「む、無理ですよ......僕はまだ高1ですよ?養っていくなんてデキないし、この歳で子どもなんて」
「じゃあ、さっきのお願いはなしですね。みーくんはこれから一生、私を便器扱いする鬼畜男子として生きていくしかないですね」
い、一生って。
高校生の間我慢すれば、そのあとは噂なんて......。ご近所では多少変な目で見られるかも知れませんが。
「一応言っておきますけど、高校卒業したら関係ないとか甘いこと考えているんでしたら、その考えは改めたほうが良いですよ?」
え?
「当たり前じゃないですか。高校の間だけなんて、私、そんなに優しくありませんよ?卒業して、大学に行っても、社会人になっても、ありえませんけどみーくんが他の人の旦那さんになっても、ずぅーっと噂を流し続けますからね?というか、噂だけじゃなく、夜這いもし続けます。何があってもみーくんの子どもを孕みますから」
どうやらもう打ち止めのようです。うーちゃんの意思は岩のように硬くて動かせそうにありません。
「1回だけで、いいんですね?」
1回だけ。
万が一あたってしまったら......そのときは覚悟を決めるしかない......ですね。
「そう、まずは1回だけです。1回だけ、あなたの意思で私を愛してほしいんです。あとはみーくんが勝手に私に溺れていってくれますから」
「っ......!?......わかりました。では、いつ、しましょう?」
「そんなの
今すぐ始めるに決まっているでしょう?」
*****
あぁ......やってしまいました。
うーちゃんに用意してもらった台本にあった卑猥な言葉を叫びながら、初めて僕自身の意思でうーちゃんを汚してしまいました。
というか、なんでこんな条件を出してすぐに台本がでてくるんですか。
おかしいですよね!?
まさか最初からこの展開を想定していた?
でも、まぁ、もう、ねぇ?
うーちゃん、とても気持ちよかったんで、そんなことはどうでも良いような気がしてきましたけど。
1回で良いって言われてたのに、全く我慢できませんでした。
ベッドから起き上がる気力も湧きません。
隣を見ると一糸まとわぬ生まれたままの姿のうーちゃんが、僕の方を見て優しく微笑んでいます。
「ふふふ、とっても気持ちよかったですし、台本にない愛の言葉も素敵でしたよ?どうでした?みーくんも気持ちよかったですかぁ?」
ずるいです。そんな可愛い顔と声で聞かれたら、嘘なんてつけないですよ。
「はい......最高でした......」
「うんうん、それはよかったです♫」
うーちゃんはさらににっこり微笑んで僕の頭をひとなですると、おもむろに立ち上がって、ベッドから降りました。
それから本棚の隙間に手を伸ばしてゴソゴソと何かを取ったかと思うと、うずくまってその何かを操作しているようです。
「うん、よく撮れていますね!」
「..............................ほぇ?」
恥ずかしながら、今日の僕は間抜けな声しかだしてませんね。
というか、え?ビデオ?
撮っていた?何を?僕らの情事を?
「そうですよ、みーくんが、自分の意思で私を獣みたいに貪っている様子を収めたビデオです」
「なっ!?」
再生された動画には、台本通りのセリフを話しながら腰をふる僕と、僕に押さえつけられて涙を流す演技をしながら、がっつりと種を仕込まれるその人の姿が、映っていました。
どこからどう見ても、強姦にしか見えません。
「まったく、みーくんはえっちな人ですね。『僕の種で孕んでください!』だとか『もうこれ以上出さないで〜』って叫ぶ私を押さえつけてプレスしたりだとか、嫌がる私に無理やりするなんて、本当に鬼畜な人です!」
「ど、どういうこと、ですか?」
頭の片隅ではわかってるんですけど、ちょっと理解が追いつきません。
「あれ?わかりませんか?あなたが私を無理やり手篭めにする瞬間を切り取ってここに収めたんですよ?」
「あ、あれは演技で......」
「事実はそうかもしれませんね。ですけれど、お義父さまやお義母さま、シオちゃん、それに他の皆様は信じてくださるでしょうか?」
あ......あぁ〜..................。
「それに、みーくんがいつも私と交尾してることは事実なわけですし」
これまでとは比較にならないほどのヤバいモノを握られてしまい、混乱の渦に飲み込まれる僕。
コヒューコヒューと過呼吸気味に口から漏れる息が音を鳴らす。
「これでみーくんは完全に私のものですよね?だからね、もう諦めましょう?噂も、もういいでしょ?」
「そ、そんな!?噂のことはなんとかしてくれるって言ったじゃないですか!?」
そうです、その約束を反故にされてしまっては、僕がお願いを聞いてまでシた意味がありません。
......いや、気持ちよかったので、意味はあるんですけれど......。
「確かに『考える』とは言いましたけど、なんとかする、とは言ってませんよ?」
う、わ......。
もう、だめなの?
「だ、だけど、こんな方法で僕のことを手に入れても、そんなの、虚しいだけ。でしょう?」
「そんなの、みーくんはそのうち私のことしか考えられなくなるんですから、関係ありませんよ。最後にラブラブになるなら一緒でしょう?」
あぁ、そっか。
僕が今日教室でうーちゃんと接触したときから、うーちゃんは完全に僕を仕留めに来てたんだ。
「ね?諦めて、私と一緒になろ?まさか嫌だなんて、言わないよなぁ?」
優しい表情に声音で語りかけてくれたかと思えば、黒いクレヨンで塗りつぶしたかのような昏い瞳とドスを効かせた声で紡がれる脅迫じみた交渉。
そうでなくても、僕自身、現状かなり深い賢者モードなせいもあってか、もう考えるのも面倒です。
こんな綺麗でミステリアスで素敵な女性になんの不満がありましょうか。
「わかりました......。うーちゃんと、一緒になります」
「なります、じゃないでしょ?もっとちゃんとしたお願いの仕方があるとは思わないのですか?」
「はい、ごめんなさい......。こんな僕ですがあなたのお婿さんにしてもらえませんでしょうか?」
「よくできました♡」
*****
「おい、みーくん」
「な、なんですか?」
「はぁ......さっき、まぁた他の女と話していましたね」
「えっ!?は、話してませんよ!なんで僕がうーちゃん以外の女の人と話さなきゃいけないんですか!僕はうーちゃんだけがいれば良いんです!」
あれから心と身体にうーちゃんの素晴らしさを刻みつけられて、僕にはうーちゃん以外いないことを思い知らされ、すっかりうーちゃんの夫としての自覚が芽生えました。
まだ僕が結婚できる年齢ではないので婚約しかしていませんけど、僕のすべてはうーちゃんのものですからね!
あぁ、これが恋っ。これが愛という気持ちなんですよね!
そんな僕が他の女性とお話するわけないですが......。
うーちゃんが怒っているようなので、どこかで粗相をしてしまったのかもしれません。
「ありがとうございます。私も、みーくんだけがいればいいですよ。大好きです」
あぁ、嬉しいです。
「でも、私に嘘をつくみーくんのことは好きじゃありません」
!?
嘘なんてついてませんよ!?
「はぁあああぁぁぁ。そうですか、無自覚なんですね」
「え、えっと......」
なんのことか理解できずに言いよどむ僕を、うーちゃんの感情の籠もっていない真っ黒な双眸が見据えてきます。
「さっき2人でコンビニに行った時です。みーくん、お会計の時、女性の店員さんからお釣りを受け取る時に手が少し触れていたでしょう」
あ、あぁ。確かにそうだった?かもしれません。
「触れただけでも我慢の許容量ギリギリなのに、あまつさえ『ありがとうございます』なんてお礼を言っていましたね」
「た、確かに言ったかもしれませんけど、それはなんというか、店員さんへの当たり前の感謝というか......」
「きちんとお礼が言えるのは素敵なことですし、みーくんの魅力の1つです。ですが、それは私以外の女性と会話していい理由にはなりません」
なんてこった。
会話と呼んで良いのかわからないやり取りでさえ、うーちゃんの嫉妬心をこれほど煽ってしまうというんですか!?
「そ、それくらいは、大目に見てもらえませんか......?」
「だめです。もしそれで、相手がみーくんのことを好きになったらどうするつもりなんですか。また私を悲しませるつもりですか。そうやってまた無自覚に女性をたぶらかすんですか?」
「そ、そんなことにはなりませんよ!ただふとお礼を言っちゃっただけじゃないですか!」
それだけで好きになられるなんて、流石に世の中の女性はそこまでチョロくないことくらい、僕にもわかります。
「ふーん、そうですか。そうやって言い訳するんですね。みーくんはふと女の子をたぶらかしちゃうような人だったんですね。この浮気者」
!?!?!?!?!?
ま、待ってください!?
「ふぅ......。私より、他の女を優先する浮気者のみーくんのことなんて、もう知りません。悲しいですが、今日でお別れ。でしょうか?」
え........................?
い、嫌だ。嫌だいやだイヤだイヤダイヤだいやだイヤダイヤダ嫌だ!!!!!
うーちゃんが側に居てくれないと、僕はもう生きていけません!
「ち、違うんです!違う!僕が好きなのは、大事なのはうーちゃんだけなんです!だから、だからどうか捨てないでください!!!僕にはもううーちゃんしかいないんです!もう......もう2度と女性とは口をききませんから、うーちゃんと以外お話しませんから。だからどうか!!!!」
捨てられたくない一心で涙を流しながらうーちゃんにすがりついてお願いした僕の必死さが伝わったのでしょうか。
うーちゃんはニヤリと妖艶な笑みを見せて、ご機嫌そうに語ります。
「ふぅん。そうですか、わかりました。そこまで私のことが大好きなら、今回はおおめに見てあげます。次はありませんからね?もし次に私のこと裏切ったら............わかりますね?」
「はいっ、はいっ!!ありがとうございます!」
よ、よかった!
なんとかうーちゃんに捨てられずに済みました!
うーちゃんがとても寛容な人でよかったです。
今回の件でまた更にうーちゃんのことが好きになりました!
あぁ、好きな気持ちと一緒に、ちょっと欲求が高まってきてしまいました。
「うーちゃん、本当に、大好きです!他の女性なんてどうでもいいです!..................そんなことより、うーちゃん。僕、そろそろ我慢の限界なんです......。そろそろ、ベッドに行っては......もらえませんか?」
「ふふっ、仕方ありませんねぇ。やっぱりみーくんは世界一可愛いですね♫」




